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【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
次の文章は,水素冷却発電機の水素ガス制御方式に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
水素冷却発電機は水素ガスの漏洩や,\( \ \fbox { (1) } \ \)の侵入を防止するため,水素ガスシール装置を備えている。水素ガスシールは\( \ \fbox { (2) } \ \)とシールケーシング内に取り付けた\( \ \fbox { (3) } \ \)の間隙に,機内水素ガス圧力と\( \ \fbox { (4) } \ \)圧力の油を供給し,この油が水素ガス側と\( \ \fbox { (1) } \ \)側に流出し続けることで水素ガスが機外に漏洩するのを防止している。
シール油の制御方式のうち,\( \ \fbox { (5) } \ \)方式は,使用後のシール油をそのまま供給する方式で,シール部と発電機本体の間に隔室を設け,ここから純度の低い水素ガスを排出している。
〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 複流 &(ロ)& 油切り &(ハ)& 空気 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 固定子枠 &(ホ)& 比べ低い &(ヘ)& 比べ高い \\[ 5pt ]
&(ト)& 回転子軸 &(チ)& ガスケット &(リ)& 連続掃気 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 軸受 &(ル)& シールリング &(ヲ)& 真空処理 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 冷却水 &(カ)& 等しい &(ヨ)& 蒸気 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
水素ガスのシール装置に関する問題です。図1に示すように,多くの汽力発電所ではタービンと発電機を一軸上に配置しており,発電機内はその特性の良さから水素で充填されています。
しかしながら,回転軸には若干の隙間があるため,そこから空気の侵入もしくは水素の放出がないように,水素ガスシール装置が設けられています。
火力発電の専門以外の方にはかなり厳しい内容ではないかと思います。類題は電験1種の平成23年問2で出題されています。
1.水素ガスの特徴
・水素は空気より密度が小さいため風損が少なく,効率が\( \ 0.5~1.0 \ \mathrm {%} \ \)程度上昇します。
・水素は空気より冷却効果が高く,発電機を小型化できます。
・水素は空気より不活性であり,コイルの絶縁寿命が長くなります。
・空気との混合で爆発範囲が\( \ 4~75 \ \mathrm {%} \ \)ととても大きいので,水素濃度監視に注意を要します。
2.代表的な水素ガスシール装置の方式
①真空処理式
発電機に供給し,空気を含んだ密封油を真空処理して空気を取り除き、再供給する方式です。主密封油ポンプ,真空ポンプや真空処理槽等設備が多く,コストも高くなります。
②複流式
水素側と空気側で密封油を供給する場所を分け,空気の侵入をより減らすことができる方式です。
③連続掃気式
使用後のシール油をそのまま供給しますが,水素を連続的に供給して機内の純度を保つ方式です。構造が簡単で他の方式に比べ比較的安価であるため、小容量機に向いています。
【解答】
(1)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)空気,(ワ)冷却水,(ヨ)蒸気,になると思います。
ワンポイント解説「1.水素ガスの特徴」の通り,水素ガスは濃度監視により,常に高濃度を維持し続ける必要があります。水素ガスシール装置は水素の漏洩と空気の侵入を防ぐための装置です。
(2)解答:ト
題意より解答候補は,(ニ)固定子枠,(ト)回転子軸,(ヌ)軸受,になると思います。
ワンポイント解説図1の通り,空隙が生まれるのは回転子軸の部分となります。
(3)解答:ル
題意より解答候補は,(ロ)油切り,(チ)ガスケット,(ル)シールリング,になると思います。
発電機側(水素)と発電機外側(空気)を区切るためにリングが設けられており,これをシールリングといいます。このシールリングでも空隙が零にはできないので,シール装置で密閉するようなイメージです。
ガスケットは配管のつなぎ部の漏れ防止に使用するものです。
(4)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ホ)比べ低い,(ヘ)比べ高い,(カ)等しい,になると思います。後の文章の「水素ガス側と空気側に流出し続けること」がヒントになっていますが,油の圧力を高くすることで,双方からの侵入を防ぐことができます。
(5)解答:リ
題意より解答候補は,(イ)複流,(リ)連続掃気,(ヲ)真空処理,になると思います。ワンポイント解説「2.代表的な水素ガスシール装置の方式」の通り,使用後のシール油をそのまま供給するのは,連続掃気方式となります。