《電力》〈火力〉[R06上:問3]コンバインドサイクル発電と汽力発電の比較に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

一般的な排熱回収方式のガスタービンコンバインドサイクル発電を,同一出力の汽力発電と比較した記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) コンバインドサイクル発電の方が,始動・停止時間が短い。

(2) コンバインドサイクル発電の方が,負荷変化に対する追従性が高い。

(3) コンバインドサイクル発電の方が,熱効率が高い。

(4) コンバインドサイクル発電の方が,外気温の最大出力に与える影響が小さい。

(5) コンバインドサイクル発電の方が,温排水量が少ない。

【ワンポイント解説】

コンバインドサイクル発電の特徴に関する問題です。
コンバインドサイクル発電でも特に出題されやすい内容で,令和5年上期問2令和4年下期問3と類題が続いていたため,多くの受験生が正答できたと予想されます。
今後も類題の出題は予想されますので,確実に理解しておくようにしましょう。

1.コンバインドサイクル発電
コンバインドサイクル発電は,ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた方式の発電であり,ガスタービンの高温排熱を排熱回収ボイラで回収し蒸気を発生させ,蒸気タービンで発電します。
熱効率が従来の汽力発電(約\( \ 40 \ \mathrm {%} \ \))に比べ格段に高く,近年は耐熱材料の採用によるガスタービンの高温化により,約\( \ 60 \ \mathrm {%} \ \)程度まで上昇しています。

2.コンバインドサイクル発電の特徴
コンバインドサイクル発電は同容量の汽力発電に比べ,以下の特徴があります。
・ガスタービンの排熱を利用するため,熱効率が高い
・蒸気タービンの使用水量が少ないので保有水量が少なく,起動停止時間が短い
・保有水量が少ないため,負荷追従性が高い
・蒸気タービンの使用水量が少ないので,復水器の冷却水量が少ない
・単位ユニット毎の運転台数の調整が可能なため,部分負荷時の熱効率の低下が少ない
・通風機や環境対策設備等の大形所内補機が少なく,所内率が小さい
・一般的な排熱回収方式では,気温が上がり空気が膨張するとガスタービン入口の空気密度が下がるため,最大出力が低下する
・ガスタービンは圧縮空気で駆動するため,単位出力あたりの排ガス量が多い

【解答】

解答:(4)
(1):正しい
ワンポイント解説「2.コンバインドサイクル発電の特徴」の通り,コンバインドサイクル発電の方が保有水量が少ないため,始動・停止時間が短いです。

(2):正しい
ワンポイント解説「2.コンバインドサイクル発電の特徴」の通り,コンバインドサイクル発電の方が保有水量が少ないため,負荷変化に対する追従性が高いです。

(3):正しい
ワンポイント解説「2.コンバインドサイクル発電の特徴」の通り,コンバインドサイクル発電の方が熱効率は高いです。

(4):誤り
ワンポイント解説「2.コンバインドサイクル発電の特徴」の通り,コンバインドサイクル発電の方が,気温が上がり空気が膨張するとガスタービン入口の空気密度が下がるため,外気温の最大出力に与える影響が大きいです。

(5):正しい
ワンポイント解説「2.コンバインドサイクル発電の特徴」の通り,蒸気タービンの使用水量が少ないので,復水器での温排水量は少ないです。