《電力》〈送電〉[R2:問11]架空送電線路と地中送電線路の比較に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

我が国における架空送電線路と比較した地中送電線路の特徴に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 地中送電線路は,同じ送電容量の架空送電線路と比較して建設費が高いが,都市部においては保安や景観などの点から地中送電線路が採用される傾向にある。

(2) 地中送電線路は,架空送電線路と比較して気象条件に起因した事故が少なく,近傍の通信線に与える静電誘導,電磁誘導の影響も少ない。

(3) 地中送電線路は,同じ送電電圧の架空送電線路と比較して,作用インダクタンスは小さく,作用静電容量が大きいため,充電電流が大きくなる。

(4) 地中送電線路の電力損失では,誘電体損とシース損を考慮するが,コロナ損は考慮しない。一方,架空送電線路の電力損失では,コロナ損を考慮するが,誘電体損とシース損は考慮しない。

(5) 絶縁破壊事故が発生した場合,架空送電線路では自然に絶縁回復することは稀であるが,地中送電線路では自然に絶縁回復して再送電できる場合が多い。

【ワンポイント解説】

地中送電線路と架空送電線路に関する比較です。架空送電も身近にあり,地中送電もどういうものかイメージしやすいと思いますので,長所や短所もイメージしながら覚えることをおすすめします。

1.地中送電の特徴
【長所】
 ・自然災害による影響や他接触物による外部事故が少ない。
 ・都市の景観が保たれる。
 ・露出充電部が少ないので,感電や火災の危険性が低い。
 ・通信線への誘導障害が少ない。

【短所】
 ・工期が長くなり,建設費も高くなる。
 ・事故箇所の特定が難しく,事故復旧に時間がかかる。
 ・放熱性が低いため,導体の太さが同じ場合,送電容量が小さくなる。
 ・ケーブルの場合静電容量が数十倍となり,充電電流が大きい。

2.ケーブルに発生する損失
①抵抗損
導体の抵抗により発生する損失で,導体電流の\( \ 2 \ \)乗に比例します。

②誘電体損
ケーブルの絶縁体部に流れる電流のうち,抵抗成分に流れる電流による損失です。ケーブルは図1の断面図を見ると分かると思いますが,コンデンサを巻いたような形状となっています。この誘電体部が劣化してくると抵抗分が大きくなる傾向があり,損失が増加します。

③シース損
ケーブルの絶縁体部の外側に巻く金属(シース)を流れる循環電流と渦電流による損失です。ケーブル導体を流れる電流から発生する磁束により電圧が誘起され発生します。

【解答】

解答:(5)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.地中送電の特徴」の通り,地中送電は建設費が高いですが,都市部においては保安や景観などの観点から採用されることが多いです。

(2)正しい
ワンポイント解説「1.地中送電の特徴」の通り,気象条件に起因した自然災害が少なく,近傍の通信線に与える静電誘導,電磁誘導の影響も少ない特長があります。

(3)正しい
ワンポイント解説「1.地中送電の特徴」の通り,地中送電線は作用インダクタンスは小さく,作用静電容量が大きく,充電電流が大きくなります。

(4)正しい
ワンポイント解説「2.ケーブルに発生する損失」の通り,地中送電線路の電力損失では,誘電体損とシース損を考慮しますが,コロナ損は空気の絶縁が破壊されることにより発生する放電現象による損失なので,考慮しません。架空送電線は,裸電線なので,誘電体やシースがないため誘電体損とシース損を考慮せず,空気に触れているためコロナ損は考慮することになります。

(5)誤り
ワンポイント解説「1.地中送電の特徴」の通り,地中送電線路で絶縁破壊事故が発生した場合,誘電体が損傷しており,事故箇所の特定が難しく,事故復旧に時間がかかります。一方,架空送電の場合,落雷等による一時的な絶縁破壊が多いため,自然復旧する場合が多いです。