Contents
【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
\( \ 22 \left( 33\right) \ \mathrm {[kV]} \ \)配電系統に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。
(1) \(6.6 \ \mathrm {[kV]} \ \)の配電線に比べ電圧対策や供給力増強対策として有効なので,長距離配電の必要となる地域や新規開発地域への供給に利用されることがある。
(2) 電気方式は,地絡電流抑制の観点から中性点を直接接地した三相\( \ 3 \ \)線方式が一般的である。
(3) 各種需要家への電力供給は,特別高圧需要家へは直接に,高圧需要家へは途中に設けた配電塔で\( \ 6.6 \ \mathrm {[kV]} \ \)に降圧して高圧架空配電線路を用いて,低圧需要家へはさらに柱上変圧器で\( \ 200 \ ~ \ 100 \ \mathrm {[V]} \ \)に降圧して,行われる。
(4) \(6.6 \ \mathrm {[kV]} \ \)の配電線に比べ\( \ 33 \ \mathrm {[kV]} \ \)の場合は,負荷が同じで配電線の線路定数も同じなら,電流は\( \ \displaystyle \frac {1}{5} \ \)となり電力損失は\( \ \displaystyle \frac {1}{25} \ \)となる。電流が同じであれば,送電容量は\( \ 5 \ \)倍となる。
(5) 架空配電系統では保安上の観点から,特別高圧絶縁電線や架空ケーブルを使用する場合がある。
【ワンポイント解説】
\( \ 22 \left( 33\right) \ \mathrm {[kV]} \ \)配電系統に関する問題です。
\( \ 22 \ \mathrm {[kV]} \ \)配電は特に電力需要の大きい都市部や大きな工場がある場所で使用され,スポットネットワーク方式やレギュラーネットワーク方式が採用されます。
1.送電線の送電電力と電力損失
送電端の電圧が\( \ V_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[V]} \ \),受電端の電圧が\( \ V_{\mathrm {r}} \ \mathrm {[V]} \ \),送電線の\( \ 1 \ \)線あたりの抵抗が\( \ r \ \mathrm {[\Omega ]} \ \),リアクタンスが\( \ x \ \mathrm {[\Omega ]} \ \),送電線に流れる電流が\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \),負荷の力率が\( \ \cos \theta \ \)であるとすると,送電線の一相分等価回路は図1のように描くことができます。
このとき,負荷電力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P &=&\sqrt {3}V_{\mathrm {r}}I\cos \theta \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となり,上式より,
\[
\begin{eqnarray}
I &=&\frac {P}{\sqrt {3}V_{\mathrm {r}}\cos \theta } \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
であるため,送電線での電力損失\( \ P_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {L}} &=&3rI^{2} \\[ 5pt ]
&=&3r\left( \frac {P}{\sqrt {3}V_{\mathrm {r}}\cos \theta }\right) ^{2} \\[ 5pt ]
&=&\frac {P^{2}r}{V_{\mathrm {r}}^{2}\cos ^{2}\theta } \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
2.中性点接地方式の種類と特徴
各中性点接地方式の特徴は下表の通りです。
高電圧では線路や機器絶縁にコストがかかるので直接接地を採用し,合わせて高速遮断や高速再閉路が採用されている,低電圧では一線地絡時の健全相の電圧上昇がそれほど問題とならないため中性点接地を不要とし,\( \ \Delta -\Delta \ \)結線を採用できるようにしている等,丸暗記ではなくなぜそうするのかも理解しておくと良いと思います。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|c|}
\hline
& 非接地 & 抵抗接地 & 消弧リアクトル接地 & 直接接地 \\
\hline
地絡電流 & 小 & 中 & 最小 & 最大 \\
\hline
健全相電圧上昇 & 大 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
リレー検出 & 難 & 容易 & 難 & 確実 \\
\hline
コスト & 0 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
電圧階級 & \ ~33 \ \mathrm {kV} \ & \ 22~154 \ \mathrm {kV} \ & \ 66~77 \ \mathrm {kV} \ & \ 187 \ \mathrm {kV}~ \ \\
\hline
\end{array}
\]
【解答】
解答:(2)
(1):正しい
問題文の通り,\( \ 22 \left( 33\right) \ \mathrm {[kV]} \ \)配電系統は電圧降下や電力損失,供給力確保の面で有利なため,長距離配電の必要となる地域や新規開発地域への供給に利用されることがあります。
(2):誤り
\( \ 22 \left( 33\right) \ \mathrm {[kV]} \ \)配電系統は三相\( \ 3 \ \)線方式ですが,ワンポイント解説「2.中性点接地方式の種類と特徴」の通り,地絡電流による電磁誘導障害の観点から抵抗接地方式が採用されます。
(3):正しい
問題文の通り,特別高圧需要家へは\( \ 22 \left( 33\right) \ \mathrm {[kV]} \ \)配電系統から直接,高圧需要家へは途中に設けた配電塔で\( \ 6.6 \ \mathrm {[kV]} \ \)に降圧して高圧架空配電線路を用いて,低圧需要家へはさらに柱上変圧器で\( \ 200 \ ~ \ 100 \ \mathrm {[V]} \ \)に降圧して,供給されます。
(4):正しい
ワンポイント解説「1.送電線の送電電力と電力損失」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
I &=&\frac {P}{\sqrt {3}V_{\mathrm {r}}\cos \theta } \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
の関係があるため,電圧が\( \ 5 \ \)倍になると電流は反比例して\( \ \displaystyle \frac {1}{5} \ \)となり,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {L}} &=&3rI^{2} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
の関係より,電流が\( \ \displaystyle \frac {1}{5} \ \)となると電力損失は\( \ \displaystyle \frac {1}{25} \ \)となります。また,
\[
\begin{eqnarray}
P &=&\sqrt {3}V_{\mathrm {r}}I\cos \theta \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
より,電流が同じであれば,送電容量は\( \ 5 \ \)倍となります。
(5):正しい
問題文の通りです。電気設備技術基準の解釈第84条では「特別高圧架空電線路に使用する電線は,ケーブルである場合を除き,引張強さ\( \ 8.71 \ \mathrm {kN} \ \)以上のより線又は断面積が\( \ 22 \ \mathrm {mm^{2}} \ \)以上の硬銅より線であること。」と規定されています。