《法規》〈電気施設管理〉[H24:問3]電力系統の系統間連系に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電力系統の系統間連系に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

わが国では電気事業者間の広域的運営のため,電力系統の系統間連系が整備されてきているが,連系線潮流の制御が複雑になるなどの理由から,相互の連系は\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を基本としてきた。この系統間連系により期待できる利点及び考慮すべき留意点の主なものは以下のとおりである。

a.利点

① 系統規模が大きくなると系統の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が小さくなるため,系統周波数の変動は小さくなる。

② 電源脱落,基幹送電線のルート事故,気温の変化等による電力需要の増加などは,偶発的な要因によることから,トータルとして必要な\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を節減できる。

③ 健全系統からの応援が可能となり,電源脱落による系統の周波数低下を考慮すると,連系前の電力系統では大きすぎる単機容量の発電機を採用できるので\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が得られる。

④ 系統全体の供給力確保のための広域開発が可能となるとともに,系統全体で協調的な発送変電設備の定期補修が可能となる。

b.留意点

① 送電線の短絡,地絡事故時の事故電流が大きくなるため,事故電流の抑制対策,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)増,通信線の誘導障害対策などが必要となる。また,局部的な事故が,系統全体に波及し,広範囲な停電を引き起こすおそれがあるため,事故の高速除去,系統分離などの系統保護対策が必要となる。

② 大きな設備投資を必要とするため,総合的な費用対効果により,その実現時期,規模を決定する必要がある。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 短絡容量     &(ロ)& インピーダンス     &(ハ)& 供給予備力 \\[ 5pt ] &(ニ)& 1点連系     &(ホ)& スケールメリット     &(ヘ)& 高い負荷率 \\[ 5pt ] &(ト)& 変圧器の容量     &(チ)& 高い系統安定度     &(リ)& 需要率 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 負荷変動率     &(ル)& 2点連系     &(ヲ)& 遮断器の遮断電流 \\[ 5pt ] &(ワ)& 高調波     &(カ)& 送電線の容量     &(ヨ)& 直流連系 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電力系統の電力供給に関する基本的な考え方やメカニズムを問う問題です。
日本の電力系統は下図のように北海道から九州まですべて広域的に接続されており,電気事業者管内の需要が逼迫する夏の非常に暑い時や冬の非常に寒い時には電気事業者間の電力融通等が行われることがあります。
電気事業者以外の方はあまりピンと来ないかもしれませんが,例年それほど難易度が高い問題は出題されないので,概要だけでも頭に入れておくと良いと思います。

【用語の解説】

(イ)短絡容量
事故時に発生する短絡電流と系統電圧の積で求められ,言い方を変えると,短絡容量が大きいほど事故時の電流は大きくなります。一般に電源を増やすと短絡容量は大きくなります。

(ハ)供給予備力
電力の需給において,電力の需要に対する電源の供給力の大きさを供給予備力と呼びます。火力発電の出力増加可能分や水力発電の運転待機等があります。

(チ)高い系統安定度
負荷変化や事故発生時等に発電機が同期運転を継続でき,周波数や電圧を維持できる度合いのことを言います。

(リ)需要率
設備容量に対する最大需要電力の割合のことを言います。関連項目として,負荷率や不等率があります。

(ヌ)負荷変動率
運転中の負荷に対する事故発生時等の負荷変動の割合のことを言います。

【解答】

(1)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)1点連系,(ル)2点連系,(ヨ)直流連系,になると思います。ワンポイント解説の全国基幹系統連系の図を見れば明らかですが,日本の系統間連系は1点連系を基本としていることが分かります。直流連系は北海道-本州間の直流連系,本州-四国間の直流連系,南福光のBTBがあり,試験にも頻出の内容となるので覚えておきましょう。

(2)解答:ヌ
題意より解答候補は,(イ)短絡容量,(ハ)供給予備力,(ト)変圧器の容量,(リ)需要率,(ヌ)負荷変動率,(ヲ)遮断器の遮断電流,(カ)送電線の容量,になると思います。これらのうち,系統が大きくなることで周波数変動が小さくなることに影響するのは負荷変動率になります。

(3)解答:ハ
題意より解答候補は,(イ)短絡容量,(ロ)インピーダンス,(ハ)供給予備力,(ト)変圧器の容量,(リ)需要率,(ヌ)負荷変動率,(ヲ)遮断器の遮断電流,(カ)送電線の容量,になると思います。当然系統が大きくなれば,個別に予備力を確保する必要があったのを,全体として予備力を確保すれば良いので,トータルとして必要な供給予備力は少なくなります。

(4)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)スケールメリット,(ヘ)高い負荷率,(チ)高い系統安定度,等になると思います。単機容量の大きい発電機は高効率の発電が可能となりますが,事故時の影響が大きいので,小さな系統では採用することができません。したがって,広域的な運営をすれば,単機容量の大きい発電機を設置することが可能となります。これをスケールメリットと言います。

(5)解答:ヲ
題意より解答候補は,(イ)短絡容量,(ト)変圧器の容量,(ヲ)遮断器の遮断電流,(ワ)高調波,等になると思います。短絡容量等も大きくなる可能性がありますが,短絡,地絡事故時の事故電流が大きくなるための直接的な影響としては遮断器の遮断電流が妥当かと思います。



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