《電力》〈配電〉[H26:問12]三相4線式低圧配電線の容量に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

図のように,2台の単相変圧器による電灯動力共用の三相4線式低圧配電線に,平衡三相負荷\(45 \ \mathrm {kW}\)(遅れ力率角\(30°\))1個及び単相負荷\(10 \ \mathrm {kW}\)(力率\(=1\))2個が接続されている。これに供給するための共用変圧器及び専用変圧器の容量の値\(\mathrm {[kV\cdot A]}\)は,それぞれいくら以上でなければならないか。値の組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし,相回転は\(\mathrm {a}^{\prime }-\mathrm {c}^{\prime }-\mathrm {b}^{\prime }\)とする。


【ワンポイント解説】

三相4線式の低圧配電線に関する問題です。初見ではかなり難しい問題となりますが,ある程度パターン化される問題なので,過去問を何度か解いて確実に解けるようにしましょう。

1.三相4線式低圧配電線
問題図において,単相変圧器\(\mathrm {a}-\mathrm {b}\)は単相負荷と三相負荷両方へ供給するので共用変圧器,単相変圧器\(\mathrm {b}-\mathrm {c}\)は三相負荷のみに供給するので,専用変圧器と言います。

単相負荷は線間電圧\(V_{\mathrm {ab}}\)から供給されるので,その力率は線間電圧\(V_{\mathrm {ab}}\)と単相負荷へ流れる電流\(I_{1}\)との位相差となります。一方,三相負荷はそれぞれの相電圧と相電流の位相差になります。よって,ベクトル図は図1のように描くことができ,\(I_{1}\)と\(a^{\prime }\)に流れる電流\(I_{3}\)は同相となります。

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【解答】

解答:(5)
図1のベクトル図より,単相負荷2個にかかる電力は力率が1であるから,
\[
V_{\mathrm {ab}}I_{1}=20 \ \mathrm {[kW ]}
\] となる。一方,三相負荷にかかる電力から,
\[
\begin{eqnarray}
\sqrt {3}V_{\mathrm {ab}}I_{3}\cos 30°&=&45 \\[ 5pt ] \sqrt {3}V_{\mathrm {ab}}I_{3}\frac {\sqrt {3}}{2}&=&45 \\[ 5pt ] V_{\mathrm {ab}}I_{3}&=&30 \ \mathrm {[kV\cdot A ]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。よって,共通変圧器に流れる電流は\(I_{1}+I_{3}\),専用変圧器に流れる電流は\(I_{3}\)であるから,共通変圧器の容量は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {ab}}\left( I_{1}+I_{3}\right) &=&20+30 \\[ 5pt ] &=&50 \ \mathrm {[kV\cdot A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められ,専用変圧器の容量は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {bc}}I_{3} &=&V_{\mathrm {ab}}I_{3} \\[ 5pt ] &=&30 \ \mathrm {[kV\cdot A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。