Contents
【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
負荷設備の容量が\( \ 800 \ \mathrm {kW} \ \),需要率が\( \ 70 \ \mathrm {%} \ \),総合力率が\( \ 90 \ \mathrm {%} \ \)である高圧受電需要家について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし,この需要家の負荷は低圧のみであるとし,変圧器の損失は無視するものとする。
(a) この需要負荷設備に対し\( \ 100 \ \mathrm {kV\cdot A} \ \)の変圧器,複数台で電力を供給する。この場合,変圧器の必要最小限の台数として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) \( \ 5 \ \) (2) \( \ 6 \ \) (3) \( \ 7 \ \) (4) \( \ 8 \ \) (5) \( \ 9 \ \)
(b) この負荷の月負荷率を\( \ 60 \ \mathrm {%} \ \)とするとき,負荷の月間総消費電力量の値\( \ \mathrm {[MW\cdot h]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,\( \ 1 \ \)カ月の日数は\( \ 30 \ \)日とする。
(1) \( \ 218 \ \) (2) \( \ 242 \ \) (3) \( \ 265 \ \) (4) \( \ 270 \ \) (5) \( \ 284 \ \)
【ワンポイント解説】
需要率と負荷率を使用した変圧器設置台数と消費電力量の導出に関する問題です。
需要率と負荷率の定義式を知っていればそれほど難解な問題ではないため,難易度の高かった令和4年度上期においては確実に得点しておきたい問題となります。
1.需要率,不等率,負荷率の定義
需要率,不等率,負荷率の定義は以下の通りとなります。
①需要率
\[
\begin{eqnarray}
需要率&=&\frac {最大需要電力}{設備容量}\times 100 [%] \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
②不等率(常に\( \ 1 \ \)以上となる)
\[
\begin{eqnarray}
不等率&=&\frac {個々の最大需要電力の合計}{合成の最大需要電力} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
③負荷率
\[
\begin{eqnarray}
負荷率&=&\frac {平均需要電力}{最大需要電力}\times 100 [%] \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【解答】
(a)解答:(3)
負荷設備の容量が\( \ P_{\mathrm {c}}=800 \ \mathrm {[kW]} \ \),需要率が\( \ 70 \ \mathrm {%} \ \)であるから,最大需要電力\( \ P_{\mathrm {m}} \ \mathrm {[kW]} \ \)は,ワンポイント解説「1.需要率,不等率,負荷率の定義」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
需要率&=&\frac {P_{\mathrm {m}}}{P_{\mathrm {c}}}\times 100 \\[ 5pt ]
P_{\mathrm {m}}&=&\frac {需要率\times P_{\mathrm {c}}}{100} \\[ 5pt ]
&=&\frac {70\times 800}{100} \\[ 5pt ]
&=&560 \ \mathrm {[kW]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
であり,総合力率\( \ \cos \theta =0.9 \ \)であるから,最大需要電力時の皮相電力\( \ S_{\mathrm {m}} \ \mathrm {[kV\cdot A]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {m}}&=&S_{\mathrm {m}}\cos \theta \\[ 5pt ]
S_{\mathrm {m}}&=&\frac {P_{\mathrm {m}}}{\cos \theta } \\[ 5pt ]
&=&\frac {560}{0.9} \\[ 5pt ]
&≒&622 \ \mathrm {[kV\cdot A]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となるので,\( \ 100 \ \mathrm {kV\cdot A} \ \)の変圧器の必要台数は\( \ 7 \ \)台以上と求められる。
(b)解答:(2)
月負荷率が\( \ 60 \ \mathrm {%} \ \)であるから,平均需要電力\( \ P_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[kW]} \ \)は,ワンポイント解説「1.需要率,不等率,負荷率の定義」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
負荷率&=&\frac {P_{\mathrm {a}}}{P_{\mathrm {m}}}\times 100 \\[ 5pt ]
P_{\mathrm {a}}&=&\frac {負荷率\times P_{\mathrm {m}}}{100} \\[ 5pt ]
&=&\frac {60\times 560}{100} \\[ 5pt ]
&=&336 \ \mathrm {[kW]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となる。よって,負荷の月間総消費電力量\( \ W \ \mathrm {[MW\cdot h]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
W&=&P_{\mathrm {a}}\times 24\times 30 \\[ 5pt ]
&=&336 \times 24\times 30 \\[ 5pt ]
&=&241 \ 920 \ \mathrm {[kW\cdot h]} → 242 \ \mathrm {[MW\cdot h]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。