《電力》〈送電〉[H24:問7]送電線の送電容量の特徴に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

送電線の送電容量に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 送電線の送電容量は,送電線の電流容量や送電系統の安定度制約などで決定される。

(2) 長距離送電線の送電電力は,原理的に送電電圧の\( \ 2 \ \)乗に比例するため,送電電圧の格上げは,送電容量の増加に有効な方策である。

(3) 電線の太線化は,送電線の電流容量を増すことができるので,短距離送電線の送電容量の増加に有効な方策である。

(4) 直流送電は,交流送電のような安定度の制約がないため,理論上,送電線の電流容量の限界まで電力を送電することができるので,長距離・大容量送電に有効な方策である。

(5) 送電系統の中性点接地方式に抵抗接地方式を採用することは,地絡電流を効果的に抑制できるので,送電容量の増加に有効な方策である。

【ワンポイント解説】

送電容量に関する問題です。送電線はいろいろな制約がありますが,(1)の制約に加えて,地中送電ではケーブルの温度上昇による制約等もあります。

1.送電線の送電電力
送電電力の公式は非常に重要な公式で確実に暗記しておく必要がありますが,その導出は一種レベルになりますので,三種の受験としては暗記しておくようにして下さい。
送電端電圧を\( \ V_{\mathrm {s}} \ \),受電端電圧を\( \ V_{\mathrm {r}} \ \),送電線路のリアクタンスを\( \ X \ \),\( \ V_{\mathrm {s}} \ \)と\( \ V_{\mathrm {r}} \ \)の相差角を\(\delta \)とすると,送電電力\( \ P \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P&=&\frac {V_{\mathrm {s}}V_{\mathrm {r}}}{X}\sin \delta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

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【解答】

解答:(5)
(1)正しい
問題文の通りです。送電線の送電容量は,送電線の電流容量や送電系統の安定度制約などで決定されます。送電系統の安定度には過渡安定度と定態安定度があり,過渡安定度は,事故時等の負荷の急激な変動,定態安定度は日常的な負荷の増加や減少,送電線の停止操作等の変動に対し,安定運転できる度合いです。

(2)正しい
ワンポイント解説「1.送電線の送電電力」の通り,送電線の送電電力は,
\[
\begin{eqnarray}
P&=&\frac {V_{\mathrm {s}}V_{\mathrm {r}}}{X}\sin \delta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,送電電圧と受電電圧があまり変化がないとすれば,電圧の\( \ 2 \ \)乗に比例します。

(3)正しい
問題文の通り,電線の太線化は送電容量が増加します。しかし,表皮効果の影響もあるため,超高圧の送電線では多導体方式を採用するのが一般的です。

(4)正しい
問題文の通り,直流送電は交流送電のような安定度の制約がないため,理論上送電線の電流容量の限界まで電力を送電することができます。したがって,北海道―本州間や紀伊水道の長距離連系に利用されています。

(5)誤り
問題文の通り,送電系統の中性点接地方式に抵抗接地方式を採用することは,地絡電流を効果的に抑制できますが,事故時以外の通常運用時には送電容量の増加には繋がりません。