《電力・管理》〈変電〉[H30:問2]変電所母線などの結線方式に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

変電所母線などの結線方式には,単母線方式,複母線方式(二重母線方式),ユニット方式などがあるが,結線方式の選定の一般的な考え方と特徴について,次の問に答えよ。

(1) 変電所の結線方式を決定する際に考慮すべきことを三つ述べよ。

(2) 単母線方式,複母線方式,ユニット方式について,該当する単線結線図の記号を下図からそれぞれ一つ選べ。

(3) 単母線方式,複母線方式について,それぞれの長所・短所を述べよ。

【ワンポイント解説】

本問の(1)のような問題は時間がない時か選択する問題がなくなった時,部分点狙いで選択しましょう。(1)はまずコスト面の話をしておけば部分点はもらえると思いますし,(2)も勘が当たれば部分点がもらえます。

1.変電所母線の結線方式
①単母線方式
 問題図の(ロ)のような母線が一本の結線方式です。四つの系統図を見比べても分かると思いますが,最も単純で分かりやすく,最も経済性が高い方式となります。母線に事故が発生すると予備がないので停電してしまいますし,母線の点検には負荷バランス等の考慮が必要となります。
②複母線方式
 問題図の(イ)のような母線が二本ある結線方式です。通常は甲乙母線で別々の負荷を取っており,片方の母線で何か事故があっても,もう片方の母線でバックアップし停電を防ぐことができます。また,母線の作業停止も片母線運用に切り替えることにより問題なく行うことができます。当然ですが単母線方式より,設備も多く,保護回路も複雑となるためコストは高くなります。
③環状母線方式
 問題図の(ハ)のような母線を環状にした結線方式です。環状にすることにより,一部分の作業停止を行いやすいメリットがあります。系統の拡張性に難があること,保護回路の複雑化等もあり,コストがかかるデメリットがあります。この方式を採用するのはバブル期の頃が多かったと聞いたことがあります。
④ユニット方式
 問題図の(ニ)のようなユニット毎に母線にした結線方式です。過密地区の地下変電所でよく採用されている方式で,配電用変電所では遮断器を省略する場合も多い方法です。結線や配置も単純化することができます。事故が発生した時には変電所側の引出口側の遮断器を遮断します。

【解答】

(1)変電所の結線方式を決定する際に考慮すべきことを三つ
(ポイント)
・設置スペースやコスト面の制約はどんな設備の設計でも絡んでくるので一つは入れると良いと思います。
・母線の将来計画や母線の重要性等は考慮する必要があります。都市部や地方部ではその条件は全く変わってくると思います。
・どんな設備も必ず定期的に点検する必要があるので,その作業性についても記載しておくと良いです。

(試験センター解答例)
以下の中から三つ
・送電線事故時,母線事故時の系統への影響・供給信頼性
・変化する電源,送電線工事に対応する適応性
・送電線や変圧器の増設工事における安全性
・点検等による停止の難易など系統運用操作の容易性
・設置スペースなども含めた経済性

(2)単母線方式,複母線方式,ユニット方式について,該当する単線結線図の記号
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.変電所母線の結線方式」の通りです。

(試験センター解答)
・単母線方式:(ロ)
・複母線方式:(イ)
・ユニット方式:(ニ)

(3)単母線方式,複母線方式について,それぞれの長所・短所
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.変電所母線の結線方式」の通りです。

(試験センター解答例)
単母線方式
所要機器及びスペースが少なくすみ,経済的に有利となる一方で,母線事故があった場合に当該母線が停止となり,また,母線側断路器等の点検のために,全停電となる場合があるなど,供給信頼性は低い。

複母線方式
母線切換のための断路器,鉄構等の設備が増え,所要面積が増加する一方で,機器点検や系統運用が容易となり,母線事故が発生しても,接続されている送電線や変圧器を他の母線に直ちに変更することができるなど,供給信頼性が高い。



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