《電力》〈火力〉[H21:問2]タービン発電機の水素冷却方式に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

タービン発電機の水素冷却方式について,空気冷却方式と比較した場合の記述として,誤っているのは次のうちどれか。

(1) 水素は空気に比べ比重が小さいため,風損を減少することができる。

(2) 水素を封入し全閉形となるため,運転中の騒音が少なくなる。

(3) 水素は空気より発電機に使われている絶縁物に対して化学反応を起こしにくいため,絶縁物の劣化が減少する。

(4) 水素は空気に比べ比熱が小さいため,冷却効果が向上する。

(5) 水素の漏れを防ぐため,密封油装置を設けている。

【ワンポイント解説】

タービン発電機で採用されている水素冷却方式に関する問題です。
発電機の冷却媒体として水素は空気より優れた性能を有するため,火力発電所では多くのタービン発電機に採用されています。

1.水素冷却発電機の特徴
水素は空気と比較して以下のようなメリットがあるため,多くの大容量のタービン発電機に採用されています。
① 比熱が空気よりはるかに大きく(約\( \ 14 \ \)倍),熱伝導率や熱伝達率が高いため,冷却能力が向上する。
② 比重が空気よりはるかに小さく(約\( \ 1 / 14 \ \)),ガス密度に比例する風損が小さくなる。
③ 空気より不活性であり,コロナ発生電圧が高く,例えコロナが発生してもコイルへの影響が少ないのでコイル絶縁の寿命が長くなる。
④ 爆発範囲が\( \ 4 \ ~ \ 75 \ % \ \)と非常に広いため,水素ガス純度管理に十分注意する必要がある。特にメンテナンス時は,一旦炭酸ガスで置換してから空気で置換する等注意が必要となる。

【解答】

解答:(4)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.水素冷却発電機の特徴」の通り,水素は空気に比べ比重が小さい(約\( \ 1 / 14 \ \))ため,風損を減少することができます。

(2)正しい
問題文の通り,水素を封入する場合は全閉形となるため,発電機自体の騒音は小さくなります。ただし,同軸上に設置されているタービンの音はあるので,タービン発電機全体としては特別音が小さくなる印象はありません。

(3)正しい
ワンポイント解説「1.水素冷却発電機の特徴」の通り,水素は空気より発電機に使われている絶縁物に対して化学反応を起こしにくい(不活性)ため,絶縁物の劣化がしにくいという特徴があります。

(4)誤り
ワンポイント解説「1.水素冷却発電機の特徴」の通り,水素は空気に比べ比熱が大きいため,冷却効果が向上します。比熱が大きいほど物質の温度を上げるのに必要な熱量が多い→熱伝導率や熱伝達率が高いとなります。

(5)正しい
問題文の通り,水素冷却発電機においては,水素の漏れを防ぐため,密封油装置を設けています。