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【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
最大発電電力\( \ 600 \ \mathrm {[MW]} \ \)の石炭火力発電所がある。石炭の発熱量を\( \ 26 \ 400 \ \mathrm {[kJ / kg]} \ \)として,次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 日負荷率\( \ 95.0 \ \mathrm {[%]} \ \)で\( \ 24 \ \)時間運転したとき,石炭の消費量は\( \ 4 \ 400 \ \mathrm {[t]} \ \)であった。発電端熱効率\( \ \mathrm {[%]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。
なお,日負荷率\( \ \displaystyle \mathrm {[%]}=\frac {平均発電電力}{最大発電電力}\times 100 \ \)とする。
(1) \( \ 37.9 \ \) (2) \( \ 40.2 \ \) (3) \( \ 42.4 \ \) (4) \( \ 44.6 \ \) (5) \( \ 46.9 \ \)
(b) タービン効率\( \ 45.0 \ \mathrm {[%]} \ \),発電機効率\( \ 99.0 \ \mathrm {[%]} \ \),所内比率\( \ 3.00 \ \mathrm {[%]} \ \)とすると,発電端効率が\( \ 40.0 \ \mathrm {[%]} \ \)のときのボイラ効率\( \ \mathrm {[%]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。
(1) \( \ 40.4 \ \) (2) \( \ 73.5 \ \) (3) \( \ 87.1 \ \) (4) \( \ 89.8 \ \) (5) \( \ 92.5 \ \)
【ワンポイント解説】
汽力発電所の熱効率に関する問題です。
計算量が多くなり,多くの受験生が苦戦する問題ですが,理解できるとパターンが決まっているため得点源となります。
したがって,点数差が開きやすく出題されると合否を分けるような問題とも言い換えることができるかと思います。
1.汽力発電所の各効率
汽力発電所で用いられる効率は以下の通りです。効率の低下は燃料の使用量(支出)に影響するため,電力会社では熱効率が非常に重要なファクターとなっています。
①ボイラ効率\( \ \eta _{\mathrm {B}} \ \)
ボイラで燃料を燃焼し,給水を蒸気にする際の熱交換率の指標です。排ガス損失等があります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {B}}&=&\frac {ボイラの蒸気として得た熱量}{燃料使用量から換算した熱量} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
②タービン室効率\( \ \eta _{\mathrm {T}} \ \)
タービンに入った蒸気がどの程度のタービン出力になるかの効率で,タービン室という名前はタービンと復水器を合わせた効率という意味です。一般的な汽力発電所では一番ロスが大きい場所となります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {T}}&=&\frac {タービン軸出力}{タービンへ入る蒸気の熱量} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
※本問においてはタービン室効率のことのタービン効率と表記しています。一般にタービン効率といえばタービン単体の効率のことを指します。
③発電機効率\( \ \eta _{\mathrm {G}} \ \)
発電機の風損や巻線抵抗損等を考慮した効率で,一般的な水素発電機では\( \ \mathrm {98~99%} \ \)程度となっています。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {G}}&=&\frac {発電機出力}{タービン軸出力} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
④発電端熱効率\( \ \eta _{\mathrm {P}} \ \)
発電ユニットの効率を表すもので,燃料の熱量がどの程度発電されたかを示す指標です。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {P}}&=&\frac {発電機出力}{燃料使用量から換算した熱量}&=&\eta _{\mathrm {B}}\cdot \eta _{\mathrm {T}}\cdot \eta _{\mathrm {G}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
⑤送電端熱効率\( \ \eta _{\mathrm {S}} \ \)
発電端効率から所内率\( \ L \ \)を考慮し算出した効率で,発電所としての総合効率の指標となります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {S}}&=&\eta _{\mathrm {P}}( 1-L ) \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
2.\( \ \mathrm {[kJ]} \ \)と\( \ \mathrm {[kW\cdot h]} \ \)の変換
単位の定義より,
\[
\begin{eqnarray}
1 \ \mathrm {[kJ/s]} &=&1 \ \mathrm {[kW]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
であるから,両辺の単位に\( \ \mathrm {[s]} \ \)をかけると,
\[
\begin{eqnarray}
1 \ \mathrm {[kJ]} &=&1 \ \mathrm {[kW\cdot s]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となり,両辺に\( \ 1 \ \mathrm {[h]}=3600 \ \mathrm {[s]} \ \)を考慮して,\( \ 3600 \ \)をかけると,
\[
\begin{eqnarray}
3 \ 600 \ \mathrm {[kJ]} &=&1 \ \mathrm {[kW\cdot h]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
【解答】
(a)解答:(3)
題意より,平均発電電力\( \ P_{\mathrm {av}} \ \mathrm {[MW]} \ \)は,最大発電電力\( \ P_{\mathrm {m}}=600 \ \mathrm {[MW]} \ \),日負荷率\( \ 95.0 \ \mathrm {[%]} \ \)であるから,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {av}} &=&P_{\mathrm {m}}\times 0.95 \\[ 5pt ]
&=&600\times 0.95 \\[ 5pt ]
&=&570 \ \mathrm {[MW]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となり,\( \ 24 \ \)時間の発電電力量\( \ W \ \mathrm {[MW\cdot h]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
W &=&P_{\mathrm {av}}\times 24 \\[ 5pt ]
&=&570\times 24 \\[ 5pt ]
&=&13 \ 680 \ \mathrm {[MW\cdot h]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となる。したがって,熱量換算した値\( \ Q_{\mathrm {o}} \ \mathrm {[MJ]} \ \)は,ワンポイント解説「2.\( \ \mathrm {[kJ]} \ \)と\( \ \mathrm {[kW\cdot h]} \ \)の変換」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
Q_{\mathrm {o}} &=&W\times 3 \ 600 \\[ 5pt ]
&=&13 \ 680\times 3 \ 600 \\[ 5pt ]
&=&49 \ 248 \ 000 \ \mathrm {[MJ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となる。一方,石炭の消費量は\( \ 4 \ 400 \ \mathrm {[t]} \ \)で石炭の発熱量は\( \ 26 \ 400 \ \mathrm {[kJ / kg]}=26.4 \ \mathrm {[MJ / kg]} \ \)であるから,ボイラへの入熱\( \ Q_{\mathrm {i}} \ \mathrm {[MJ]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
Q_{\mathrm {i}} &=&4 \ 400\times 1 \ 000\times 26.4 \\[ 5pt ]
&=&116 \ 160 \ 000 \ \mathrm {[MJ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となる。よって,発電端熱効率\( \ \eta _{\mathrm {P}} \ \mathrm {[%]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {P}} &=&\frac {Q_{\mathrm {o}}}{Q_{\mathrm {i}}}\times 100 \\[ 5pt ]
&=&\frac {49 \ 248 \ 000}{116 \ 160 \ 000}\times 100 \\[ 5pt ]
&≒&42.4 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。
(b)解答:(4)
ワンポイント解説「1.汽力発電所の各効率」の通り,ボイラ効率\( \ \eta _{\mathrm {B}} \ \),タービン効率\( \ \eta _{\mathrm {T}}=0.45 \ \),発電機効率\( \ \eta _{\mathrm {G}}=0.99 \ \)とすると,発電端熱効率\( \ \eta _{\mathrm {P}}=0.40 \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {P}} &=&\eta _{\mathrm {B}}\eta _{\mathrm {T}}\eta _{\mathrm {G}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
であるから,これを\( \ \eta _{\mathrm {B}} \ \)について整理して各値を代入し,ボイラ効率\( \ \eta _{\mathrm {B}} \ \mathrm {[%]} \ \)を求めると,
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {B}} &=&\frac {\eta _{\mathrm {P}}}{\eta _{\mathrm {T}}\eta _{\mathrm {G}}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {0.40}{0.45\times 0.99} \\[ 5pt ]
&≒&0.898 → 89.8 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。