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【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
三相かご形誘導機に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 同じ容量の三相巻線形誘導機よりも構造が簡単で,安価である。
(2) 発電機として,一部の水力発電や風力発電に採用されている。
(3) 発電運転中の滑りは負となる。
(4) 大容量の電動機にはアルミダイカスト回転子が広く用いられている。
(5) 回転子に棒状の導体を用いている三相かご形誘導機は,同じ容量の三相巻線形誘導機よりも機械的に過酷な使用に耐えられる。
【ワンポイント解説】
三相かご形誘導機の構造や特徴及び用途に関する問題です。
あまり電験のテキストでは用途や材料は記載されていないので,少し迷う受験生が多かった問題かと思います。知らない選択肢があっても諦めず消去法で正答を導き出すようにして下さい。
1.三相誘導電動機の回転子
①かご形
かごの形をした導体中に,透磁率の高い鉄心を入れ,両端を端絡環で接続したものです。
構造が簡単で,頑丈かつコンパクトである特徴があります。
出典:みんなが欲しかった!電験三種 機械の実践問題集P.65 TAC出版
②巻線形
鉄心の外側のスロットに二次巻線を挿入した構造の回転子です。
二次巻線はスリップリングを介して外部の抵抗に接続できるという特徴があります。
出典:みんなが欲しかった!電験三種 機械の実践問題集P.65 TAC出版
2.誘導機の滑り\( \ s \ \)
誘導機の同期速度が\( \ N_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[min ^{-1}]} \ \),回転速度が\( \ N \ \mathrm {[min ^{-1}]} \ \)である時,誘導機の滑り\( \ s \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
s &=&\frac {N_{\mathrm {s}}-N}{N_{\mathrm {s}}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と定義されるので,\( \ N \ \)について整理すると,
\[
\begin{eqnarray}
s N_{\mathrm {s}}&=&N_{\mathrm {s}}-N \\[ 5pt ]
N&=&\left( 1-s\right) N_{\mathrm {s}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
3.滑りの違いよる電動機の動作の違い
①\( \ s<0 \ \)のとき
\( \ N>N_{\mathrm {s}} \ \)となるので,同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)よりも回転速度\( \ N \ \)が高い状態で,どちらも同方向に回転している状態です。このとき,誘導機は誘導発電機として働き,回生制動となり電源側に電力が返還されます。

②\( \ 0<s<1 \ \)のとき
\( \ N<N_{\mathrm {s}} \ \)となるので,同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)よりも回転速度\( \ N \ \)が低い状態で,どちらも同方向に回転している状態です。このとき,誘導機は誘導電動機として働き,電源から電力が供給されます。

③\( \ s>1 \ \)のとき
回転速度\( \ N \ \)に対し同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)が逆向きに回転している状態で,このとき逆向きに大きなトルクがかかります。このとき,誘導機は誘導ブレーキとして働き,入力は熱として消費されます。回生制動より大きなトルクがかかるので,急ブレーキとして使用します。

【解答】
解答:(4)
(1):正しい
ワンポイント解説「1.三相誘導電動機の回転子」の通り,三相かご形誘導機は同じ容量の三相巻線形誘導機よりも構造が簡単で安価です。
(2):正しい
問題文の通り,三相かご形誘導機は構造が単純で耐久性があることから,一部の水力発電や風力発電に採用されることがあります。一般に大容量の発電機には同期発電機が使用されます。
(3):正しい
ワンポイント解説「3.滑りの違いよる電動機の動作の違い」の通り,三相かご形誘導機の発電運転中の滑りは負となります。
(4):誤り
アルミダイカスト回転子はかご形誘導機の代表的な回転子で,一般に大容量の電動機には巻線形誘導機が用いられることが多いです。
(5):正しい
ワンポイント解説「1.三相誘導電動機の回転子」の通り,回転子に棒状の導体を用いている三相かご形誘導機は,同じ容量の三相巻線形誘導機よりも機械的に過酷な使用に耐えられます。