《電力》〈変電〉[R01:問8]保護継電器の動作時間に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★★(難しい)

図1のように,定格電圧\( \ 66 \ \mathrm {kV} \ \)の電源から三相変圧器を介して二次側に遮断器が接続された三相平衡系統がある。三相変圧器は定格容量\( \ 7.5 \ \mathrm {MV\cdot A} \ \),変圧比\( \ 66 \ \mathrm {kV}/6.6 \ \mathrm {kV} \ \),百分率インピーダンスが自己容量基準で\( \ 9.5 \ \mathrm {%} \ \)である。また,三相変圧器一次側から電源側をみた百分率インピーダンスは基準容量\( \ 10 \ \mathrm {MV\cdot A} \ \)で\( \ 1.9 \ \mathrm {%} \ \)である。過電流継電器(\( \ \mathrm {OCR} \ \))は変流比\( \ 1000 \ \mathrm {A}/5 \ \mathrm {A} \ \)の計器用変流器(\( \ \mathrm {CT} \ \))の二次側に接続されており,整定タップ電流値\( \ 5 \ \mathrm {A} \ \),タイムレバー位置\( \ 1 \ \)に整定されている。図1の\( \ \mathrm {F} \ \)点で三相短絡事故が発生したとき,過電流継電器の動作時間\( \ \mathrm {[s]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし,三相変圧器二次側から\( \ \mathrm {F} \ \)点までのインピーダンス及び負荷は無視する。また,過電流継電器の動作時間は図2の限時特性に従い,計器用変流器の磁気飽和は考慮しないものとする。

 (1) \(0.29\)  (2) \(0.34\)  (3) \(0.38\)  (4) \(0.46\)  (5) \(0.56\)  

【ワンポイント解説】

百分率インピーダンスや事故電流の導出,タイムレバー位置等様々な知識が問われる問題です。2種受験生でもなかなか解けないのではないかと思うレベルの問題です。

1.オーム法からパーセントインピーダンス法への変換
基準容量を\( \ P_{\mathrm {n}} \ \),基準電圧を\( \ V_{\mathrm {n}} \ \),基準電流を\( \ I_{\mathrm {n}} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
%Z&=&\frac {ZI_{\mathrm {n}}}{\displaystyle \frac {V_{\mathrm {n}}}{\sqrt {3}}}\times 100 (定義) \\[ 5pt ] &=&\frac {\sqrt {3}ZI_{\mathrm {n}}}{V_{\mathrm {n}}}\times 100 \\[ 5pt ] &=&\frac {\sqrt {3}ZV_{\mathrm {n}}I_{\mathrm {n}}}{V_{\mathrm {n}}^{2}}\times 100 \\[ 5pt ] &=&\frac {P_{\mathrm {n}}Z}{V_{\mathrm {n}}^{2}}\times 100   (∵P_{\mathrm {n}}=\sqrt {3}V_{\mathrm {n}}I_{\mathrm {n}} ) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

2.百分率インピーダンス容量換算
「1.オーム法からパーセントインピーダンス法への変換」の通り,百分率インピーダンスは基準容量に比例します。したがって,基準容量\( \ P_{\mathrm {A}} \ \)から\( \ P_{\mathrm {B}} \ \)へ変換する場合の百分率インピーダンスは,
\[
\begin{eqnarray}
%Z_{\mathrm {B}}&=&\frac {P_{\mathrm {B}}}{P_{\mathrm {A}}}%Z_{\mathrm {A}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

3.百分率インピーダンスの短絡電流計算
百分率インピーダンスを\( \ %Z \ \)とすると,三相短絡電流\( \ I_{\mathrm {s}} \ \)は,基準電流\( \ I_{\mathrm {n}} \ \)を用いて,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {s}}&=&\frac {I_{\mathrm {n}}}{%Z/100} \\[ 5pt ] &=&\frac {100I_{\mathrm {n}}}{%Z} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

※百分率インピーダンスの定義式等から上式を求めることはできますが,試験時には暗記しておいた方が良いと思います。

【解答】

解答:(3)
変圧器の百分率インピーダンスを\( \ 10 \ \mathrm {MV\cdot A} \ \)基準に変換すると,ワンポイント解説「2.百分率インピーダンス容量換算」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
%Z_{\mathrm {T}}&=&\frac {10}{7.5}\times 9.5 \\[ 5pt ] &≒&12.67 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,系統全体の百分率インピーダンス\( \ %Z \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
%Z&=&%Z_{\mathrm {T}}+1.9 \\[ 5pt ] &=&12.67+1.9 \\[ 5pt ] &=&14.57 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。また,変圧器二次側の定格電流\( \ I_{\mathrm {n}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {n}}&=&\frac {P_{\mathrm {n}}}{\sqrt {3}V_{\mathrm {n}}} \\[ 5pt ] &=&\frac {10\times 10^{6}}{\sqrt {3}\times 6.6\times 10^{3}} \\[ 5pt ] &≒&874.8 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,三相短絡電流\( \ I_{\mathrm {s}} \ \)は,ワンポイント解説「3.百分率インピーダンスの短絡電流計算」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {s}}&=&\frac {100I_{\mathrm {n}}}{%Z} \\[ 5pt ] &=&\frac {100\times 874.8}{14.57} \\[ 5pt ] &≒&6004 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。過電流継電器(\( \ \mathrm {OCR} \ \))の変流比\( \ 1000 \ \mathrm {A}/5 \ \mathrm {A} \ \)であるから,計器用変流器(\( \ \mathrm {CT} \ \))の二次側の電流\( \ I_{\mathrm {s2}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {s2}}&=&\frac {5}{1000}\times I_{\mathrm {s}} \\[ 5pt ] &=&\frac {5}{1000}\times 6004 \\[ 5pt ] &=&30.02 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。この値は整定タップ電流値の約\( \ 6 \ \)倍となるので,図2の限時特性に従い,動作時間を求めると図2-1のように\( \ 3.8 \ \)秒と求められる。
図2-1はタイムレバー位置が\( \ 10 \ \)の時の特性であるため,タイムレバー位置が\( \ 1 \ \)の時動作時間\( \ t \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
t&=&\frac {1}{10}\times 3.8 \\[ 5pt ] &=&0.38 \ \mathrm {[s]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。