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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,電力系統の電圧・無効電力制御に関する記述である。文中の に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選びなさい。
電力系統の電圧は,時々刻々変化する需要及び供給力の変化に伴い変動する。また,電圧の変動は,需要家における機器の正常な使用,供給者における系統の安定な運用に支障をきたす。このため電力系統の電圧・無効電力制御が必要となる。
a.変電所等には,電力用コンデンサや分路リアクトルを設置している。
電力用コンデンサは, (1) 無効電力負荷であり,系統の電圧が低下すると無効電力の容量が (2) する等の特性があり,また (3) ができない。
一方,分路リアクトルは (4) 無効電力負荷であり,深夜等の軽負荷時における電圧上昇を抑制するために用いている。
b.また,変圧器には, (5) 電圧調整器を設置し,母線電圧を適正な電圧に調整している。
〔問4の解答群〕
(イ) 同 期 (ロ) 進 相 (ハ) 不連続制御(ニ) 補 償 (ホ) 連続制御 (ヘ) 零 相(ト) 断続制御 (チ) 増 減 (リ) 高調波(ヌ) 負荷時 (ル) 増 加 (ヲ) 減 少(ワ) 正 相 (カ) 遅 相 (ヨ) 逆 相
【ワンポイント解説】
電力系統の電圧・無効電力制御に関する問題です。
内容的にはかなり易しい内容ですが,出題の仕方が若干嫌らしい問題かなと思います。分路リアクトル=電力を遅れにする=遅れ無効電力を消費する=進み無効電力を供給する,電力用コンデンサ=電力を進みにする=進み無効電力を消費する=遅れ無効電力を供給する,と頭を整理しておきましょう。
1.調相設備の種類
代表的な無効電力の調相設備には次の4種類があり,それぞれ下表のような特徴があります。
電力用コンデンサ分路リアクトル同期調相機静止形無効電力補償装置SVC調整能力進相電力を吸収(電流を進ませる)遅相電力を吸収(電流を遅らせる)遅れから進みまで調整遅れから進みまで調整調整段階的段階的連続的連続的コスト安安高高保守性容易容易頻雑容易
2.配電線路における電圧調整
①負荷時タップ切換変圧器( LRT )
配電用変電所で行う調整で,変圧器のタップを切り換えることで,変圧比を調整し電圧を調整します。
②負荷時電圧調整器( LRA )
配電用変電所に設置する電圧調整器で,母線電圧を調整します。
③柱上変圧器のタップ調整
高圧線の変電所からの距離に応じて柱上変圧器のタップを調整し,低圧線の電圧を適正範囲内に調整します。
④自動電圧調整器( SVR )
高圧配電線の途中に設置し,タップ切換器,変圧器,制御機構等で構成され,電圧を自動で調整します。
⑤昇圧器
配電線のこう長が長くなり負荷の端子電圧が低くなる場合に設置します。
⑥電力用コンデンサ
配電線路上に電力用コンデンサを設置し,開閉することで力率の改善を行い電圧を調整します。
【解答】
(1)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)進相,(ヘ)零相,(ワ)正相,(カ)遅相,(ヨ)逆相,等になると思います。
ワンポイント解説「1.調相設備の種類」の通り,電力用コンデンサは進相無効電力を消費する進相無効電力負荷となります。
(2)解答:ヲ
題意より解答候補は,(チ)増減,(ル)増加,(ヲ)減少,になると思います。
電力用コンデンサの容量 QC は,系統電圧が V ,角周波数が ω ,静電容量が C であるとすると, QC=jωCV2 の関係があるため,系統の電圧が低下すると無効電力の容量が減少する特性があります。
(3)解答:ホ
題意より解答候補は,(ハ)不連続制御,(ホ)連続制御,(ト)断続制御,になると思います。
ワンポイント解説「1.調相設備の種類」の通り,電力用コンデンサの調整能力は段階的であるため,連続制御はできません。
(4)解答:カ
題意より解答候補は,(ロ)進相,(ヘ)零相,(ワ)正相,(カ)遅相,(ヨ)逆相,等になると思います。
ワンポイント解説「1.調相設備の種類」の通り,分路リアクトルは遅相無効電力を消費する遅相無効電力負荷となります。
(5)解答:ヌ
題意より解答候補は,(イ)同期,(ニ)補償,(リ)高調波,(ヌ)負荷時,等になると思います。
ワンポイント解説「2.配電線路における電圧調整」の通り,母線電圧を適正な電圧に調整する機器を負荷時電圧調整器( LRA )といいます。