《機械》〈パワーエレクトロニクス〉[R04:問4]スイッチングデバイスの損失に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,パワートランジスタ,パワー\( \ \mathrm {MOSFET} \ \),\( \ \mathrm {IGBT} \ \)等のスイッチングデバイス(以下,スイッチと略す)の損失に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

スイッチがオン状態の損失をオン損失と呼ぶ。オン状態のスイッチの端子間電圧は理想的にはゼロであるが,実際にはゼロではない。この電圧をオン電圧と呼び,この値が\( \ \fbox {  (1)  } \ \)スイッチのオン損失は大きい。一方,スイッチがオフ状態の損失をオフ損失と呼ぶ。オフ状態のスイッチを流れる電流は理想的にはゼロであるが実際にはゼロにならず,微小な\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が流れる。しかし\( \ \fbox {  (2)  } \ \)は非常に小さく,オフ損失はオン損失に比べて十分に小さい。

スイッチのターンオンとターンオフは瞬時に行われることが理想的である。しかし,実際の回路では,スイッチのターンオン・ターンオフ時に,スイッチの端子間電圧とスイッチを流れる電流がともにゼロではない期間が存在し,この期間に生じる損失は\( \ \fbox {  (3)  } \ \)と呼ばれる。単位時間あたりの損失は,スイッチのターンオンとターンオフの繰返し周期\( \ \fbox {  (4)  } \ \)。\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を低減する方法の一つが\( \ \fbox {  (5)  } \ \)であり,ターンオン時の端子間電圧\( \ v_{\mathrm {sw}} \ \)と電流\( \ i_{\mathrm {sw}} \ \)の波形は,例えば,図のようになり,\( \ v_{\mathrm {sw}} \ \)がオン電圧になった後に\( \ i_{\mathrm {sw}} \ \)が上昇する。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 漏れ電流     &(ロ)& が短いほど大きい     &(ハ)& 大きい \\[ 5pt ] &(ニ)& 遮断電流     &(ホ)& が長いほど大きい     &(ヘ)& 回路損 \\[ 5pt ] &(ト)& スイッチング損失         &(チ)& に無関係である     &(リ)& 強制転流 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 逆電流     &(ル)& ソフトスイッチング     &(ヲ)& 小さい \\[ 5pt ] &(ワ)& 自然転流     &(カ)& ハードスイッチング         &(ヨ)&  定常損失 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

スイッチングデバイスの損失に関する問題です。
電験のパワーエレクトロニクスの計算問題ではほとんどが理想的なスイッチングデバイスを扱いますが,一次試験では本問のように計算問題ではなく知識問題が出題されます。
損失の種類と概要は理解しておくようにしましょう。

1.スイッチングデバイスの損失
パワーエレクトロニクスのスイッチングデバイスにはパワートランジスタ,サイリスタ,パワー\( \ \mathrm {MOSFET} \ \),\( \ \mathrm {IGBT} \ \)等があり,これにより電力を交直変換をしたり,電圧や周波数を制御したりすることが可能です。理想的にはデバイスでの損失はゼロですが,実際には以下の損失が発生します。

①オン損失
スイッチがオンの時の損失です。
理想的なデバイスにおいてはスイッチがオンの時のデバイスにかかる電圧はゼロですが,実際には図1に示すようにわずかに電圧がかかり,オン損失が発生ます。このオン電圧が大きいデバイスほどオン損失は大きくなります。

②オフ損失
スイッチがオフの時の損失です。
理想的なデバイスにおいてはスイッチがオフの時のデバイスに流れる電流はゼロですが,実際には図1に示すようにわずかに漏れ電流が流れ,オフ損失が発生します。漏れ電流が大きいほどオフ損失は大きくなりますが,一般にオフ損失の方がオン損失よりも小さいです。

③スイッチング損失
スイッチのオンとオフが切り換わる時に発生する損失です。
理想的なデバイスでは,オンとオフの切り換えは瞬時に行われますが,実際には重なり角と呼ばれる電圧がかかっている状態で電流も流れているような状態が発生します。
電力が電圧と電流と時間の積であることから,スイッチングの切換え時間が長い程,スイッチング回数が多い程スイッチング損失は大きくなります。
スイッチング損失を低減する方法には電圧と電流の切り換えを同時に行わないソフトスイッチング等の方法があります。

【解答】

(1)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)大きい,(ヲ)小さい,になると思います。
ワンポイント解説「1.スイッチングデバイスの損失」の通り,電圧と電流の積の時間積分が電力損失なので,オン電圧が大きいスイッチのオン損失は大きくなります。

(2)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)漏れ電流,(ニ)遮断電流,(ヌ)逆電流,になると思います。
ワンポイント解説「1.スイッチングデバイスの損失」の通り,スイッチがオフの時に流れる電流は漏れ電流と言います。

(3)解答:ト
題意より解答候補は,(ヘ)回路損,(ト)スイッチング損失,(ヨ) 定常損失,になると思います。
ワンポイント解説「1.スイッチングデバイスの損失」の通り,スイッチのターンオン・ターンオフ時に発生する損失をスイッチング損失と言います。

(4)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)が短いほど大きい,(ホ)が長いほど大きい,(チ)に無関係である,になると思います。
ワンポイント解説「1.スイッチングデバイスの損失」の通り,スイッチング損失はスイッチング回数が多い程,すなわちスイッチのターンオンとターンオフの繰り返し周期が短いほど大きくなります。

(5)解答:ル
題意より解答候補は,(リ)強制転流,(ル)ソフトスイッチング,(ワ)自然転流,(カ)ハードスイッチング,になると思います。
ワンポイント解説「1.スイッチングデバイスの損失」の通り,問題図のように電圧と電流の切り換えを同時に行わないスイッチング方法をソフトスイッチングと言います。



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