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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
超高圧送電線に多く用いられる多導体送電線には,単導体送電線に比べて種々の利点がある。単導体送電線と合計断面積が等しい多導体送電線について,この多導体送電線の利点とその理由を,それぞれの項目について\( \ 50 \ \)字程度以内で述べよ。
(1) 電流容量
(2) 固有送電容量
(3) コロナ放電
(4) 系統安定性
【ワンポイント解説】
多導体方式の特徴に関する問題です。
電験ではあまり触れられませんが,多導体方式には多くの利点がある一方,スペーサを取り付ける必要がある,風圧や氷雪荷重が増加し鉄塔部材が大きくなる,結果全体として建設費が増加する等の欠点もあります。ただ単に特徴を丸暗記するのではなく,多導体方式の構造をイメージするようにして理解するように努めて下さい。
1.多導体方式の特徴
\( \ 1 \ \)相に複数の電線を用いて構成される方式です。図1に示すように,電線同士にはスペーサを適度な間隔に配置し,以下のような特徴があります。
①電線表面の電位の傾きが小さくなり,コロナ開始電圧が高くなります。その結果,コロナ放電(電線表面での放電現象)が発生しにくくなり,コロナ損失,可聴雑音が抑制できます。
②インダクタンスが減少し,静電容量が増加するため,送電容量が増加し,系統安定度の向上につながります。
③同一断面積の単導体と比較すると表皮効果(導体内の電流分布が外側に集中する現象)が小さくなります。
④風速\( \ 10 \ \mathrm {m / s} \ \)以上の風が吹いた際に,スペーサ間で振動するサブスパン振動が発生する可能性があります。
【解答】
(1)電流容量
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.多導体方式の特徴」の通りです。多導体方式の方が表面積が大きいので放熱性もよくなります。
(試験センター解答例)
表皮効果が小さくなり,また放熱が良くなるので,熱的許容電流容量が増加する。
(2)固有送電容量
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.多導体方式の特徴」の通りです。
・送電線の送電電力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)は送電端電圧を\( \ V_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[V]} \ \),受電端電圧を\( \ V_{\mathrm {r}} \ \mathrm {[V]} \ \),送電端電圧と受電端電圧の相差角を\( \ \delta \ \mathrm {[rad]} \ \),リアクタンスを\( \ X \ \mathrm {[\Omega ]} \ \),線路抵抗を無視できるとすると,\( \ \displaystyle P=\frac {V_{\mathrm {s}}V_{\mathrm {r}}}{X}\sin \delta \ \)となります。
(試験センター解答例)
送電線インダクタンスが減少し,また静電容量が増加するため,固有送電容量が増加する。
(3)コロナ放電
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.多導体方式の特徴」の通りです。
・電線の表面から生じる電界が空気の絶縁耐力を超えたとき,コロナ放電が発生します。
(試験センター解答例)
導体表面の電位傾度を減少できるので,コロナ開始電圧が高くなり,コロナ損失,雑音障害を防止できる。
(4)系統安定性
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.多導体方式の特徴」の通りです。
・定態安定度に関連する同期化力は\( \ \displaystyle \frac {\mathrm {d}P}{\mathrm {d}\delta }=\frac {V_{\mathrm {s}}V_{\mathrm {r}}}{X}\cos \delta \ \)で表され,インダクタンスが小さいほど,安定度は向上することになります。
(試験センター解答例)
送電線インダクタンスが小さくなるので,同期安定度が向上する。