《法規》〈電気設備技術基準〉[H22:問13]特別高圧架空電線路の風圧荷重に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

氷雪の多い地方のうち,海岸地その他の低温季に最大風圧を生ずる地方以外の地方において,電線に断面積\( \ 150 \ \mathrm {[{mm}^{2}]} \ \left( 19 \ 本 / 3.2 \ \mathrm {[mm]} \ \right) \ \)の硬銅より線を使用する特別高圧架空電線路がある。この電線\( \ 1 \ \)条,長さ\( \ 1 \ \mathrm {[m]} \ \)当たりに加わる水平風圧荷重について,「電気設備技術基準の解釈」 に基づき,次の(a)及び(b)に答えよ。

ただし,電線は図のようなより線構成とする。

(a) 高温季における風圧荷重\( \ \mathrm {[N]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。

 (1) \( \ 6.8 \ \)  (2) \( \ 7.8 \ \)  (3) \( \ 9.4 \ \)  (4) \( \ 10.6 \ \)  (5) \( \ 15.7 \ \)

(b) 低温季における風圧荷重\( \ \mathrm {[N]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。

 (1) \( \ 12.6 \ \)  (2) \( \ 13.7 \ \)  (3) \( \ 18.5 \ \)  (4) \( \ 21.6 \ \)  (5) \( \ 27.4 \ \)

【ワンポイント解説】

電気設備技術基準の解釈に基づく風圧荷重を求める問題です。
電気設備技術基準の解釈第58条の規定の知識があれば,それほど計算量は多くないので,実質的には法律の知識問題と言えるかと思います。

1.垂直投影面積
電線を横から見た時に投影される面積を垂直投影面積といい,図1のような外径が\( \ D \ \mathrm {[mm]} \ \),長さが\( \ L \ \mathrm {[m]} \ \)の電線があった場合の甲種風圧荷重に関する垂直投影面積\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
S&=&D\times 10^{-3}\times L \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,図2のように\( \ d \ \mathrm {[mm]} \ \)の氷雪がついた時の乙種風圧荷重に関する垂直投影面積\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
S&=&\left( D+2d \right) \times 10^{-3}\times L \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。


<電気設備の技術基準の解釈第58条(抜粋)>
架空電線路の強度検討に用いる荷重は、次の各号によること。

一 風圧荷重 架空電線路の構成材に加わる風圧による荷重であって、次の規定によるもの

 イ 風圧荷重の種類は、次によること。

  (イ) 甲種風圧荷重
   58-1表に規定する構成材の垂直投影面に加わる圧力を基礎として計算したもの、又は風速\( \ 40 \ \mathrm {m / s} \ \)以上を想定した風洞実験に基づく値より計算したもの

  (ロ) 乙種風圧荷重
    架渉線の周囲に厚さ\( \ 6 \ \mathrm {mm} \ \)、比重\( \ 0.9 \ \)の氷雪が付着した状態に対し、甲種風圧荷重の\( \ 0.5 \ \)倍を基礎として計算したもの

  (ハ) 丙種風圧荷重
    甲種風圧荷重の\( \ 0.5 \ \)倍を基礎として計算したもの

  (ニ) 着雪時風圧荷重
    架渉線の周囲に比重\( \ 0.6 \ \)の雪が同心円状に付着した状態に対し、甲種風圧荷重の\( \ 0.3 \ \)倍を基礎として計算したもの

 ロ 風圧荷重の適用区分は、58-2表によること。ただし、異常着雪時想定荷重の計算においては、同表にかかわらず着雪時風圧荷重を適用すること。

【解答】

(a)解答:(5)
電気設備の技術基準の解釈第58条58-2表の通り,高温季における風圧荷重は甲種風圧荷重である。
甲種風圧荷重における長さ\( \ 1 \ \mathrm {m} \ \)あたりの垂直投影面積\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)は,ワンポイント解説「1.垂直投影面積」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
S&=&3.2\times 10^{-3}\times 5 \times 1 \\[ 5pt ] &=&0.016 \ \mathrm {[m^{2}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,長さ\( \ 1 \ \mathrm {m} \ \)あたりの甲種風圧荷重\( \ F \ \mathrm {[N]} \ \)は,電気設備の技術基準の解釈第58条58-1表の通り,
\[
\begin{eqnarray}
F&=&980\times S \\[ 5pt ] &=&980\times 0.016 \\[ 5pt ] &≒&15.7 \ \mathrm {[N]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(2)
電気設備の技術基準の解釈第58条58-2表の通り,氷雪の多い地方のうち,海岸地その他の低温季に最大風圧を生ずる地方以外の地方の低温季における風圧荷重は乙種風圧荷重である。
乙種風圧荷重は,「架渉線の周囲に厚さ\( \ 6 \ \mathrm {mm} \ \)、比重\( \ 0.9 \ \)の氷雪が付着した状態に対し、甲種風圧荷重の\( \ 0.5 \ \)倍を基礎として計算したもの」であるから,乙種風圧荷重における長さ\( \ 1 \ \mathrm {m} \ \)あたりの垂直投影面積\( \ S^{\prime } \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)は,ワンポイント解説「1.垂直投影面積」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
S^{\prime }&=&\left( 3.2\times 10^{-3}\times 5+6\times 10^{-3}\times 2 \right) \times 1 \\[ 5pt ] &=&0.028 \ \mathrm {[m^{2}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] である。よって,長さ\( \ 1 \ \mathrm {m} \ \)あたりの乙種風圧荷重\( \ F^{\prime } \ \mathrm {[N]} \ \)は,電気設備の技術基準の解釈第58条58-1表の通り,
\[
\begin{eqnarray}
F&=&980\times 0.5\times S^{\prime } \\[ 5pt ] &=&980\times 0.5\times 0.028 \\[ 5pt ] &≒&13.7 \ \mathrm {[N]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。