《電力》〈配電〉[H22:問13]配電設備の記述の正誤の組み合わせに関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

配電設備に関する記述の正誤を解答群では「正:正しい文章」又は「誤:誤っている文章」と書き表している。 正・誤の組み合わせとして,正しいのは次のうちどれか。

a.\( \ \mathrm {V} \ \)結線は,単相変圧器\( \ 2 \ \)台によって構成し,\( \ \Delta \ \)結線と同じ電圧を変圧することができる。 一方,\( \ \Delta \ \)結線と比較し変圧器の利用率は\( \ \displaystyle \frac {\sqrt {3}}{2} \ \)となり出力は\( \ \displaystyle \frac {\sqrt {3}}{3} \ \)倍になる。

b. 長距離で負荷密度の比較的高い商店街のアーケードでは,上部空間を利用し変圧器を設置する場合や,アーケードの支持物上部に架空配電線を施設する場合がある。

c.架空配電線と電話線,信号線などを,同一支持物に施設することを共架といい,全体的な支持物の本数が少なくなるので,交通の支障を少なくすることができ,電力線と通信線の離隔距離が緩和され,混触や誘導障害が少なくなる。

d. ケーブル布設の管路式は,トンネル状構造物の側面の受け棚にケーブルを布設する方式である。 特に変電所の引き出しなどケーブル条数が多い箇所には共同溝を利用する。

\[
\begin{array}{ccccc}
& \mathrm {a} & \mathrm {b} & \mathrm {c} & \mathrm {d} \\
\hline
(1) &  正  &  誤  &  正  &  正  \\
\hline
(2) &  誤  &  正  &  正  &  誤  \\
\hline
(3) &  正  &  正  &  誤  &  誤  \\
\hline
(4) &  誤  &  正  &  誤  &  誤  \\
\hline
(5) &  誤  &  誤  &  正  &  正  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

配電線路の設備に関する正誤問題で,幅広い知識を必要とする問題です。
以下の解説もかなり長くなりがちですが,いずれの内容も電験では出題されやすい内容となりますので,理解しておくようにして下さい。

1.\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線と\( \ \mathrm {V-V} \ \)結線の比較
①\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線
\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線の変圧器の回路図とベクトル図を図1及び図2に示します。
図1において,負荷電流\( \ {\dot I}_{\mathrm {u}} \ \mathrm {[A]} \ \)は,変圧器を流れる電流\( \ {\dot I}_{\mathrm {uv}} \ \mathrm {[A]} \ \)及び\( \ {\dot I}_{\mathrm {wu}} \ \mathrm {[A]} \ \)を用いて,
\[
\begin{eqnarray}
{\dot I}_{\mathrm {u}}&=& {\dot I}_{\mathrm {uv}}-{\dot I}_{\mathrm {wu}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められ,ベクトル図上では図2のような関係となり,三相平衡である場合にはそれぞれの大きさの比は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {u}}&=& \sqrt {3}I_{\mathrm {uv}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であることが分かります。したがって,各変圧器が分担する容量\( \ S \ \mathrm {[V\cdot A]} \ \)は,負荷の線間電圧を\( \ V_{\mathrm {uv}}=V_{\mathrm {vw}}=V_{\mathrm {wu}}=V \ \),負荷電流を\( \ I_{\mathrm {u}}=I_{\mathrm {v}}=I_{\mathrm {w}}=I \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
S&=& \frac {VI}{\sqrt {3}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。したがって,変圧器全体の送電電力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)は力率を\( \ \cos \theta \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
P&=& 3S\cos \theta \\[ 5pt ] &=& 3\cdot \frac {VI}{\sqrt {3}}\cdot \cos \theta \\[ 5pt ] &=&\sqrt {3}VI \cos \theta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。


②\( \ \mathrm {V -V } \ \)結線
\( \ \mathrm {V -V } \ \)結線の変圧器の回路図とベクトル図を図3及び図4に示します。
図3において,負荷電流\( \ {\dot I}_{\mathrm {u}} \ \mathrm {[A]} \ \),\( \ {\dot I}_{\mathrm {v}} \ \mathrm {[A]} \ \),\( \ {\dot I}_{\mathrm {w}} \ \mathrm {[A]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
{\dot I}_{\mathrm {u}}&=& {\dot I}_{\mathrm {uv}} \\[ 5pt ] {\dot I}_{\mathrm {v}}&=& {\dot I}_{\mathrm {vw}}-{\dot I}_{\mathrm {uv}} \\[ 5pt ] {\dot I}_{\mathrm {w}}&=& -{\dot I}_{\mathrm {vw}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められ,ベクトル図上では図4のような関係となり,三相平衡である場合にはそれぞれの大きさの比は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {u}}&=&I_{\mathrm {u}}&=&I_{\mathrm {u}}&=&I_{\mathrm {uv}}&=&I_{\mathrm {vw}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であることが分かります。したがって,各変圧器が分担する容量\( \ S \ \mathrm {[V\cdot A]} \ \)は,負荷の線間電圧を\( \ V_{\mathrm {uv}}=V_{\mathrm {vw}}=V_{\mathrm {wu}}=V \ \),負荷電流を\( \ I_{\mathrm {u}}=I_{\mathrm {v}}=I_{\mathrm {w}}=I \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
S&=& VI \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。変圧器全体の送電電力\( \ P_{\mathrm {V}} \ \mathrm {[W]} \ \)は力率を\( \ \cos \theta \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {V}}&=& \sqrt {3}VI \cos \theta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,\( \ \mathrm {V -V } \ \)結線で得られる出力\( \ \mathrm {[V\cdot A]} \ \)は各変圧器の出力の\( \ \sqrt {3} \ \)倍となるため,利用率は,
\[
\begin{eqnarray}
利用率&=& \frac {\sqrt {3}VI}{2VI} \\[ 5pt ] &=& \frac {\sqrt {3}}{2} → 86.6 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。また,\( \ \mathrm {V -V } \ \)結線と\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線で同じ電力を出力する場合に必要となる変圧器の容量比は,
\[
\begin{eqnarray}
容量比&=& \frac {\displaystyle \frac {VI}{\sqrt {3}}}{VI} \\[ 5pt ] &=& \frac {1}{\sqrt {3}} → 57.7 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるため,\( \ \mathrm {V -V } \ \)結線の出力は\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線の\( \ 57.7 \ \mathrm {[%]} \ \)程度であることがわかります。


2.併架と共架
電気設備技術基準の解釈にてそれぞれ規定されており,特別高圧架空電線,高圧架空電線及び低圧架空電線とを同一支持物に施設することを併架,架空電線と架空弱電流電線等とを同一支持物に施設することを共架といいます。
混触防止や作業の安全等に配慮し配置や離隔距離等も定められていますので,法規の勉強をされる際には確認しておいて下さい。

3.地中送電線の布設方式
①直接埋設式
 コンクリートトラフにケーブルを入れ,地上から規定された深さまで埋設し土で埋める方式です。
 <長所>
 ・工事が簡単で,工期が短くなり,工事費も少ない
 ・放熱性が良い
 <短所>
 ・作業を行うためには掘り返さないといけない
 ・事故復旧に時間がかかる

②管路式
 穴を空けたコンクリート内にケーブルを布設する方法です。
 <長所>
 ・直接埋設式に比べ,保守点検が容易
 ・増設工事等が比較的容易
 ・外傷を受けにくい
 <短所>
 ・直接埋設式に比べ,工事費が高い
 ・放熱性が悪いため,許容電流が小さくなる

③暗きょ式
 コンクリートのトンネルの中にケーブルを布設する方式です。
 <長所>
 ・保守点検が容易
 ・工事が容易
 ・放熱性が良い
 ・ガス管や通信線,水道管等も布設できる(共同溝)
 <短所>
 ・建設費が高く,工期も長くなる

【解答】

解答:(3)
a:正しい
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線と\( \ \mathrm {V-V} \ \)結線の比較」の通り,\( \ \mathrm {V} \ \)結線は,単相変圧器\( \ 2 \ \)台によって構成され,\( \ \Delta \ \)結線と比較し変圧器の利用率は\( \ \displaystyle \frac {\sqrt {3}}{2} \ \)となり出力は\( \ \displaystyle \frac {\sqrt {3}}{3} \left( =\frac {1}{\sqrt {3}}\right) \ \)倍になります。

b:正しい
問題文の通り,距離で負荷密度の比較的高い商店街のアーケードでは,上部空間を利用し変圧器を設置する場合や,アーケードの支持物上部に架空配電線を施設する場合があります。基本的に問題文が「~場合がある」となっている場合は正しい可能性が高いです。

c:誤り
ワンポイント解説「2.併架と共架」の通り,架空配電線と電話線,信号線などを,同一支持物に施設することを共架といい,全体的な支持物の本数が少なくなるので,交通の支障を少なくすることができますが,電力線と通信線の離隔距離が近くなるため,混触や誘導障害に配慮し配置しなければなりません。

d:誤り
ワンポイント解説「3.地中送電線の布設方式」の通り,問題文の布設方式は暗きょ式の特徴となります。