《電力》〈新エネルギー発電〉[R06上:問5]燃料電池の原理や特徴に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

燃料電池の原理と特徴に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 燃料は外部から供給され,直接,交流電力を発生する。

(2) 電解質により,りん酸形,溶融炭酸塩形,固体高分子形などに分類される。

(3) 水の電気分解と逆の化学反応を利用した発電方式である。

(4) 発電時の排熱を空調や給湯に活用できる。

(5) 天然ガスやメタノールを改質して発生させた水素を燃料として利用できる。

【ワンポイント解説】

燃料電池発電の特徴に関する問題です。
新エネルギー発電のうち,回転体を用いて発電するもの(風力発電,地熱発電,バイオマス発電)は直接交流を発生し,そうでないもの(太陽光発電,燃料電池発電)は直流を発生します。単体で覚えるのではなく,整理して覚えると,「なぜ回転体を用いると交流が発生するのか」という疑問が沸き,様々な知識が繋がってくることになります。
本問は平成15年問5とほとんどの選択肢が同じ類題となっています。

1.燃料電池発電の特徴
水素と酸素の化学反応を利用して直流の電力を得る発電方式で,以下のような特徴があります。
・エネルギー変換効率が良く,排熱利用により熱効率も大幅に上昇する
・発電時の騒音や振動が少ない
・燃料の水素の調達に課題がある
・出力が直流であるため,系統連系の際には交流に変換が必要
・スケールメリットがほとんどなく,コスト面で不利


出典:電験戦士教本「原子力・その他発電」 P.144
URL:https://denkenia-archives.stores.jp/

2.代表的な燃料電池
<低温作動形>
①固体高分子形
 電解質:固体高分子
 温 度:80~100℃
 出 力:数百kW
 用 途:家庭用,自動車用

②リン酸形
 電解質:リン酸
 温 度:150~200℃
 出 力:数千kW
 用 途:産業用

<高温作動形>
①固体酸化物形
 電解質:酸化ジルコニウム(セラミック)
 温 度:900~1000℃
 出 力:数十万kW
 用 途:分散型電源

②溶融炭酸塩形
 電解質:炭酸塩
 温 度:600~700℃
 出 力:数十万kW
 用 途:分散型電源

【解答】

解答:(1)
(1):誤り
ワンポイント解説「1.燃料電池発電の特徴」の通り,燃料電池発電は直流電力を発生するため,交流に変換するためにはインバータが必要となります。

(2):正しい
ワンポイント解説「2.代表的な燃料電池」の通り,燃料電池は電解質により,りん酸形,溶融炭酸塩形,固体高分子形などに分類されます。

(3):正しい
燃料電池発電の反応は\( \ \displaystyle \mathrm {H_{2}+\frac {1}{2}O_{2} →H_{2}O} \ \)となり,水の電気分解と逆の化学反応となります。

(4):正しい
ワンポイント解説「1.燃料電池発電の特徴」の通り,発電時の排熱を空調や給湯に活用でき,総合効率は高くなります。

(5):正しい
ワンポイント解説「1.燃料電池発電の特徴」の通り,燃料電池は天然ガスやメタノールを改質して発生させた水素を燃料として利用できます。