【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
近年,採用される例が増えている\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスを循環して冷却する方式のガス絶縁変圧器に関して,油入変圧器との比較において次の各問にそれぞれ\( \ 100 \ \)字程度以内で答えよ。
(1) 採用される場所とその理由
(2) 変電所設計に対する構造上の長所
(3) 保守面に対する構造上の長所
(4) \( \ 300 \ \mathrm {MV\cdot A} \ \)程度の大容量器における\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスの冷却性能向上方策
【ワンポイント解説】
ガス絶縁変圧器に関する問題です。
\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスの特徴を理解していれば,ある程度の部分点は狙える問題かと思います。多くの受験生が選択した問題と予想されますので,必ず理解するようにしましょう。
1.ガス絶縁変圧器の特徴
ガス絶縁変圧器は気体絶縁材料である\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスを用いて絶縁する変圧器で,高い絶縁耐力,無色・無臭・無毒,化学的・熱的に安定,等の利点から都市部の屋内・地下変電所等で多く採用されています。従来の油入変圧器と比較すると,以下のような特徴があります。
・不燃性であるため,防火対策が簡略化できる
・気体であるため,漏油による環境汚染の心配がない
・コンサベータが不要なため高さを低減できる
・絶縁油のような吸湿による劣化がないため,シリカゲル交換等の保守の省力化が図れる
・\( \ \mathrm {GIS} \ \)などのガス絶縁開閉装置と組み合わせが容易
・コイル絶縁にポリエステル系フィルム\( \ \left( \mathrm {PET} \right) \ \)が使用される
・絶縁油に比べ比熱が低く,冷却能力が劣る
→\( \ 60 \ \mathrm {MV\cdot A} \ \)程度までの小容量器では循環冷却,\( \ 300 \ \mathrm {MV\cdot A} \ \)程度の大容量器では,ガスの圧力を高める,ガスブロワにより大量のガスを流す等の方法が取られます。
・\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスが温室効果ガスであるため,圧力管理に注意が必要
【解答】
(1)採用される場所とその理由
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.ガス絶縁変圧器の特徴」の通りです。
・不燃性であることが採用される最大の理由になります。
(試験センター解答)
・都市部の地下や屋内変電所:不燃性であることから,防火対策(防火設備や防火区画)が簡略化・合理化できる。
・山岳地の水力発電所・変電所:油入変圧器の場合,漏油による河川汚染のリスクがあるが,それが回避できる。
(2)変電所設計に対する構造上の長所
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.ガス絶縁変圧器の特徴」の通りです。
・立地制約がある都市部の地下発電所を想像すると良いでしょう。
(試験センター解答例)
・変圧器コンサベータや放圧装置が不要となるため,変圧器室の高さが低減でき建物建設コストの低減が図れる。
・\( \ \mathrm {GIS} \ \)等と直結し合理的な配置設計により建物面積の縮小化が可能となることから建物建設コストの低減が図れる。
(3)保守面に対する構造上の長所
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.ガス絶縁変圧器の特徴」の通りです。
・油入変圧器は定期的なシリカゲルという乾燥剤の交換が必要です。
(試験センター解答例)
・\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスは酸化劣化せず,吸湿呼吸器が不要なため,シリカゲル交換が不要となり,保守の省力化が可能となる。
・\( \ \mathrm {GIS} \ \)等と同様のガスシール構造を有し,技術蓄積による長期信頼性が期待でき,保守の省力化が可能となる。
(4)\( \ 300 \ \mathrm {MV\cdot A} \ \)程度の大容量器における\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスの冷却性能向上方策
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.ガス絶縁変圧器の特徴」の通りです。
・\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスの冷却性能向上方策なので,ガス圧を高める,大量のガスを供給することが記載されると良いでしょう。
(試験センター解答例)
\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスは鉱油に比べ熱容量が小さいことから,以下に示す方法で冷却性能を向上させている。(以下の冷却性能向上方策から二つ記載されていればよい。)
・\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)ガスの圧力を高めて,熱容量を増やす。
・高耐熱絶縁材料により巻線の温度上昇限度を高める。
・高ガス圧対応のガスブロアにより大量のガスを流す。
・巻線内部のガス流路構成を解析により最適化し,大量のガスを均一に流す。