《電力》〈原子力〉[H21:問4]原子力発電の原理や原子燃料に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,原子力発電に関する記述である。

原子力発電は,原子燃料が出す熱で水を蒸気に変え,これをタービンに送って熱エネルギーを機械エネルギーに変えて,発電機を回転させることにより電気エネルギーを得るという点では,\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)と同じ原理である。 原子力発電では,ボイラの代わりに\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)を用い,\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)の代わりに原子燃料を用いる。現在,多くの原子力発電所で燃料として用いている核分裂連鎖反応する物質は\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)であるが,天然に産する原料では核分裂連鎖反応しない\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)が\( \ 99 \ \mathrm {[%]} \ \)以上を占めている。このため,発電用原子炉にはガス拡散法や遠心分離法などの物理学的方法で\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)の含有率を高めた濃縮燃料が用いられている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) & 汽力発電  & 原子炉 & 自然エネルギー & プルトニウム \ 239 & ウラン \ 235 \\
\hline
(2) & 汽力発電  & 原子炉 & 化石燃料    & ウラン \ 235    & ウラン \ 238 \\
\hline
(3) & 内燃力発電 & 原子炉 & 化石燃料    & プルトニウム \ 239 & ウラン \ 238 \\
\hline
(4) & 内燃力発電 & 燃料棒 & 化石燃料    & ウラン \ 238    & ウラン \ 235 \\
\hline
(5) & 太陽熱発電 & 燃料棒 & 自然エネルギー & ウラン \ 235    & ウラン \ 238 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

原子力発電の原理や原子燃料の特徴に関する問題です。
難易度は星2つとしていますが,電験のテキストには必ずと言って良いほど記載してある内容と思いますので,合格に向けては確実の得点しておきたい問題です。

1.原子炉での核分裂反応
原子燃料であるウランは核分裂性物質であるウラン\( \ 235 \ \)と中性子を吸収して核分裂性物質になるウラン\( \ 238 \ \)があり,それぞれの核分裂反応のイメージは図1及び図2に示すような形となります。

①ウラン\( \ 235 \ \)の核分裂反応
核分裂性物質であるウラン\( \ 235 \ \)は熱中性子が衝突することで,核分裂が発生し,その時にエネルギーを出すと同時に放射性物質と高速中性子を\( \ 2~3 \ \)個程度出します。高速中性子が再び減速材(軽水)にて減速され熱中性子になり,また別のウラン\( \ 235 \ \)に衝突することで連鎖反応を繰り返します。

②ウラン\( \ 238 \ \)の核分裂反応
親物質であるウラン\( \ 238 \ \)は熱中性子を一旦捕獲・吸収することで,核分裂性物質であるプルトニウム\( \ 239 \ \)になり,ウラン\( \ 235 \ \)と同様な核分裂反応を起こします。

以上のような過程を繰り返すことで連鎖反応を起こすのが原子炉での核分裂反応となります。
天然ウランでは\( \ 99 \ \mathrm {%} \ \)以上がウラン\( \ 238 \ \)でウラン\( \ 235 \ \)の割合は\( \ 0.7 \ \mathrm {%} \ \)程度しかなく,これでは連鎖反応が続かないので,連鎖反応が継続可能な\( \ 3 ~ 5 \ \mathrm {%} \ \)程度に濃縮(低濃縮ウラン)して使用します。

2.原子炉(軽水炉)の型式
①沸騰水型(BWR)
蒸気発生器を持たないので,放射性物質がタービンに直接持ち込まれるのが大きな特徴で,他には以下の特徴があります。
・炉心圧力が低く蒸気発生器や加圧器がないので,構造が加圧水型(PWR)と比較して簡単。
・再循環ポンプを持ち,ポンプでの流量によって出力を調整する。
・制御棒でも出力を調整するが,汽水分離器があるので,下から上に向かって挿入される。
・何らかの原因で出力が上昇すると気泡が発生し,反応が抑制されるため,自動で出力が抑制される。


出典:電験戦士教本「原子力・その他発電」 P.46
URL:https://denkenia-archives.stores.jp/

②加圧水型(PWR)
蒸気発生器で蒸気を発生させるので,通常運転時放射性物質がタービンに持ち込まれないという特徴があり,他にも以下のような特徴があります。
・タービン系統に放射性物質が持ち込まれないので,タービンや復水器のメンテナンス時に放射能対策が不要。
・加圧器を持ち,原子炉内の圧力が高い。圧力を上げることで軽水の沸点が上がるので,沸騰しない。
・ホウ素濃度で出力調整を行う。
・制御棒の抜き差しでも出力調整するが,上から下に向かって挿入されるため,安全性に有利である。
・蒸気発生器等の過程を経る分,若干熱効率は劣る。


出典:電験戦士教本「原子力・その他発電」 P.48
URL:https://denkenia-archives.stores.jp/

【解答】

解答:(2)
(ア)
ワンポイント解説「2.原子炉(軽水炉)の型式」の通り,原子力発電は蒸気を発生させタービンに送り,発電機を回転させるという意味では汽力発電と全く同じ原理となります。

(イ)
ワンポイント解説「2.原子炉(軽水炉)の型式」の通り,汽力発電のボイラの代わりに原子力発電では原子炉を用います。

(ウ)
汽力発電として使用する燃料は,石炭,石油,天然ガス等の化石燃料です。

(エ)
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,核分裂反応する物質はウラン\( \ 235 \ \)です。

(オ)
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,天然に産する原料では核分裂反応しないのはウラン\( \ 238 \ \)です。