《電力》〈変電〉[R3:問8]変電所で使用される断路器に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

変電所の断路器に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 断路器は消弧装置をもたないため,負荷電流の遮断を行うことはできない。

(2) 断路器は機器の点検や修理の際,回路を切り離すのに使用する。断路器で回路を開く前に,まず遮断器で故障電流や負荷電流を切る必要がある。

(3) 断路器を誤って開くと,接触子間にアークが発生し,焼損や短絡事故を生じることがある。

(4) 断路器の種類によっては,短い線路や母線の地絡電流の遮断が可能な場合がある。

(5) 断路器の誤操作防止のため,一般にインタロック装置が設けられている。

【ワンポイント解説】

変電所の断路器に関する問題です。
断路器を勉強する際には,開閉器と遮断器についても一緒に学習しておくと効率的になります。
実際の現場では安全性や信頼性に加えコスト面等も考慮して,検討する必要があります。

1.遮断器,開閉器,断路器
断路器,開閉器,遮断器はいずれも開閉設備ですが,用途が異なるためそれぞれの遮断できる電流値が異なります。
電験では細かな構造等は出題されませんが,その違いを理解しておくようにしましょう。
①遮断器
電路の開閉を行う装置の中で,最も大きな電流を開閉できる装置です。
通常運転時の電流のみでなく,短絡・地絡事故時に発生する故障電流を遮断して,事故箇所を切り離す役割があります。
電路開閉時にアークが発生するため,アークを消弧する機能を有し,その方法により,ガス遮断器,真空遮断器,空気遮断器,油遮断器,磁気遮断器等があります。
現在は\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスをアークに吹き付け消弧するガス遮断器と真空バルブ内でアークを拡散させて消弧する真空遮断器が主流であり,電験でも出題が多いのはガス遮断器真空遮断器に関する内容です。

②開閉器
通常運転時の負荷電流は遮断することは可能ですが,事故時の故障電流は遮断することができない開閉装置です。
発変電所等の特別高圧ではなく,配電線路での開閉に使用されることが多い設備です。
気中開閉器\( \ \left( \mathrm {PAS} \right) \ \)や真空開閉器\( \ \left( \mathrm {VCS} \right) \ \),ガス開閉器\( \ \left( \mathrm {PGS} \right) \ \)等があります
電験では配電の内容である,高圧カットアウトや区分開閉器に関する問題が出題されることが多いです。

③断路器
通電時には開閉できず,電流が流れていないときに開閉可能な開閉装置です。ただし,変圧器の励磁電流等の小さな電流は開閉することが可能です。
電路の保守作業を行う際等に作業箇所を切り離すために開閉することが多いです。
遮断器とセットで使用されることが多く,送電停止時には遮断器を開放してから断路器を開放し,送電開始時には断路器を投入してから遮断器を投入します。

【解答】

解答:(4)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.遮断器,開閉器,断路器」の通り,断路器は消弧装置を持たず負荷電流の遮断を行うことができないので,一般に電流が流れていない電路を開閉する時に使用します。

(2)正しい
問題文の通り,機器の点検や修理の際,回路を切り離すのに使用します。ワンポイント解説「1.遮断器,開閉器,断路器」の通り,負荷電流を遮断することができないので,まずは遮断器で負荷電流を遮断することが必要です。

(3)正しい
問題文の通り,通電時に断路器を誤って開くと,接触子間にアークが発生し,焼損や最悪の場合短絡事故等が生じることがあります。

(4)誤り
断路器の種類によって,励磁電流等の小電流を開閉可能なものがありますが,地絡電流の遮断はできません。

(5)正しい
断路器の誤操作防止のために,遮断器を開いてからでないと開くことができない等のインタロックが設けられています。