《電力》〈配電〉[H23:問13]配電線路の電圧調整の方法に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

配電線路の電圧調整に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 配電線のこう長が長くて負荷の端子電圧が低くなる場合,配電線路に昇圧器を設置することは電圧調整に効果がある。

(2) 電力用コンデンサを配電線路に設置して,力率を改善することは電圧調整に効果がある。

(3) 変電所では,負荷時電圧調整器・負荷時タップ切換変圧器等を設置することにより電圧を調整している。

(4) 配電線の電圧降下が大きい場合は,電線を太い電線に張り替えたり,隣接する配電線との開閉器操作により,配電系統を変更することは電圧調整に効果がある。

(5) 低圧配電線における電圧調整に関して,柱上変圧器のタップ位置を変更することは効果があるが,柱上変圧器の設置地点を変更することは効果がない。

【ワンポイント解説】

低圧需要家に供給する電圧は\( \ 101±6 \ \mathrm {[V]} \ \)もしくは\( \ 202±20 \ \mathrm {[V]} \ \)の範囲内に調整をする必要があります。
本問は誤答選択問題ではよくある「全て~でない」「~は効果がない」等のネガティブワードが誤りの問題となっています。設備に対して「効果がない」と言い切ってしまうと,もし効果があった場合に不適切問題となるため,このような選択肢は誤りである場合が多いです。

1.配電線路における電圧調整
①負荷時タップ切換変圧器(\( \ \mathrm {LRT} \ \))
 配電用変電所で行う調整で,変圧器のタップを切り換えることで,変圧比を調整し電圧を調整します。
②負荷時電圧調整器(\( \ \mathrm {LRA} \ \))
 配電用変電所に設置する電圧調整器で,母線電圧を調整します。
③柱上変圧器のタップ調整
 高圧線の変電所からの距離に応じて柱上変圧器のタップを調整し,低圧線の電圧を適正範囲内に調整します。
④自動電圧調整器(\( \ \mathrm {SVR} \ \))
 高圧配電線の途中に設置し,タップ切換器,変圧器,制御機構等で構成され,電圧を自動で調整します。
⑤昇圧器
 配電線のこう長が長くなり負荷の端子電圧が低くなる場合に設置します。
⑥電力用コンデンサ
 配電線路上に電力用コンデンサを設置し,開閉することで力率の改善を行い電圧を調整します。

【解答】

解答:(5)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.配電線路における電圧調整」の通り,配電線のこう長が長くて電圧降下が大きい場合には昇圧器を設けることがあります。

(2)正しい
ワンポイント解説「1.配電線路における電圧調整」の通り,力率を改善することで電圧調整が可能となります。配電線路の電圧降下の近似式\( \ \varepsilon =\sqrt {3}I \left( R\cos \theta +X\sin \theta \right) \ \)は覚えておきましょう。

(3)正しい
ワンポイント解説「1.配電線路における電圧調整」の通り,変電所では負荷時電圧調整器(\( \ \mathrm {LRA} \ \))・負荷時タップ切換変圧器(\( \ \mathrm {LRT} \ \))等を設置することにより電圧を調整しています。

(4)正しい
配電線の電圧降下が大きいときは,電線を太い電線にすることで,線路抵抗を小さくしたり,系統変更したりすることで電圧調整する等の方法がとられます。

(5)誤り
柱上変圧器のタップ位置を変更することは,変圧器の変圧比が変わるため効果があります。また,柱上変圧器の設置地点を変更することで,線路末端での電圧を適正範囲内にすることが可能となる場合もあります。