《電力》〈電気施設管理(法規)〉[R4下:問11]電力の需要と供給に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,電力の需要と供給に関する記述である。

電力の需要は\( \ 1 \ \)日の間で大きく変動し,一般に日中に需要が最大となる。一方で,\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)の大量導入に伴って,日中の発電量が需要を上回る事例も報告されている。需要電力の平準化や,電力の需給バランスの確保のために,\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)発電が用いられている。また近年では,\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)電池などの電力貯蔵装置の技術が向上している。

天候の急変時や発電所の故障発生時にも周波数を標準周波数へと回復させるために,\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)が確保されている。部分負荷運転中の水力発電機や\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)発電機などが\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)の対象となる。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) &  ベース供給力  &  流込み式  &  燃料  &  運転予備力  &  原子力  \\
\hline
(2) &  ベース供給力  &  揚水式  &  蓄  &  運転予備力  &  原子力  \\
\hline
(3) &  ベース供給力  &  流込み式  &  燃料  &  ミドル供給力  &  火力  \\
\hline
(4) &  太陽光発電  &  揚水式  &  燃料  &  ミドル供給力  &  火力  \\
\hline
(5) &  太陽光発電  &  揚水式  &  蓄  &  運転予備力  &  火力  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

電力の需給に関する問題です。
常識的な内容も含まれるため,多くの受験生が正答できたのではないかと思います。
電力科目というよりは,法規の電気施設管理に出題されやすい問題と言えるでしょう。

1.近年の電力需給カーブと電源構成
近年は太陽光発電をはじめとした自然エネルギーの普及に伴い電力需給のバランスが変化してきており,特に下図に示すように気候が比較的穏やかで日照量も多い5月等は日中の発電量が電力需要を上回り,太陽光発電の出力制限をかける事例も発生してきています。
一方\( \ \mathrm {NAS} \ \)電池をはじめとした,電力貯蔵用の大型の蓄電池の技術も向上し,こちらは負荷平準化に貢献しています。
自然エネルギー普及前から使用されている電源はベース供給力(原子力,石炭火力,流れ込み式水力等),ミドル供給力(天然ガス等),ピーク供給力(石油火力,揚水式水力)に分けられていましたが,これに自然エネルギーの要素が加わり,より高度な需給調整が必要になってきたと言えるでしょう。

出典:自然エネルギー庁 広報パンフレット 日本のエネルギー
URL:https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2022.pdf

2.供給予備力の種類
日々刻々と変化する電力需要に対する供給予備力は,その変動量や応答時間等により以下の\( \ 3 \ \)種類に分けられています。

① 待機予備力
 主に火力発電所,特に石油火力発電所等で,発電機を停止して,数時間後に立ち上げられるような状態にしておくものを言います。
 電源系統や送電系統の不具合等により計画的に停止しなければならない場合等に立ち上げることがあります。

② 運転予備力
 部分負荷運転中の火力発電,ダム式や揚水式水力等数分後に供給力を上げることができる発電設備の割合です。
 不具合等で電源を即時停止しなければならない場合等に立ち上げることがあります。

③ 瞬動予備力
 ガバナフリー運転時の余力等があり,\( \ 10 \ \)秒以内に急速に出力を上昇して,部分負荷運転中の火力発電が出力上昇するまで,系統周波数を許容範囲内に維持する予備力となります。

【解答】

解答:(5)
(ア)
ワンポイント解説「1.近年の電力需給カーブと電源構成」の通り,日中の発電量が需要を上回る事例は太陽光発電の大量導入が大きな要因となります。

(イ)
ワンポイント解説「1.近年の電力需給カーブと電源構成」の通り,需要電力の平準化や,電力の需給バランスの確保には揚水式発電が用いられています。揚水式発電は発電時のみならず揚水時にも流量調整ができるのが特徴です。

(ウ)
ワンポイント解説「1.近年の電力需給カーブと電源構成」の通り,電池などの電力貯蔵装置の技術が向上しています。

(エ)
ワンポイント解説「2.供給予備力の種類」の通り,天候の急変時や発電所の故障発生時にも周波数を標準周波数へと回復させる目的で待機しているのは運転予備力となります。ただし,ミドル供給力も出力調整をし周波数調整に貢献しているため完全な誤りとも言い切れません。他の選択肢も考慮して正答を導きましょう。

(オ)
ワンポイント解説「2.供給予備力の種類」の通り,運転予備力となるのは部分負荷運転中の火力発電となります。