《法規》〈電気施設管理〉[R03:問7]送配電電力系統とその構成に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電力系統と構成に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

a) 送電線路の相互連系を容易にすることや,機器の規格化などを考慮し,送電電圧は数種類の標準電圧に統一されている。我が国の標準電圧は電気学会・電気規格調査会\( \ \left( \mathrm {JEC}\right) \ \)で定められており,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)と最高電圧の\( \ 2 \ \)種類がある。例えば,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が\( \ 66 \ \mathrm {kV} \ \)の場合は,最高電圧は\( \ 69 \ \mathrm {kV} \ \)となっている。なお,送電線路の電圧としてこの標準電圧を採用する場合,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が電気設備技術基準の「使用電圧」となる。

b) 交流送電線の送電容量は,電線の許容最高温度に対する許容電流だけでは決まらず,こう長が長いと送電容量が小さくなる。送電線のこう長が長くなると\( \ \fbox {  (2)  } \ \)から送電容量が制限されるためである。

c) 架空送電線路の電力損失の主なものに,抵抗損と\( \ \fbox {  (3)  } \ \)がある。\( \ \fbox {  (3)  } \ \)は,送電線に高電圧を加えたとき,周囲の空気に対する電線表面の電位の傾きがある程度以上になると発生する局部放電によるものである。

d) 架空送電線の事故は,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が多く,設備の損壊を伴う永久事故は少ない。このため線路の両端を開いて短時間無電圧の状態におき,その後再び両端を閉路すれば元通り送電できることが多い。このことを利用して自動再閉路方式が多く採用されている。

e) 配電方式のうち,都市部などで採用されることがあるものに,次の方式がある。
  複数の\( \ 22 \ \mathrm {kV} \ \)配電線から分岐線を\( \ \mathrm {T} \ \)分岐で引き込み,それぞれ受電用断路器を経てネットワーク変圧器に接続し,各低圧二次側はネットワークプロテクタを経て並列に接続してネットワーク母線を構成する。本方式では,低圧側は同一ビル内の母線に限定される。
  この方式は,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)と呼ばれている。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 小動物の接触事故     &(ロ)& 低圧ネットワーク方式 \\[ 5pt ] &(ハ)& コロナ損     &(ニ)& 定格電圧 \\[ 5pt ] &(ホ)& 強風による相間短絡事故          &(ヘ)& 短絡容量 \\[ 5pt ] &(ト)& グロー損     &(チ)& スポットネットワーク方式 \\[ 5pt ] &(リ)& 鉄損     &(ヌ)& 公称電圧 \\[ 5pt ] &(ル)& ループ方式     &(ヲ)& 電力損失 \\[ 5pt ] &(ワ)& 最低電圧     &(カ)& 雷によるアーク事故 \\[ 5pt ] &(ヨ)& 安定度     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電力系統に関する総合問題で,様々な現象の基本事項を扱った問題です。
各文がそれぞれ別の内容となっており内容が膨大となるため,本問に直接かかわる内容以外は取り上げませんが,知識として足りてないなと感じるところがあれば参考書等に戻り整理するようにしましょう。

1.使用電圧(公称電圧)及び最大使用電圧
電気設備の技術基準の解釈第1条では,公称電圧及び最大使用電圧は以下の通り定義されています。

一 使用電圧(公称電圧) 電路を代表する線間電圧

二 最大使用電圧 次のいずれかの方法により求めた、通常の使用状態において電路に加わる最大の線間電圧

 イ 使用電圧が、電気学会電気規格調査会標準規格 JEC-0222-2009「標準電圧」の「3.1 公称電圧が1,000Vを超える電線路の公称電圧及び最高電圧」又は「3.2 公称電圧が1,000V以下の電線路の公称電圧」に規定される公称電圧に等しい電路においては、使用電圧に、1-1表に規定する係数を乗じた電圧

               1-1表
\[
\begin{array}{|c|c|}
\hline
 使用電圧の区分  &  係数  \\
\hline
 1,000 \ \mathrm {V} \ 以下  &  1.15  \\
\hline
 1,000 \ \mathrm {V} \ を超え500,000 \ \mathrm {V} \ 未満  &  1.15/1.1  \\
\hline
 500,000 \ \mathrm {V} \   &  1.05、1.1又は1.2  \\
\hline
 1,000,000 \ \mathrm {V} \   &  1.1  \\
\hline
\end{array}
\]

2.定態安定度
送電電圧を\( \ V_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[V]} \ \),受電電圧を\( \ V_{\mathrm {r}} \ \mathrm {[V]} \ \),送電線のリアクタンスを\( \ X \ [\Omega ] \ \),\( \ V_{\mathrm {s}} \ \)と\( \ V_{\mathrm {r}} \ \)の負荷角を\( \ \delta \ \mathrm {[rad]} \ \)とすると,送電電力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P&=&\frac {V_{\mathrm {s}}V_{\mathrm {r}}}{X}\sin \delta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,同期化力\( \ \displaystyle \frac {\mathrm {d}P}{\mathrm {d}\delta } \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {\mathrm {d}P}{\mathrm {d}\delta }&=&\frac {V_{\mathrm {s}}V_{\mathrm {r}}}{X}\cos \delta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。\( \ \displaystyle \frac {\mathrm {d}P}{\mathrm {d}\delta } > 0 \ \)の時,発電機は安定となり,\( \ \displaystyle \delta =\frac {\pi}{2} \ \)の時安定限界となります。

3.コロナ放電
超高圧電線において,電線の表面から生じる電界が空気の絶縁耐力を超えた時,絶縁破壊されて放電する現象です。

コロナ放電が発生すると,コロナ損が発生するとともに,近傍で誘導障害や通信障害が生じます。

4.コロナ放電の対策
コロナ放電に対する対策は以下のような方法があります。
 ①多導体方式を採用する → 等価断面積が大きくなる
 ②電線の太線化
 ③取付金具等で突起部をなくす

5.時限順送方式
送配電線の事故は,落雷による事故が圧倒的に多く,一時的な事故であるため,一旦遮断器を開放し再度投入する自動再閉路方式が採用されています。
電験では配電線で採用される時限順送方式に関する出題が多いので,そちらを理解しておきましょう。
配電線のどこかで故障があった場合,直近の遮断器を開放し,故障の復旧を行います。
図1の例では,例えば図の\( \ \mathrm {F} \ \)点で故障があった場合,
①配電用変電所の遮断器を開放します。同時に自動開閉器を開放します。
②一定時間経過後に遮断器を投入します。
③数秒後,自動開閉器1を自動投入します。
④数秒後,自動開閉器2を自動投入します。
⑤再度,故障が発生した場合には遮断器を開放し,自動開閉器2はロックします。
その後②~③を繰り返し,対応の必要な最小区間のみを停止することになります。

6.スポットネットワーク方式
スポットネットワーク方式は,同一変電所から\( \ \mathrm {22 \ kV \ ~ \ 33 \ kV} \ \)の\( \ 3 \ \)回線の配電線から\( \ \mathrm {T} \ \)分岐で引き込む方式です。図2のような系統で構成され,以下のような特徴があります。
①信頼性が高い。
②常時稼働率を高めることができる。
③電圧変動率が小さい。
④負荷増設が容易。
⑤ネットワーク母線に高信頼度が求められる。
⑥プロテクタ遮断器でやや複雑なインタロック回路を構成する必要がある。

【解答】

(1)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ニ)定格電圧,(ヌ)公称電圧,(ワ)最低電圧,になると思います。
ワンポイント解説「1.使用電圧(公称電圧)及び最大使用電圧」の通り,標準電圧は公称電圧と呼ばれ,電気設備技術基準では使用電圧と規定されています。

(2)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ヘ)短絡容量,(ヲ)電力損失,(ヨ)安定度,になると思います。
ワンポイント解説「2.定態安定度」の通り,線路が長くなると線路リアクタンスが大きくなり,同期化力が低下するため安定度が低下します。これにより,送電容量も制限されることになります。

(3)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)コロナ損,(ト)グロー損,(リ)鉄損,になると思います。
ワンポイント解説「3.コロナ放電」の通り,送電線に高電圧を加え,周囲の空気に対する電線表面の電位の傾きがある程度以上になると発生する局部放電をコロナ放電といい,これに伴う損失をコロナ損といいます。

(4)解答:カ
題意より解答候補は,(イ)小動物の接触事故,(ホ)強風による相間短絡事故,(カ)雷によるアーク事故,になると思います。
ワンポイント解説「5.時限順送方式」の通り,架空送電線の事故は雷によるアーク事故が多いです。

(5)解答:チ
題意より解答候補は,(ロ)低圧ネットワーク方式,(チ)スポットネットワーク方式,(ル)ループ方式,になると思います。
ワンポイント解説「6.スポットネットワーク方式」の通り,問題文で説明されている方式はスポットネットワーク方式となります。



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