《法規》〈電気施設管理〉[R01:問10]電力の供給に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電力の供給に関する記述である。

電気は\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)とが同時的であるため,不断の供給を使命とする電気事業においては,常に変動する需要に対処しうる供給力を準備しなければならない。

しかし,発電設備は事故発生の可能性があり,また,水力発電所の供給力は河川流量の豊渇水による影響で変化する。一方,太陽光発電,風力発電などの供給力は天候により変化する。さらに,原子力発電所や火力発電所も定期検査などの補修作業のため一定期間の停止を必要とする。このように供給力は変動する要因が多い。他方,需要も予想と異なるおそれもある。

したがって,不断の供給を維持するためには,想定される\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)に見合う供給力を保有することに加え,常に適量の\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)を保持しなければならない。

電気事業法に基づき設立された電力広域的運営推進機関は毎年,各供給区域(エリア)及び全国の供給力について需給バランス評価を行い,この評価を踏まえてその後の需給の状況を監視し,対策の実施状況を確認する役割を担っている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) \\
\hline
(1) & 発生と消費 & 最大電力 & 送電容量 \\
\hline
(2) & 発電と蓄電 & 使用電力量 & 送電容量 \\
\hline
(3) & 発生と消費 & 最大電力 & 供給予備力 \\
\hline
(4) & 発電と蓄電 & 使用電力量 & 供給予備力 \\
\hline
(5) & 発生と消費 & 使用電力量 & 供給予備力 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

電力の需給に関する問題となっています。電気は揚水発電や蓄電池等限られた量しか蓄えることができないため,原則的には常に需要と供給が一致していなければなりません。これを電力会社では同時同量という呼び方をします。

1.供給予備力の種類
電力会社で日常的に用いられる供給予備力としては以下の\( \ 3 \ \)種類があります。

① 待機予備力
 主に火力発電所,特に石油火力発電所等で,発電機を停止して,数時間後に立ち上げられるような状態にしておくものを言います。電源系統や送電系統の不具合等により計画的に停止しなければならない場合等に立ち上げることがあります。

② 運転予備力
 部分負荷中の火力発電,ダム式や揚水式水力等数分後に供給力を上げることができる発電設備の割合であり,不具合等で電源を即時停止しなければならない場合等に立ち上げることがあります。一般的に運転予備力は\( \ 8 ~10 \ \mathrm {%} \ \)程度あることが望ましいとされています。

③ 瞬動予備力
 ガバナフリー運転時の余力等があり,\( \ 10 \ \)秒以内に急速に出力を上昇して,部分負荷運転中の火力発電が出力上昇するまで,系統周波数を許容範囲内に維持する予備力となります。

【解答】

解答:(3)
(ア)
電力を蓄電することは難しいという点で,「発生と消費」が適当となります。
電力は貯めることができず,もし発生と消費のバランス(有効電力のバランス)が崩れた場合,発生が多い場合は周波数が上がり,発生が少ない場合は周波数が下がります。
電気事業法においても第26条で「一般送配電事業者は、その供給する電気の電圧及び周波数の値を経済産業省令で定める値に維持するように努めなければならない。」となっており,周波数が\( \ 50 \ \mathrm {Hz} \ \)もしくは\( \ 60 \ \mathrm {Hz} \ \)となるように維持しなければなりません。

(イ)
多量の電力を蓄電することは難しく,常に消費する電力を発電しなければならないので,「最大電力」が適当となります。
人間は一日においても昼起きて夜寝る,暑いと冷房,寒いと暖房を使用する等の行動特性があるため,どうしても電力需要は昼夜や季節等により大きく変わります。したがって,供給力すなわち発電設備はその最も多い需要(夏の昼間)に対応した設備が求められることになります。

(ウ)
送電線の事故等に備え,送電容量も余力を持つ必要がありますが,電力需給の観点では「供給予備力」の方がより適当となります。
電力の発電設備は一般の工場と同じく,配管や回転体を扱っているため,常に故障のリスクを持っています。供給予備力がない場合,気温の変化等で予想よりも需要が上昇した,事故が発生した,という事象が発生すると,一気に停電に繋がってしまいます。したがって,常に一日に想定される最大電力に+αの供給予備力を確保する必要があります。ワンポイント解説「1.供給予備力の種類」の通り,電力会社では万一の事態に備え,すぐに水力発電や火力発電の出力を上昇したり,起動したりできるようにしています。