《電力・管理》〈変電〉[R03:問2]変電所の絶縁設計における雷サージへの対策に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

変電所の絶縁設計において支配的な要素となる雷サージに関して,次の問に答えよ。

(1) 変電所内への直撃雷の防止対策について\( \ 100 \ \)字程度で述べよ。

(2) 送電線からの侵入雷の発生要因を三つ挙げ,変電所内でのサージ低減対策を合わせて\( \ 100 \ \)字程度で述べよ。

(3) 低圧制御回路におけるケーブル施設時でのサージ低減対策を二つ挙げ,合わせて\( \ 50 \ \)字程度で述べよ。

【ワンポイント解説】

変電所の絶縁設計に関する問題です。
(1)と(2)が電験のテキストにもよく記載のある事項,(3)は少し発展的な内容であったかと思います。
(3)は\( \ 1 \ \)種の電力管理科目平成23年問4にも類題がありますので,合わせて見ておくと良いかもしれません。

1.屋外変電所における絶縁設計
屋外変電所は広大な敷地内に設置し,離隔距離を確保し安全を担保するため,一般に地上面よりやや高いところに電線を施設しています。
したがって,落雷発生のリスクが高く,落雷による地絡事故を避けるため以下のような設備を設けています。

①架空地線や避雷鉄塔の設置
図1に示すように,変電所の上部に架空地線を設け,直撃雷を遮へいするとともに,接地されている鉄塔を介して大地へ逃がします。

③避雷器
図1の例に示すように,保護機器(図1においては変圧器)の近傍に避雷器を設置し,電線に直撃雷が発生したときにも避雷器を介して大地へ逃がします。

2.雷過電圧の種類
①直撃雷
図2のように送電線や機器に直接落雷する現象です。
過電圧の大きさは非常に大きく\( \ 100 \ \)万\( \ \mathrm {V} \ \)以上になり,がいしの絶縁耐力を超えフラッシオーバが発生します。
フラッシオーバをしないと機器に過電圧が加わるので,がいしの連結個数は適切にする必要があります。

②誘導雷
図3のように,帯電した雷雲(一般に夏季雷は負極性)が送電線に近づくと静電誘導により反対の極性の電荷が雷雲付近に集まり,落雷等で放電されると送電線に蓄えられていた電荷が一気に解放され,大きな電荷の移動が起こる現象です。
雷過電圧の中で最も発生数が多い特徴があります。

③逆フラッシオーバ
図4のように鉄塔や架空地線に落雷したときに,がいしの絶縁耐力を超え,送電線側に過電圧が侵入する現象です。

3.低圧制御回路の絶縁設計
低圧制御回路におけるサージは主に主回路に発生したサージが誘導により低圧制御回路に進入することで発生します。
発生する電圧サージは雷サージ,主回路の開閉サージ,直流回路(制御回路)開閉サージ,事故電流による地絡サージ等があり,以下のような対策を施します。
 ・金属シース付きケーブルを採用し,シースを接地する。
 ・低圧制御ケーブルを主回路から十分に距離を取る。
 ・リレー回路のコイルに並列コンデンサやダイオードなどを接続し,開閉サージ電圧の発生を抑制する。

【解答】

(1)変電所内への直撃雷の防止対策
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.屋外変電所における絶縁設計」の通りです。
・雷の電圧は数百万~数億\( \ \mathrm {V} \ \)にもなるため,機器の絶縁を確保することは物理的に困難となります。

(試験センター解答)
変電所の変圧器や開閉器などの電力機器を雷の直撃に耐えるように絶縁することは極めて困難であるため,架空地線と避雷鉄塔による変電所内の遮へいと接地を施して,直撃雷の発生を防止する。

(2)送電線からの侵入雷の発生要因三つと変電所内でのサージ低減対策
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.屋外変電所における絶縁設計」及び「2.雷過電圧の種類」の通りです。
・過電圧が発生した場合,避雷器で雷過電圧を大地に逃がし,保護対象機器を保護する方法が取られます。

(試験センター解答例)
送電線への直撃雷,鉄塔フラッシオーバ,誘導雷がある。いずれの場合も避雷器を変圧器付近,母線,線路引き込み口,あるいはそれらを組み合わせて設置して,雷サージの低減を行うことにより,保護する機器の絶縁レベルとの協調を行う。

(3)低圧制御回路におけるケーブル施設時でのサージ低減対策を二つ
(ポイント)
・ワンポイント解説「3.低圧制御回路の絶縁設計」の通りです。
・低圧制御回路は屋内や盤内にあるため,主に主回路からの誘導により発生する電圧であると覚えておきましょう。

(試験センター解答例)
・金属シース付き低圧制御ケーブルを採用しシースを接地する。
・低圧制御ケーブルを高電圧ケーブルから離す。



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