【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
次の文章は,ガス絶縁開閉装置(以下,\( \ \mathrm {GIS} \ \)という。)の診断技術に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選び,その記号を記述用紙の解答欄に記入しなさい。
a.\( \ \mathrm {GIS} \ \)は遮断器,断路器,接地開閉器,母線,ケーブル接続部などから構成されたコンパクトな開閉装置で,高電圧部を金属容器内に収納し,主絶縁として圧力の高い\( \ \fbox { (1) } \ \)ガスを充填した構造を有している。
b.\( \ \mathrm {GIS} \ \)の主要な故障は,絶縁故障,通電に伴う熱的故障及び機械的故障の三つに大別できる。これら故障のうち劣化や経時変化を伴う故障については,異常の初期状態で兆候を検出して事故を未然に防止する診断技術の活用が,設備の保守効率化に有効である。
1)絶縁故障に関わる重要な検出技術として部分放電検出技術があり,電流パルスや電磁波などを検出する電気的な方法,振動や超音波を検出する機械的な方法,分解ガスを検出する化学的な方法などがある。
① 電気的な検出法としては,\( \ \fbox { (2) } \ \)に埋め込まれた電極を利用し部分放電パルスを検出する\( \ \fbox { (2) } \ \)法や外部ノイズの影響の少ない周波数帯での電磁波を監視し,部分放電を検出する\( \ \fbox { (3) } \ \)法などがある。
② 機械的な検出法としては,部分放電により発生した圧力波が,タンクを励振することにより発生する振動や\( \ \mathrm {GIS} \ \)内異物が\( \ \fbox { (4) } \ \)で生じるタンクとの衝突振動を\( \ \mathrm {AE} \ \)センサなどにより検出する方法がある。
③ 化学的な検出法としては,放電や局部過熱に伴い発生する分解ガスをイオン化して検出する方法や,検知管に分解ガスを導入し\( \ \fbox { (5) } \ \)反応を診断に利用するガス検知管検出法などがある。
2)通電に伴う熱的故障としては,内部導体の局所過熱や,がいし表面の温度変化を\( \ \fbox { (6) } \ \)放射温度計などにより過熱位置と温度を推定する方法や,通電異常部での微小振動を検出する方法などがある。
3)開閉器の機械的な診断技術としては,開閉特性に着目し開閉器操作時の動作時間や,\( \ \fbox { (7) } \ \)遮断電流と接点消耗量の関係から診断を行う方法などがある。
〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \mathrm {X} 線 &(ロ)& 磁 力 &(ハ)& 発 熱 \\[ 5pt ]
&(ニ)& \mathrm {He} &(ホ)& 発 臭 &(ヘ)& 導 体 \\[ 5pt ]
&(ト)& 紫外線 &(チ)& 事 故 &(リ)& \mathrm {HF} \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 累 積 &(ル)& \mathrm {MF} &(ヲ)& 静電気力 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 呈 色 &(カ)& 外被(タンク) &(ヨ)& \mathrm {UHF} \\[ 5pt ]
&(タ)& 絶縁スペーサ &(レ)& 赤外線 &(ツ)& \mathrm {SF_{6}} \\[ 5pt ]
&(ネ)& 最 大 &(ナ)& 応 力 &(ム)& \mathrm {N_{2}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
(注)周波数表示の英字略号は次のとおり
\( \ \mathrm {UHF} \ \):極超短波 \( \ \mathrm {HF} \ \):短波 \( \ \mathrm {MF} \ \):中波
【ワンポイント解説】
\( \ \mathrm {GIS} \ \)の異常診断技術に関する問題です。
\( \ \mathrm {GIS} \ \)は\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスを充填した密閉構造であるため,信頼性が非常に高い反面,目視点検ができず故障発見をしにくい特徴があります。
参考書等で学習すると詳しく記載されすぎている印象があるため,電験対策としては以下のワンポイント解説に記載があるような概要を理解しておくと良いかと思います。
1.\( \ \mathrm {GIS} \ \)の絶縁異常診断技術
絶縁異常の際には,その箇所において部分放電が発生するため,それを検出する技術が使用されます。
①電気的方法
部分放電に伴い発生する,電磁波,電圧,電流を検出します。
電磁波検出には,外部ノイズの影響の少ない\( \ \mathrm {UHF} \ \)帯域の電磁波を検出する内部電極,絶縁スペーサの埋め込み電極,スペーサの外側に取り付けるサーチコイル,等のセンサによる方法があります。
電圧検出には,箔状の金属電極をタンク外側に取り付けて検出する方法,電流検出には,接地線\( \ \mathrm {GIS} \ \)の接地線に\( \mathrm {CT} \ \)を取り付ける方法等があります。
②機械的手法
部分放電により発生する圧力波や\( \ \mathrm {GIS} \ \)内異物の静電気力による振動や超音波を検出します。
振動検出には振動加速度センサ,超音波検出には超音波\( \ \left( \mathrm {AE}\right) \ \)センサを使用します。
③化学的手法
部分放電により発生する分解ガスを検出します。
ガスチェッカ(呈色反応試薬)を用いて分解ガスの有無を調べる方法,ガスクロマトグラフィーでガスの種類や濃度を調べる方法,等があります。
2.\( \ \mathrm {GIS} \ \)の通電異常診断技術
\( \ \mathrm {GIS} \ \)の通電異常の原因は主回路導体の接触不良となります。
接触不良を検出する診断技術として,導体の接触抵抗を測定する方法,局部加熱に起因するタンク温度上昇を温度センサ,赤外線カメラで検出する方法,局部過熱により発生する\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)分解ガスを測定する方法,等があります。
3.\( \ \mathrm {GIS} \ \)ガス遮断器の機械的診断技術
グリスの劣化や電装品の不具合等の原因によるガス遮断器の操作機構部の固着や不動作があります。
機械的異常の診断技術としては,開閉動作特性を測定する方法として,制御電流や補助スイッチの動作を測定する方法,機構部の動作速度をセンサにて検出する方法,遮断器動作時の累積遮断電流から接点消耗量を演算する方法,油圧操作用油圧系統の異常を油圧ポンプの動作頻度や時間で検出する方法,等があります。
【解答】
(1)解答:ツ
題意より解答候補は,(ニ)\( \ \mathrm {He} \ \),(ツ)\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \),(ム)\( \ \mathrm {N_{2}} \ \),になると思います。
\( \ \mathrm {GIS} \ \)は\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)を充填した構造の開閉装置です。
(2)解答:タ
題意より解答候補は,(ヘ)導体,(カ)外被(タンク),(タ)絶縁スペーサ,等になると思います。
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {GIS} \ \)の絶縁異常診断技術」の通り,電気的な検出法として,絶縁スペーサに埋め込まれた電極を利用して部分放電を検出する方法があります。
(3)解答:ヨ
題意より解答候補は,(リ)\( \ \mathrm {HF} \ \),(ル)\( \ \mathrm {MF} \ \),(ヨ)\( \ \mathrm {UHF} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {GIS} \ \)の絶縁異常診断技術」の通り,外部ノイズの影響の少ない周波数帯の電磁波である\( \ \mathrm {UHF} \ \)を検出する方法があります。
(4)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ロ)磁力,(ヲ)静電気力,(ナ)応力,等になると思います。
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {GIS} \ \)の絶縁異常診断技術」の通り,機械的な検出法として,\( \ \mathrm {GIS} \ \)内異物が静電気力で生じるタンクとの衝突振動を\( \ \mathrm {AE} \ \)センサなどにより検出する方法があります。
(5)解答:ワ
題意より解答候補は,(ハ)発熱,(ホ)発臭,(ワ)呈色,等になると思います。
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {GIS} \ \)の絶縁異常診断技術」の通り,化学的な検出法として,呈色反応試薬を用いて分解ガスを検出する方法があります。
(6)解答:レ
題意より解答候補は,(ト)紫外線,(レ)赤外線,等になると思います。
ワンポイント解説「2.\( \ \mathrm {GIS} \ \)の通電異常診断技術」の通り,がいし表面の温度変化は赤外線放射温度計により測定することが可能となります。
(7)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ヌ)累積,(ネ)最大,等になると思います。
ワンポイント解説「3.\( \ \mathrm {GIS} \ \)ガス遮断器の機械的診断技術」の通り,開閉器の機械的な診断技術として,累積遮断電流と接点消耗量の関係から診断を行う方法があります。