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【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
エミッタホロワ回路について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 図1の回路で\( \ V_{\mathrm {CC}}=10 \ \mathrm {V} \ \),\( \ R_{1}=18 \ \mathrm {k\Omega } \ \),\( \ R_{2}=82 \ \mathrm {k\Omega } \ \)とする。動作点におけるエミッタ電流を\( \ 1 \ \mathrm {mA} \ \)としたい。抵抗\( \ R_{\mathrm {E}} \ \)の値\(\mathrm {[k\Omega ]}\)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,動作点において,ベース電流は\(R_{2}\)を流れる直流電流より十分小さく無視できるものとし,ベース-エミッタ間電圧は\( \ 0.7 \ \mathrm {V} \ \)とする。
(1) \(1.3\) (2) \(3.0\) (3) \(7.5\) (4) \(13\) (5) \(75\)
(b) 図2は,エミッタホロワ回路の交流等価回路である。ただし,使用する周波数において図1の二つのコンデンサのインピーダンスが十分に小さい場合を考えている。ここで,\( \ h_{\mathrm {ie}}=2.5 \ \mathrm {k\Omega } \ \),\( \ h_{\mathrm {fe}}=100 \ \)であり,\(R_{\mathrm {E}}\)は小問(a)で求めた値とする。入力インピーダンス\(\displaystyle \frac {v_{\mathrm {i}}}{i_{\mathrm {i}}}\)の値\(\mathrm {[k\Omega ]}\)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,\( \ v_{\mathrm {i}} \ \)と\( \ i_{\mathrm {i}} \ \)はそれぞれ図2に示す入力電圧と入力電流である。
(1) \(2.5\) (2) \(15\) (3) \(80\) (4) \(300\) (5) \(750\)
【ワンポイント解説】
電子回路に関する問題は毎年のように出題されます。パターンが比較的決まっているので,何問か過去問に取り組めば解けるようになると思います。なお,(b)はいろいろな解き方がありますが,計算量は変わらないので,ここではオーソドックスなキルヒホッフの法則を使用した解答にしています。
【解答】
(a)解答:(3)
図1-1に示す閉回路より,トランジスタのベース電圧\(V_{\mathrm {B}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {B}} &=&\frac {R_{2}}{R_{1}+R_{2}}V_{\mathrm {CC}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {82\times 10^{3}}{18\times 10^{3}+82\times 10^{3}}\times 10 \\[ 5pt ]
&=&8.2 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となる。
題意より,ベース-エミッタ間電圧は\( \ 0.7 \ \mathrm {V} \ \)であるから,エミッタ電圧\(V_{\mathrm {E}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {E}} &=&V_{\mathrm {B}}-0.7 \\[ 5pt ]
&=&8.2-0.7 \\[ 5pt ]
&=&7.5 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となる。題意より,エミッタ電流\(i_{\mathrm {E}}\)は\( \ 1 \ \mathrm {mA} \ \)であるから,\( \ R_{\mathrm {E}} \ \)の大きさは
\[
\begin{eqnarray}
R_{\mathrm {E}} &=&\frac {V_{\mathrm {E}}}{i_{\mathrm {E}}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {7.5}{1\times 10^{-3}} \\[ 5pt ]
&=&7.5\times 10^{3} \ \mathrm {[\Omega ]} → 7.5 \ \mathrm {[k\Omega ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。
(b)解答:(2)
図2-1に示す回路において,\(v_{\mathrm {i}}\)と青矢印で示した回路の電圧降下及び\(\displaystyle \frac {R_{1}R_{2}}{R_{1}+R_{2}}\)の電圧降下は等しい。
青矢印で示した回路の電圧降下の大きさは,
\[
\begin{eqnarray}
h_{\mathrm {ie}}i_{\mathrm {b}}+R_{\mathrm {E}}\left( 1+h_{\mathrm {fe}}\right) i_{\mathrm {b}} &=& 2.5\times 10^{3}i_{\mathrm {b}} +7.5\times 10^{3}\left( 1+100 \right) i_{\mathrm {b}} \\[ 5pt ]
&=&760000 i_{\mathrm {b}} \ \mathrm {[V ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
であり,これが\(\displaystyle \frac {R_{1}R_{2}}{R_{1}+R_{2}}\)の電圧降下と等しいから,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {R_{1}R_{2}}{R_{1}+R_{2}}\left( i_{\mathrm {i}}-i_{\mathrm {b}}\right) &=&760000 i_{\mathrm {b}} \\[ 5pt ]
\frac {18\times 10^{3} \times 82\times 10^{3}}{18\times 10^{3} + 82\times 10^{3}}\left( i_{\mathrm {i}}-i_{\mathrm {b}}\right) &=&760000 i_{\mathrm {b}} \\[ 5pt ]
14760\left( i_{\mathrm {i}}-i_{\mathrm {b}}\right) &=&760000 i_{\mathrm {b}} \\[ 5pt ]
14760i_{\mathrm {i}}&=&774760 i_{\mathrm {b}} \\[ 5pt ]
i_{\mathrm {i}}&≒&52.49 i_{\mathrm {b}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となるので,入力インピーダンス\(\displaystyle \frac {v_{\mathrm {i}}}{i_{\mathrm {i}}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {v_{\mathrm {i}}}{i_{\mathrm {i}}} &=&\frac {760000 i_{\mathrm {b}}}{52.49 i_{\mathrm {b}}} \\[ 5pt ]
&≒&14478 \ \mathrm {[\Omega ]} → 15 \ \mathrm {[k\Omega ]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められる。