《電力・管理》〈送電〉[H27:問6]電力用CVケーブルの水トリーに関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

電力用CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)の水トリーに関する次の問に答えよ。

(1) 水トリーの発生要因,特徴について簡潔に述べよ。

(2) 以下に示すCVケーブルの水トリー劣化診断技術の中から二つ選び,その概要について簡潔に述べよ。

 a. 損失電流法

 b. 残留電荷法

 c. 耐電圧法

 d. 直流漏れ電流測定

【ワンポイント解説】

本問のような問題は満点は取りにくいですが,何か書いてあれば部分点が発生する可能性があります。したがって,できるだけ知っている知識を絞りだすようにしましょう。

【解答】

(1)水トリーの発生要因,特徴
(ポイント)
・発生要因は絶縁物に何らかの形で侵入した水が電界が掛かった時にボイド等に加わる局部電圧に集まり,劣化させていくことが原因。
・トリー状(樹枝状)に白濁部が成長し,数百ボルト程度の低電圧でも発生するのが特徴。
・部分放電を発生しないので,検知しにくい。

(試験センター解答例)
CVケーブルの絶縁体内に水分が多く含まれている状態で電圧が印加されると,突起周辺など電界集中部に水分が集まり凝集し,樹枝状の劣化が進むが,この劣化痕を水トリーと呼ぶ。水トリー内部は,健全部分に比べて導電率はけた違いに高く電界は低くなるので,水トリーが発生しても,電気トリーとは異なり部分放電は観測されない。このため,水トリーの発生は検知しにくいうえに,水トリー先端の電界が高い部分より電気トリーが発生すると短時間で絶縁体の全路破壊に結びつくことが多い。

(2)水トリー劣化診断技術の中から二つ選び,その概要について簡潔に述べる
(ポイント)
・各方法のキーワードを抑えておく必要があります。具体的には高調波,電荷の放出,常規電圧よりも高い電圧,ケーブルの導体 -シース間に一定の直流電圧。

(試験センター解答例)
a.損失電流法
ケーブル絶縁体に流れる充電電流から課電電圧と同位相の電流成分(損失電流成分)を抽出し,その中に含まれる高調波電流(主に第三高調波電流)を劣化信号として用いる。

b.残留電荷法
水トリー劣化部に蓄積された電荷の放出状況を評価して劣化状況を診断する。具体的には,直流電圧をケーブルに課電し,接地後,水トリー劣化部に蓄積された電荷を,交流電圧を印加することにより放出させて診断する。

c.耐電圧法
水トリー劣化ケーブルのスクリーニングを目的とし,常規電圧よりも高い電圧をケーブル線路に課電する。スクリーニングする劣化レベルに応じて試験電圧や,効果的な試験電圧種類(商用周波,超低周波,可変周波)を選定する。

d.直流漏れ電流測定
ケーブルの導体 -シース間に一定の直流電圧を印加し,漏れ電流の大きさ・変化・三相不平衡などを時間で整理し,その形状や値から絶縁状態を調査する。



記事下のシェアタイトル