《電力・管理》〈電気施設管理〉[R04:問5]油入変圧器の絶縁劣化診断するための試験に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の表は,高圧又は特別高圧油入変圧器の絶縁劣化状態を診断するための試験のうち,通常よく行われている試験について記載したものである。表中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に記入すべき用語を,答案用紙の(4)頁にある表に記入しなさい。

【ワンポイント解説】

変圧器の絶縁劣化診断に関する問題です。
変圧器の劣化する部材として絶縁油や絶縁紙が出題されやすいです。
絶縁油の劣化診断は\( \ 1 \ \)種や\( \ 2 \ \)種ではよく出題され,二次試験において直近では令和元年電力管理問2に油入変圧器の事故と油中ガス分析の内容が出題されています。合わせて見ておくようにしましょう。

1.変圧器を構成する部材
①非劣化部材
 鉄心,コイル
②劣化しても交換できる部材
 保護機器,冷却ファン,絶縁油
③徐々に劣化するが交換できない部材
 巻線部の絶縁に用いられる絶縁紙 ← 変圧器の寿命に影響

2.絶縁油耐圧試験
規定量の絶縁油に商用周波数の試験電圧を加え,一定の割合で上昇し絶縁破壊した電圧を記録します。
一般に絶縁油は新油であれば\( \ 30 \ \mathrm {kV} \ \)以上であり,\( \ 20 \ \mathrm {kV} \ \)未満になると要注意とされています。

3.絶縁油酸価度試験
絶縁油\( \ 1 \ \mathrm {g} \ \)中に含まれる全酸性成分を中和するのに要するアルカリ成分の量で酸化を測定します。
具体的には,トルエンとエタノールを混合した溶剤に入れよく溶解した後,アルカリブルー\( \ \mathrm {6B} \ \)を指示薬として水酸化カリウム溶液の標準エタノール溶液で滴定し,色が青から紫がかった赤に変化したときの水酸化カリウム溶液の分量により酸価度を測定します。
絶縁油の酸化は,主に空気中の酸素が触れ溶け込むことにより発生します。

4.油中ガス分析
変圧器の絶縁油を採取し溶解している可燃性ガスをクロマトグラフによって検出し,ガスの種類・発生量や増加量,ガスの成分比を基準値と比較することにより,変圧器内部の異常の有無を判定する方法です。
変圧器では,部分放電や局部過熱のような発熱を伴い絶縁油や絶縁紙が熱分解することでガスが発生します。
一酸化炭素,二酸化炭素,メタン,水素等は主に経年劣化で発生し,異常時にはアセチレンが発生します。

5.絶縁紙の劣化診断
絶縁紙は熱によりセルロース分子が切断し,絶縁耐力と機械的強度が減少します。通常使用にて\( \ 30 \ \)年程度使用すると以下の値になり,これが限界とされています。
  絶縁耐力   :約\( \ 90 \ \)%
  機械的引張強度:\( \ 50~60 \ \)%
  平均重合度残率:\( \ 40~50 \ \)%
また,絶縁紙の劣化指標としては,絶縁油中の\( \ \mathrm {CO} \ \),\( \ \mathrm {CO_{2}} \ \)の生成量やフルフラール生成量も確立されています。

【解答】

\[
\begin{array}{|c|l|}
\hline
\ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ の番号   &    標準解答 \\
\hline
(1) & 酸素 \\
\hline
(2) & 絶縁破壊電圧 \\
\hline
(3) & 全酸価,酸価,酸価度  \\
\hline
(4) & 商用周波数 \\
\hline
(5) & 水酸化カリウム \\
\hline
(6) & 絶縁紙 \\
\hline
(7) & 熱分解 \\
\hline
(8) & クロマトグラフ \\
\hline
(9) & 引張り強さ \\
\hline
(10) & フルフラール \\
\hline
\end{array}
\] (複数ある標準解答は,いずれか記載されていればよい。)



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