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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
復水器での冷却に海水を使用する汽力発電所が出力\( \ 600 \ \mathrm {MW} \ \)で運転しており,復水器冷却水量が\( \ 24 \ \mathrm {m^{3}/s} \ \),冷却水の温度上昇が\( \ 7 \ \mathrm {℃} \ \)であるとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし,海水の比熱を\( \ 4.02 \ \mathrm {kJ/\left( kg \cdot K\right) } \ \),密度を\( \ 1.02\times 10^{3} \ \mathrm {kg/m^{3}} \ \),発電機効率を\( \ 98 \ \mathrm {%} \ \)とする。
(a) 復水器で海水へ放出される熱量の値\( \ \mathrm {[kJ/s]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) \( \ 4.25\times 10^{4} \ \) (2) \( \ 1.71\times 10^{5} \ \) (3) \( \ 6.62\times 10^{5} \ \)
(4) \( \ 6.89\times 10^{5} \ \) (5) \( \ 8.61\times 10^{5} \ \)
(b) タービン室効率の値\( \ \mathrm {[%]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,条件を示していない損失は無視できるものとする。
(1) \( \ 41.5 \ \) (2) \( \ 46.5 \ \) (3) \( \ 47.0 \ \) (4) \( \ 47.5 \ \) (5) \( \ 48.0 \ \)
【ワンポイント解説】
汽力発電所の熱量計算に関する問題です。
汽力発電所の計算には大きく分けて燃焼計算と熱効率計算,速度調定率計算がありますが,この問題は熱効率計算の中の特に損失の大きい復水器での損失に関する計算です。
莫大な熱が失われることから,桁数も大きくなりますので,計算間違いに注意して正答を導き出すようにして下さい。
1.汽力発電所の各効率
汽力発電所で用いられる効率は以下の通りです。効率の低下は燃料の使用量(支出)に影響するため,発電事業者では熱効率が非常に重要なファクターとなっています。
①ボイラ効率\( \ \eta _{\mathrm {B}} \ \)
ボイラで燃料を燃焼し,給水を蒸気にする際の熱交換率の指標です。排ガス損失等があります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {B}}&=&\frac {ボイラの蒸気として得た熱量}{燃料使用量から換算した熱量} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
②タービン室効率\( \ \eta _{\mathrm {T}} \ \)
タービンに入った蒸気がどの程度のタービン出力になるかの効率で,タービン室という名前はタービンと復水器を合わせた効率という意味です。一般的な汽力発電所では一番ロスが大きい場所となります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {T}}&=&\frac {タービン軸出力}{タービンへ入る蒸気の熱量} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
③発電機効率\( \ \eta _{\mathrm {G}} \ \)
発電機の風損や巻線抵抗損等を考慮した効率で,一般的な水素発電機では\( \ \mathrm {98~99%} \ \)程度となっています。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {G}}&=&\frac {発電機出力}{タービン軸出力} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
④発電端効率\( \ \eta _{\mathrm {P}} \ \)
発電ユニットの効率を表すもので,燃料の熱量がどの程度発電されたかを示す指標です。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {P}}&=&\frac {発電機出力}{燃料使用量から換算した熱量}&=&\eta _{\mathrm {B}}\cdot \eta _{\mathrm {T}}\cdot \eta _{\mathrm {G}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
⑤送電端効率\( \ \eta _{\mathrm {S}} \ \)
発電端効率から所内率\( \ L \ \)を考慮し算出した効率で,発電所としての総合効率の指標となります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {S}}&=&\eta _{\mathrm {P}}( 1-L ) \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
2.\( \ \mathrm {[kJ]} \ \)と\( \ \mathrm {[kW\cdot h]} \ \)の変換
単位の定義より,
\[
\begin{eqnarray}
1 \ \mathrm {[kJ/s]} &=&1 \ \mathrm {[kW]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
であるから,両辺の単位に\( \ \mathrm {[s]} \ \)をかけると,
\[
\begin{eqnarray}
1 \ \mathrm {[kJ]} &=&1 \ \mathrm {[kW\cdot s]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となり,両辺に\( \ 1 \ \mathrm {[h]}=3600 \ \mathrm {[s]} \ \)を考慮して,\( \ 3600 \ \)をかけると,
\[
\begin{eqnarray}
3 \ 600 \ \mathrm {[kJ]} &=&1 \ \mathrm {[kW\cdot h]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
3.海水の温度上昇\( \ \Delta T \ \)と熱量\( \ Q \ \)の関係
海水の流量を\( \ W \ \mathrm {[m^{3}/s]} \ \),海水の比熱を\( \ c \ \mathrm {[kJ/\left( kg\cdot K\right) ]} \ \),海水の密度を\( \ \rho \ \mathrm {[kg/m^{3}]} \ \),温度上昇を\( \ \Delta T \ \mathrm {[℃]} \ \)とすると,\( \ 1 \ \mathrm {[s]} \ \)当たりに持ち去る熱量\( \ Q \ \mathrm {[kJ/s]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
Q &=&c\rho W\Delta T \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で求められます。
【解答】
(a)解答:(4)
題意より,復水器冷却水量が\( \ W=24 \ \mathrm {[m^{3}/s]} \ \),冷却水の温度上昇が\( \ \Delta T =7 \ \mathrm {[℃]} \ \),海水の比熱が\( \ c=4.02 \ \mathrm {[kJ/\left( kg \cdot K\right) ]} \ \),密度が\( \ \rho =1.02\times 10^{3} \ \mathrm {[kg/m^{3}]} \ \)であるから,復水器で海水へ放出される熱量\( \ Q \ \mathrm {[kJ/s]} \ \)は,ワンポイント解説「3.海水の温度上昇\( \ \Delta T \ \)と熱量\( \ Q \ \)の関係」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
Q &=&c\rho W\Delta T \\[ 5pt ]
&=&4.02\times 1.02\times 10^{3}\times 24\times 7 \\[ 5pt ]
&≒&688 \ 900 → 6.89\times 10^{5} \ \mathrm {[kJ/s]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。
(b)解答:(3)
タービン軸出力\( \ P_{\mathrm {T}} \ \mathrm {[kW]} \ \)は,出力\( \ P=600 \ 000 \ \mathrm {[kW]} \ \),発電機効率\( \ \eta _{\mathrm {G}}=0.98 \ \)であるから,ワンポイント解説「1.汽力発電所の各効率」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
P &=&P_{\mathrm {T}}\eta _{\mathrm {G}} \\[ 5pt ]
P_{\mathrm {T}}&=&\frac {P}{\eta _{\mathrm {G}}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {600 \ 000}{0.98} \\[ 5pt ]
&≒&612 \ 200 \ \mathrm {[kW]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
であり,タービンへ入る蒸気の熱量\( \ Q_{\mathrm {i}} \ \mathrm {[kJ/s]} \ \)は,ワンポイント解説「2.\( \ \mathrm {[kJ]} \ \)と\( \ \mathrm {[kW\cdot h]} \ \)の変換」の通り\( \ 1 \ \mathrm {[kJ/s]} =1 \ \mathrm {[kW]} \ \)であることから,
\[
\begin{eqnarray}
Q_{\mathrm {i}} &=&P_{\mathrm {T}}+Q \\[ 5pt ]
&=&612 \ 200+688 \ 900 \\[ 5pt ]
&≒&1 \ 301 \ 000 \ \mathrm {[kJ/s]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となる。よって,タービン室効率\( \ \eta _{\mathrm {T}} \ \mathrm {[%]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {T}}&=&\frac {P_{\mathrm {T}}}{Q_{\mathrm {i}}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {612 \ 200}{1301 \ 000} \\[ 5pt ]
&≒&0.4706 → 47.1 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。