《機械》〈電気機器〉[H21:問8]進相コンデンサに接続するリアクトルに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

高圧負荷の力率改善用として,その負荷が接続されている三相高圧母線回路に進相コンデンサが設置される。この進相コンデンサは,保護のためにリアクトルが\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)に挿入されるが,その目的は,コンデンサの電圧波形の\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)を軽減させ,かつ,進相コンデンサ投入時の突入電流を抑制するものである。したがって,進相コンデンサの定格設備容量は,コンデンサと\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)リアクトルを組み合わせた設備の定格電圧及び定格周波数における無効電力を示す。この\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)リアクトルの定格容量は,一般的には\( \ 5 \ \)次以上の高調波に対して,進相コンデンサ設備のインピーダンスを\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)にし,また,コンデンサの端子電圧の上昇を考慮して,コンデンサの定格容量の\( \ \fbox {  (エ)  } \ \mathrm {[%]} \ \)としている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句又は数値として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  直 列  &  ひずみ  &  容量性  &  3  \\
\hline
(2) &  並 列  &  波高率  &  誘導性  &  6  \\
\hline
(3) &  直 列  &  波高率  &  容量性  &  3  \\
\hline
(4) &  並 列  &  ひずみ  &  容量性  &  6  \\
\hline
(5) &  直 列  &  ひずみ  &  誘導性  &  6  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

進相コンデンサに直列に接続するリアクトルに関する問題です。
内容的には電力科目や法規科目の電気施設管理の問題に近いかなという印象です。
具体的な計算問題が令和2年法規科目問13に出題されていますので,合わせて学習してみて下さい。

1.直列リアクトル
図1に示すように,直列リアクトルは力率改善を目的に設置する進相コンデンサに直列に接続するリアクトルです。
進相コンデンサ投入時の突入電流を抑制するとともに,高調波発生機器から発生する高調波を系統に流出するのを抑制する役割があります。
突入電流を抑制に関しては,理論科目の過渡現象で学習するようにリアクトルには電流の変化を抑える性質があるため抑制できます。
高調波の系統流出抑制に関しては,直列リアクトルと進相コンデンサの高調波に対するインピーダンスを誘導性にしかつ小さくし,高調波のほとんどが進相コンデンサ側に流れ高調波が系統側に行かないようにします。

※高調波系統流出抑制の定量的な説明
高調波発生機器から発生する主な高調波は奇数次(\( \ 3 \ \)次,\( \ 5 \ \)次,\( \ 7 \ \)次・・・)ですが,第\( \ 3 \ \)次高調波は変圧器の\( \ \Delta \ \)結線で還流できるので,特に第\( \ 5 \ \)次高調波の影響が大きいです。したがって,高調波対策は一般に第\( \ 5 \ \)次高調波に対してなされます。

第\( \ 5 \ \)次高調波に対するリアクタンス\( \ X_{\mathrm {L5}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)及び\( \ X_{\mathrm {C5}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は,基本波に対するリアクタンスを\( \ X_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)及び\( \ X_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)とすると,周波数が\( \ 5 \ \)倍となるので,
\[
\begin{eqnarray}
X_{\mathrm {L5}}&=&2\pi \times 5f \times L \\[ 5pt ] &=&5 X_{\mathrm {L}} \\[ 5pt ] X_{\mathrm {C5}}&=&\frac {1}{2\pi \times 5f \times C} \\[ 5pt ] &=&\frac {X_{\mathrm {C}}}{5} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。したがって,第\( \ 5 \ \)次高調波に対するリアクタンスを誘導性にするためには,
\[
\begin{eqnarray}
X_{\mathrm {L5}}&>&X_{\mathrm {C5}} \\[ 5pt ] 5 X_{\mathrm {L}}&>&\frac {X_{\mathrm {C}}}{5} \\[ 5pt ] X_{\mathrm {L}}&>&\frac {X_{\mathrm {C}}}{25} \\[ 5pt ] X_{\mathrm {L}}&>&0.04X_{\mathrm {C}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,直列リアクトルのリアクタンスは進相コンデンサの\( \ 4 \ \mathrm {[%]} \ \)以上にする必要がありますが,\( \ \mathrm {JIS} \ \)では余裕をもって\( \ 6 \ \mathrm {[%]} \ \)としています。

【解答】

解答:(5)
(ア)
ワンポイント解説「1.直列リアクトル」の通り,進相コンデンサにはリアクトルを直列に接続します。

(イ)
ワンポイント解説「1.直列リアクトル」の通り,直列リアクトルを挿入する目的の一つに高調波による電圧波形のひずみを軽減させることがあります。

(ウ)
ワンポイント解説「1.直列リアクトル」の通り,高調波に対して進相コンデンサと直列リアクトルの合成インピーダンスを誘導性になるようにします。

(エ)
ワンポイント解説「1.直列リアクトル」の通り,直列リアクトルの定格容量は,進相コンデンサの定格容量の\( \ 6 \ \mathrm {[%]} \ \)とすることが規定されています。