《機械・制御》〈パワーエレクトロニクス〉[H20:問3]三相半波整流回路に関する計算・論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

図1には,対称三相交流電源とサイリスタを使用した三相半波整流回路を示す。サイリスタ SU  SV 及び SW による損失はないものとし,各サイリスタには制御遅れ角 α [rad] でゲートパルスが与えられ,重なり角はなく,抵抗 R [Ω] とインダクタンス L [H] からなる負荷に流れる直流電流は, L の値が十分に大きく, Id [A] 一定とする。次の問に答えよ。

(1) 図2には,三相交流電源 U  V  W 各相の相電圧 VU [V]  VV [V]  VW [V] の波形と,この三相半波整流回路が制御遅れ角 π6 [rad] で運転しているときの U 相に接続されたサイリスタ SU のゲートパルスのタイミングを示す。これらの波形を答案用紙に書き写し,このときのサイリスタ SV 及び SW のゲートパルスのタイミング並びに負荷に印加される直流電圧 Vd [V] の波形を交流電源の時刻位置に合わせて,縦に並べて示せ。

(2) 交流電源の相電圧の実効値を V1 [V] としたとき,出力される直流電圧 Vd [V] の平均値 Ed [V]  V1 とそのときの制御遅れ角 α を使って求めよ。

(3) ここで制御遅れ角を変化させて,電流を制御することを考える。図1には示されていない定電流制御回路により,直流電流 Id [A] は一定のままとして,負荷の抵抗 R [Ω] を零にしたときの制御遅れ角 α [rad] の角度を示し,その値が求まる理由を述べよ。


【ワンポイント解説】

三相半波整流回路の動作に関する問題です。
電験では三相ブリッジ整流回路の出題頻度の方が高いですが,三相半波整流回路は三相ブリッジ整流回路の基本となる整流回路なので,動作原理や出力電圧をよく理解しておくようにして下さい。

1.三相サイリスタ半波整流回路の動作
三相サイリスタ半波整流回路は図3のように三相交流電源に 3 つのサイリスタを接続した回路で,サイリスタがオンするタイミングで電流が流れる相が切り替わり出力されます。
したがって,制御角 α のときは図4に示した電圧 Ed が出力され,その平均電圧 Ed は基準電圧を Ea=2Esinωt とすると,
Ed=12π35π6+απ6+α2Esinωtdωt=32E2π5π6+απ6+αsinωtdωt=32E2π[cosωt]5π6+απ6+α=32E2π{cos(5π6+α)+cos(π6+α)}=32E2π(cos5π6cosα+sin5π6sinα+cosπ6cosαsinπ6sinα)=32E2π(32cosα+12sinα+32cosα12sinα)=36E2πcosα となります。


【解答】

(1)サイリスタ SV 及び SW のゲートパルスのタイミング並びに負荷に印加される直流電圧 Vd [V] の波形
ワンポイント解説「1.三相サイリスタ半波整流回路の動作」の通り,各波形は図5のようになる。

(2)出力される直流電圧 Vd [V] の平均値 Ed [V] 
平均電圧 Ed は基準電圧を Vd=2V1sinωt とすると,ワンポイント解説「1.三相サイリスタ半波整流回路の動作」の通り,
Ed=12π35π6+απ3+α2V1sinωtdωt=32V12π5π6+απ6+αsinωtdωt=32V12π[cosωt]5π6+απ6+α=32V12π{cos(5π6+α)+cos(π6+α)}=32V12π(cos5π6cosα+sin5π6sinα+cosπ6cosαsinπ6sinα)=32V12π(32cosα+12sinα+32cosα12sinα)=36V12πcosα と求められる。

(3)直流電流 Id [A] は一定のままとして,負荷の抵抗 R [Ω] を零にしたときの制御遅れ角 α [rad] の角度
直流電流 Id [A] は一定なので,インダクタンス L は電流変化がなく加わる電圧は 0 V であり, Ed [V] はすべて抵抗 R に加わる。負荷の抵抗 R [Ω] を零とすると, Ed [V] も零となるため,(2)解答式より制御遅れ角 α [rad] は,
Ed=36V12πcosα=0cosα=0α=π2[rad] となる。



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