《電力》〈原子力〉[R05下:問4]軽水炉で使用される原子燃料に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

軽水炉で使用されている原子燃料に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 中性子を吸収して核分裂を起こすことのできる核分裂性物質には,ウラン\( \ 235 \ \)やプルトニウム\( \ 239 \ \)がある。

(2) ウラン燃料は,二酸化ウランの粉末を焼き固め,ペレット状にして使用される。

(3) ウラン燃料には,濃縮度\( \ 90 \ \mathrm {%} \ \)程度の高濃縮ウランが使用される。

(4) ウラン\( \ 238 \ \)は中性子を吸収してプルトニウム\( \ 239 \ \)に変わるので,親物質と呼ばれる。

(5) 天然ウランは約\( \ 0.7 \ \mathrm {%} \ \)のウラン\( \ 235 \ \)を含み,残りはほとんどウラン\( \ 238 \ \)である。

【ワンポイント解説】

軽水炉で使用される原子燃料,特にウランに関する問題です。
ウラン燃料やウラン燃料における核分裂反応は電験でも頻出の分野で,核分裂反応自体は本問と直接は関係ありませんが,セットで理解しておくと覚えやすいかと思います。
本問は平成15年問4からの再出題となります。

1.原子炉での核分裂反応
原子燃料であるウランは核分裂性物質であるウラン\( \ 235 \ \)と中性子を吸収して核分裂性物質になるウラン\( \ 238 \ \)があり,それぞれの核分裂反応のイメージは図1及び図2に示すような形となります。

①ウラン\( \ 235 \ \)の核分裂反応
核分裂性物質であるウラン\( \ 235 \ \)は熱中性子が衝突することで,核分裂が発生し,その時にエネルギーを出すと同時に放射性物質と高速中性子を\( \ 2~3 \ \)個程度出します。高速中性子が再び減速材(軽水)にて減速され熱中性子になり,また別のウラン\( \ 235 \ \)に衝突することで連鎖反応を繰り返します。

②ウラン\( \ 238 \ \)の核分裂反応
親物質であるウラン\( \ 238 \ \)は熱中性子を一旦捕獲・吸収することで,核分裂性物質であるプルトニウム\( \ 239 \ \)になり,ウラン\( \ 235 \ \)と同様な核分裂反応を起こします。

以上のような過程を繰り返すことで連鎖反応を起こすのが原子炉での核分裂反応となります。
天然ウランでは\( \ 99 \ \mathrm {%} \ \)以上がウラン\( \ 238 \ \)でウラン\( \ 235 \ \)の割合は\( \ 0.7 \ \mathrm {%} \ \)程度しかなく,これでは連鎖反応が続かないので,連鎖反応が継続可能な\( \ 3 ~ 5 \ \mathrm {%} \ \)程度に濃縮(低濃縮ウラン)して使用します。

【解答】

解答:(3)
(1):正しい
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,中性子を吸収して核分裂を起こすことのできる核分裂性物質には,ウラン\( \ 235 \ \)やプルトニウム\( \ 239 \ \)があります。

(2):正しい
問題文の通り,ウラン燃料は二酸化ウランの粉末を焼き固めペレット状にし,さらに燃料集合体にして原子力発電で使用されます。

(3):誤り
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,ウラン燃料には,濃縮度\( \ 3~5 \ \mathrm {%} \ \)程度の低濃縮ウランが使用されます。

(4):正しい
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,ウラン\( \ 238 \ \)は中性子を吸収してプルトニウム\( \ 239 \ \)に変わるので,親物質と呼ばれます。

(5):正しい
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,天然ウランは約\( \ 0.7 \ \mathrm {%} \ \)のウラン\( \ 235 \ \)を含み,残りはほとんどウラン\( \ 238 \ \)となります。