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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,水力発電所の種類に関する記述である。
水力発電所は\( \ \fbox { (ア) } \ \)を得る方法により分類すると,水路式,ダム式,ダム水路式があり,\( \ \fbox { (イ) } \ \)の利用方法により分類すると,流込み式,調整池式,貯水池式,揚水式がある。
一般的に,水路式はダム式,ダム水路式に比べ\( \ \fbox { (ウ) } \ \)。貯水ができないので発生電力の調整には適さない。ダム式発電では,ダムに水を蓄えることで\( \ \fbox { (イ) } \ \)の調整ができるので,電力需要が大きいときにあわせて運転することができる。
河川の自然の流れをそのまま利用して発電する方式を\( \ \fbox { (エ) } \ \)発電という。貯水池などを持たない水路式発電所がこれに相当する。
\( \ 1 \ \)日又は数日程度の河川流量を調整できる大きさを持つ池を持ち,電力需要が小さいときにその池に蓄え,電力需要が大きいときに放流して発電する方式を\( \ \fbox { (オ) } \ \)発電という。自然の湖や人工の湖などを用いてもっと長期間の需要変動に応じて河川流量を調整・使用する方式を貯水池式発電という。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) & 落差 & 流速 & 建設期間が長い & 調整池式 & ダム式 \\
\hline
(2) & 流速 & 落差 & 建設期間が短い & 調整池式 & ダム式 \\
\hline
(3) & 落差 & 流量 & 高落差を得にくい & 流込み式 & 揚水式 \\
\hline
(4) & 流量 & 落差 & 建設費が高い & 流込み式 & 調整池式 \\
\hline
(5) & 落差 & 流量 & 建設費が安い & 流込み式 & 調整池式 \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
水力発電所の種類と分類に関する問題です。
取水方式及び河川の利用方法のいずれも水力発電の基本事項となるので,理解しておくようにしましょう。
また,絶対とは言い切れませんが,電験では選択肢が一つしかない例えば(ア)の流速や流量,(イ)の流速,(オ)の揚水式等は誤答の可能性が高いことを知っておくと武器になるかと思います。
1.水力発電所の取水方式
①水路式
下図のように,比較的自然勾配のある河川を取水ダムでせき止め,導水路と水圧管を経て落差を得て,水車へ水を送る方式です。
出典:尾上建夫;みんなが欲しかった!電験三種 電力の実践問題集 P.2,TAC出版
②ダム式
下図のように,ダムにより河川をせき止めることで生じる落差を利用して水車へ水を送る方式です。サージタンクが不要という特徴があります。
ダムの建設に両岸の頑丈な地盤が必須であり,水路式に比べると一般に建設コストが高くなります。
出典:尾上建夫;みんなが欲しかった!電験三種 電力の実践問題集 P.3,TAC出版
③ダム水路式
水路式とダム式を組み合わせたような方式で,ダムで貯水した水を導水路で落差が得られる地点まで導き,その後水車へ水を送る方式です。
2.水力発電所の河川の利用方法
①流込み式
水路式発電所で使用され,河川の自然の流れをそのまま利用し,流量見合いて発電する方式です。したがって,流量を調整する機能がないので,季節や雨量等により発電量が変わります。水路式が該当します。
②調整池式
\( \ 1 \ \)~数日程度の貯水をできる調整池を持ち,電力需要が小さいときは流量を抑え,電力需要のピーク時に流量を増やし,発電量を増加させる方式です。ダム式やダム水路式が該当します。
③貯水池式
調整池よりも容量の大きい貯水池で,季節や雨量の変化に対応し,長期間の需要変動に応じて発電量を調整する方式です。大型のダム式やダム水路式で採用されることが多いです。
④揚水式
上部調整池と下部調整池を持ち,発電電動機で夜間休祭日等の軽負荷時に水を上池に揚水して,昼間の重負荷時に発電する方式です。負荷を平準化することができるので,発電設備全体の利用率が上がり,さらに揚水時にも負荷調整ができる等の特長があります。
【解答】
解答:(5)
(ア)
ワンポイント解説「1.水力発電所の取水方式」の通り,水路式,ダム式,ダム水路式は落差を得る方法による分類となります。
(イ)
ワンポイント解説「2.水力発電所の河川の利用方法」の通り,流込み式,調整池式,貯水池式,揚水式は河川の流量調整による分類となります。
(ウ)
水路式は,建設期間が短く建設費も安くなりやすいですが,高落差を得にくい方式です。したがって,この選択肢で正答を確定することはできません。
(エ)
ワンポイント解説「2.水力発電所の河川の利用方法」の通り,河川の自然の流れをそのまま利用して発電する方式は流込み式発電といいます。
(オ)
ワンポイント解説「2.水力発電所の河川の利用方法」の通り,\( \ 1 \ \)日又は数日程度の河川流量を調整できる大きさを持つ池を持つ方式は調整池式発電といいます。