《法規》〈電気施設管理〉[R3:問10]高圧受電設備における保護協調に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次のa)~e)の文章は,図の高圧受電設備における保護協調に関する記述である。
これらの文章の内容について,適切なものと不適切なものの組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

a) 受電設備内(図中\( \ \mathrm {A} \ \)点)において短絡事故が発生した場合,\( \ \mathrm {VCB} \ \)(真空遮断器)が,一般送配電事業者の配電用変電所の送り出し遮断器よりも早く動作するように\( \ \mathrm {OCR} \ \)(過電流継電器)の整定値を決定した。

b) \( \ \mathrm {TR2} \ \)(変圧器)の低圧側で,かつ\( \ \mathrm {MCCB2} \ \)(配線用遮断器)の電源側(図中\( \ \mathrm {B} \ \)点)で短絡事故が発生した場合,\( \ \mathrm {VCB} \ \)(真空遮断器)が動作するよりも早く\( \ \mathrm {LBS2} \ \)(負荷開閉器)の\( \ \mathrm {PF2} \ \)(電力ヒューズ)が溶断するように設計した。

c) 低圧の\( \ \mathrm {MCCB2} \ \)(配線用遮断器)の負荷側(図中\( \ \mathrm {C} \ \)点)で短絡事故が発生した場合,\( \ \mathrm {MCCB2} \ \)(配線用遮断器)が動作するよりも先に\( \ \mathrm {LBS2} \ \)(負荷開閉器)の\( \ \mathrm {PF2} \ \)(電力ヒューズ)が溶断しないように設計した。

d) \( \ \mathrm {SC} \ \)(高圧コンデンサ)の端子間(図中\( \ \mathrm {D} \ \)点)で短絡事故が発生した場合,\( \ \mathrm {VCB} \ \)(真空遮断器)が動作するよりも早く\( \ \mathrm {LBS3} \ \)(負荷開閉器)の\( \ \mathrm {PF3} \ \)(電力ヒューズ)が溶断するように設計した。

e) \( \ \mathrm {GR} \ \)付\( \ \mathrm {PAS} \ \)(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)は,高圧引込ケーブルで\( \ 1 \ \)線地絡事故が発生した場合であっても動作しないように設計した。
\[
\begin{array}{cccccc}
& \mathrm {a} & \mathrm {b} & \mathrm {c} & \mathrm {d} & \mathrm {e} \\
\hline
(1) &  適切   &  適切   &  適切   &  適切   &  不適切  \\
\hline
(2) &  不適切  &  不適切  &  適切   &  不適切  &  適切   \\
\hline
(3) &  適切   &  適切   &  不適切  &  不適切  &  不適切  \\
\hline
(4) &  適切   &  不適切  &  適切   &  適切   &  適切   \\
\hline
(5) &  不適切  &  適切   &  不適切  &  不適切  &  不適切  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

高圧受電設備における事故時の保護協調に関する問題です。
事故の除去はできるだけ迅速にかつ極小化して行う必要があります。したがって,基本的には事故箇所の直近上位の遮断器または開閉器を開放する必要があり,本問はその原則が分かっていれば解ける問題となっています。

【用語の解説】

\(\mathrm {ZCT}\)
零相変流器。変流器ではありますが,事故時に発生する零相電流を検出することを目的としてします。

\(\mathrm {PAS}\)
屋外用高圧交流負荷開閉器。開閉器の一つで,\( \ \mathrm {GR} \ \)付\( \ \mathrm {PAS} \ \)であると,地絡事故時に自動的に電路を開放する機能を持ちます。

\(\mathrm {CT}\)
変流器。大電流を小電流に変流し,計器が使用できる電流値にします。

\(\mathrm {VT}\)
計器用変圧器。高圧を低圧に変圧し,計器が使用できる電圧値にします。

\(\mathrm {OCR}\)
過電流継電器。\( \ \mathrm {CT} \ \)からの電流値がある値を超過した場合に動作し,遮断器に遮断信号を送る継電器です。

\(\mathrm {CB}\)
遮断器。事故時の電流を遮断します。\( \ \mathrm {VCB} \ \)は真空遮断器のことで\( \ \mathrm {MCCB} \ \)は配線用遮断器のことです。

\(\mathrm {LBS}\)
屋内用高圧交流負荷開閉器。通常の電流は開閉することが可能ですが,事故電流は遮断することができません。

\(\mathrm {DS}\)
断路器。停止時に電路を開閉する装置です。事故時の電流を遮断することはできません。

\(\mathrm {PF}\)
ヒューズ。設定した電流値が一定時間流れると溶断し,電路を遮断することができます。

\(\mathrm {SC}\)
進相コンデンサ。無効電力を進みにし,力率を調整する設備です。

\(\mathrm {TR}\)
変圧器。電圧を高圧から低圧に変圧するものです。

【解答】

解答:(1)
a)適切
\( \ \mathrm {A} \ \)点において短絡事故が発生した場合,直近上位の\( \ \mathrm {VCB} \ \)(真空遮断器)が,一般送配電事業者の配電用変電所の送り出し遮断器(問題図に記載のないさらに上位の遮断器)よりも早く動作するように\( \ \mathrm {OCR} \ \)(過電流継電器)の整定値を決定する必要があります。

b)適切
\( \ \mathrm {B} \ \)点で短絡事故が発生した場合,\( \ \mathrm {VCB} \ \)(真空遮断器)が動作するよりも早く直近上位の\( \ \mathrm {LBS2} \ \)(負荷開閉器)の\( \ \mathrm {PF2} \ \)(電力ヒューズ)が溶断するように設計する必要があります。

c)適切
\( \ \mathrm {C} \ \)点で短絡事故が発生した場合,\( \ \mathrm {MCCB2} \ \)(配線用遮断器)が先に動作するように設計する必要があります。問題文の記載がa)やb)と異なりやや引っ掛けとなっていますが,\( \ \mathrm {MCCB2} \ \)(配線用遮断器)よりも先に\( \ \mathrm {LBS2} \ \)(負荷開閉器)の\( \ \mathrm {PF2} \ \)(電力ヒューズ)が溶断しないようにする必要があります。

d)適切
図中\( \ \mathrm {D} \ \)点で短絡事故が発生した場合,\( \ \mathrm {VCB} \ \)(真空遮断器)が動作するよりも早く直近上位の\( \ \mathrm {LBS3} \ \)(負荷開閉器)の\( \ \mathrm {PF3} \ \)(電力ヒューズ)が溶断するように設計する必要があります。

e)不適切
\( \ \mathrm {GR} \ \)付\( \ \mathrm {PAS} \ \)(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)は,高圧引込ケーブルの直近上位となるので,高圧引込ケーブルで\( \ 1 \ \)線地絡事故が発生した場合に動作させる必要があります。