《電力》〈送電〉[H30:問10]送配電系統における過電圧の特徴に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

送配電系統における過電圧の特徴に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 鉄塔又は架空地線が直撃雷を受けたとき,鉄塔の電位が上昇し,逆フラッシオーバが起きることがある。

(2) 直撃でなくても電線路の近くに落雷すれば,電磁誘導や静電誘導で雷サージが発生することがある。これを誘導雷と呼ぶ。

(3) フェランチ効果によって生じる過電圧は,受電端が開放又は軽負荷のとき,進み電流が線路に流れることによって起こる。この現象は,送電線のこう長が長いほど著しくなる。

(4) 開閉過電圧は,遮断器や断路器などの開閉操作によって生じる過電圧である。

(5) 送電線の1線地絡時,健全相に現れる過電圧の大きさは,地絡場所や系統の中性点接地方式に依存する。直接接地方式の場合,非接地方式と比較すると健全相の電圧上昇倍率が低く,地絡電流を小さくすることができる。

【ワンポイント解説】

用語の基本に関する選択肢が多いので,電験の誤答選択問題としては比較的取り組みやすい問題ではないでしょうか。中性点接地方式は非常によく出題される内容なので,4種類の特徴を理解しておくと良いと思います。

1.中性点接地方式の比較
中性点接地方式の分類は電圧階級により下表のように区分されますが,配電線のように電圧が低く,地絡発生時の電圧上昇が大きくなってもさほど問題にならない場合は,非接地方式が採用されます。
\[
\begin{array}{|c||c|c|c|c|}
\hline
& 非接地 & 消弧リアクトル接地 & 抵抗接地 & 直接接地 \\
\hline
\hline
電圧階級 & \mathrm {6.6kV} & \mathrm {22~77kV} & \mathrm {22~154kV} & \mathrm {187kV}以上   \\
\hline
健全相電位上昇 & 大 & 大 & 中 & 小 \\
\hline
一線地絡電流 & 小 & 最小 & 中 & 大 \\
\hline
\end{array}
\]

2.フェランチ効果
夜間等の軽負荷時,送電端電圧よりも受電端電圧が高くなってしまう事象で,送電線の静電容量が大きく,こう長が長い時に発生しやすい現象です。

【関連する「電気の神髄」記事】

  中性点接地方式の種類と特徴

【解答】

解答:(5)
(1):正しい
問題文は逆フラッシオーバそのものの説明となっています。

(2):正しい
問題文は誘導雷そのものの説明となっています。

(3):正しい
問題文の通り,送電線のこう長が長いほど送電線の静電容量が大きくなるので,過電圧も大きくなります。

(4):正しい
問題文は開閉過電圧そのものの説明となっています。

(5):誤り
ワンポイント解説「1.中性点接地方式の比較」の通り,直接接地方式の場合,非接地方式と比較すると健全相の電圧上昇倍率が低いですが,地絡電流が大きくなるという特徴があります。