《機械》〈四機総合問題〉[H20:問6]各種電動機の構造や特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

主な電動機として,同期電動機,誘導電動機及び直流電動機がある。堅固で構造も簡単な電動機は\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)誘導電動機である。この電動機は,最近では,トルク制御と励磁制御を分離して制御可能な\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)制御によって,直流電動機とそん色ない速度制御が可能になった。

回転速度が広範囲で精密な制御が簡単にできるのは直流電動機である。この電動機は,従来ブラシと\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)により回転子に電力を供給していた。最近よく使用されているブラシレス直流電動機(ブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータ)は,回転子に\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)を組み入れて,効率の向上,保守の簡易化が図られたものである。

また,同期電動機は,供給電源の周波数に同期した速度が要求されるものに使用される。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  かご形  &  ベクトル  &  整流子      &  永久磁石  \\
\hline
(2) &  巻線形  &  スカラ   &  スリップリング  &  銅バー   \\
\hline
(3) &  かご形  &  スカラ   &  スリップリング  &  永久磁石  \\
\hline
(4) &  かご形  &  スカラ   &  整流子      &  銅バー   \\
\hline
(5) &  巻線形  &  ベクトル  &  整流子      &  永久磁石  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

各種電動機の特徴に関する問題です。
少しマイナーな内容に突っ込んだ選択肢もありますが,正答を導く上ではそれほど深い知識は必要ありません。以下に記載があるような概要を理解しておけば十分に対応できる問題かと思います。

1.三相誘導電動機の回転子
①かご形
かごの形をした導体中に,透磁率の高い鉄心を入れ,両端を端絡環で接続したものです。
構造が簡単で,頑丈かつコンパクトである特徴があります。


出典:みんなが欲しかった!電験三種 機械の実践問題集P.65 TAC出版

②巻線形
鉄心の外側のスロットに二次巻線を挿入した構造の回転子です。
二次巻線はスリップリングを介して外部の抵抗に接続できるという特徴があります。


出典:みんなが欲しかった!電験三種 機械の実践問題集P.65 TAC出版

2.三相誘導電動機のトルク又は回転速度の制御方法
①\( \ V/f \ \)一定制御
従来からある方法で,\( \ V/f \ \)を一定に保つことで,鉄心の磁気飽和が起こらないように磁束密度を一定として制御を行う方法です。電動機の回転速度が変化しても同等のトルク特性が得られることで,速度制御が可能となります。

②ベクトル制御
コンピュータの発達に伴い導入された方法で,ベクトル演算でインバータの出力電流を制御する方法です。一次電流に含まれるトルク成分電流と磁束成分電流は個別に制御することができるので,\( \ V/f \ \)一定制御では補正が必要であった始動時等低速度域での速度調整が可能となったことや制御の応答性が良い等の特徴があります。

3.ブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータ
\( \ \mathrm {DC} \ \)モータとブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータの構造例は下図の様になります。
\( \ \mathrm {DC} \ \)モータは永久磁石が固定子で電機子巻線が回転する方式が一般的ですが,ブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータは永久磁石が回転する方式が一般的です。
\( \ \mathrm {DC} \ \)モータでは回転する部分と電源との間にブラシと整流子が必要であり,定期的なブラシの交換が必要であるといった保守面での問題があります。一方,ブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータはインバータと磁極センサにより,固定子電流を調整して制御するため,ブラシが不要となります。

<ブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータの特徴>
・ブラシと整流子による機械的接触部分がないため,定期的なブラシの交換等のメンテナンスが不要
・接触部がないため,火花の発生の可能性が低くなり,モータの寿命は一般に長くなる
・界磁を永久磁石とするため,界磁装置が不要となり一般に効率は高くなる
・回転子の位置を検出し,電機子巻線への電流を切り換える必要があるため,位置センサと半導体スイッチとで構成された制御回路が必要となる

出典:東芝デバイス&ストレージ株式会社 HP
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/brushless-motor/chapter2/comparison-brushed-dc-motor-and-brushless-motor.html

【解答】

解答:(1)
(ア)
ワンポイント解説「1.三相誘導電動機の回転子」の通り,堅固で構造も簡単な電動機はかご形誘導電動機となります。

(イ)
ワンポイント解説「2.三相誘導電動機のトルク又は回転速度の制御方法」の通り,トルク制御と励磁制御を分離して制御可能なのはベクトル制御となります。

(ウ)
ワンポイント解説「3.ブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータ」の通り,従来の直流電動機はブラシと整流子により回転子に電力を供給しています。

(エ)
ワンポイント解説「3.ブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータ」の通り,ブラシレス\( \ \mathrm {DC} \ \)モータは,回転子に永久磁石を組み入れた電動機となります。