《電力》〈火力〉[H27:問3]汽力発電所のボイラ効率に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

定格出力\( \ \mathrm {10000 \ kW} \ \)の重油燃焼の汽力発電所がある。この発電所は\(30\)日間連続運転し,そのときの重油使用量は\( \ \mathrm {1100 \ t} \ \),送電端電力量は\( \ \mathrm {5000 \ MW\cdot h} \ \)であった。この汽力発電所のボイラ効率の値\( \ [%] \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

なお,重油の発熱量は\( \ \mathrm {44000 \ kJ/kg} \ \),タービン室効率は\( \ \mathrm {47 \ %} \ \),発電機効率は\( \ \mathrm {98 \ %} \ \),所内率は\( \ \mathrm {5 \ %} \ \)とする。

 (1) \( \ 51 \ \)  (2) \( \ 77 \ \)  (3) \( \ 80 \ \)  (4) \( \ 85 \ \)  (5) \( \ 95 \ \)

【ワンポイント解説】

火力発電所の効率を算出する問題で,実際の電力会社でも似たような算出方法で効率計算を行っています。ボイラ効率のオーダーとして,\( \ \mathrm {80~90 \ %} \ \)程度であることを把握していれば,選択肢も絞れます。一番最初に書いてある定格出力の値を使わないところが引っ掛け問題となっています。

1.汽力発電所の各効率
汽力発電所で用いられる効率は以下の通りです。計算簡略化の為,すべて小数表記での計算となっています。効率の低下は燃料の使用量(支出)に影響するため,電力会社では熱効率が非常に重要なファクターとなっています。

①ボイラ効率\( \ \eta _{\mathrm {B}} \ \)
ボイラで燃料を燃焼し,給水を蒸気にする際の熱交換率の指標です。排ガス損失等があります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {B}}&=&\frac {ボイラの蒸気として得た熱量}{燃料使用量から換算した熱量} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

②タービン室効率\( \ \eta _{\mathrm {T}} \ \)
タービンに入った蒸気がどの程度のタービン出力になるかの効率で,タービン室という名前はタービンと復水器を合わせた効率という意味です。一般的な汽力発電所では一番ロスが大きい場所となります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {T}}&=&\frac {タービン軸出力}{タービンへ入る蒸気の熱量} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

③発電機効率\( \ \eta _{\mathrm {G}} \ \)
発電機の風損や巻線抵抗損等を考慮した効率で,一般的な水素発電機では\( \ \mathrm {98~99%} \ \)程度となっています。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {G}}&=&\frac {発電機出力}{タービン軸出力} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

④発電端効率\( \ \eta _{\mathrm {P}} \ \)
発電ユニットの効率を表すもので,燃料の熱量がどの程度発電されたかを示す指標です。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {P}}&=&\frac {発電機出力}{燃料使用量から換算した熱量}&=&\eta _{\mathrm {B}}\cdot \eta _{\mathrm {T}}\cdot \eta _{\mathrm {G}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

⑤送電端効率\( \ \eta _{\mathrm {S}} \ \)
発電端効率から所内率\( \ L \ \)を考慮し算出した効率で,発電所としての総合効率の指標となります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {S}}&=&\eta _{\mathrm {P}}( 1-L ) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【解答】

解答:(4)
題意に沿ってフローを描くと図1のようになる。

図1において単位時間当たりの平均燃料使用量\(F\)は
\[
\begin{eqnarray}
F &=&\frac {1100 \times 10^{3} \mathrm {[kg]}}{30[日]\times 24 \mathrm {[h]} \times 3600 \mathrm {[s/h]} } \\[ 5pt ] &≒&0.42438 \ \mathrm {[kg/s]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。したがって,単位時間あたりの発熱量\(Q \ \mathrm {[kJ/s]}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
Q &=&44000F \\[ 5pt ] &=&44000\times 0.42438 \\[ 5pt ] &≒&18673 \ \mathrm {[kJ/s]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。
一方,1時間あたりの送電端電力量\(W _{\mathrm {S}}\)は
\[
\begin{eqnarray}
W _{\mathrm {S}} &=&\frac {5000 \times 10^{3} \mathrm {[kWh]}}{30[日]\times 24 \mathrm {[h]} } \\[ 5pt ] &≒&6944.4 \ \mathrm {[kWh]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。\(1 \ \mathrm {[kWh]}\)は\(1 \ \mathrm {[kW]}\)で1時間運転した時の電力量であるから,この汽力発電所の平均出力\(P\)は,
\[
P=6944.4 \ \mathrm {[kW]}
\] となる。よって,総合効率\(\eta _{\mathrm {S}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {S}} &=&\frac {P}{Q} \\[ 5pt ] &=&\frac {6944.4}{18673} \\[ 5pt ] &≒&0.37190 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。ワンポイント解説より,各値を代入して,ボイラ効率\(\eta _{\mathrm {B}}\)を求めると,
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {S}} &=&\eta _{\mathrm {P}}( 1-L ) \\[ 5pt ] \eta _{\mathrm {S}} &=&\eta _{\mathrm {B}}\cdot \eta _{\mathrm {T}}\cdot \eta _{\mathrm {G}}( 1-L ) \\[ 5pt ] 0.37190 &=&\eta _{\mathrm {B}}\times 0.47\times 0.98\times (1-0.05) \\[ 5pt ] \eta _{\mathrm {B}}&≒&0.8499 → 85 \ [%]\\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。