《電力・管理》〈水力〉[H18:問1]水力発電所の建設に伴う型式,出力,回転速度の選定に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

水力発電所を建設する場合,一般に落差,使用水量が決まれば水車の型式を選定し,出力,比速度の限界内で極数や水車発電機の回転数を決めることになる。これに関する次の問に答えよ。

\( (1) \) 有効落差と使用水量から採用が適当と考えられている水車の型式を図に示している。図中の\( \ \mathrm {A} \ \),\( \ \mathrm {B} \ \)及び\( \ \mathrm {C} \ \)の空欄に当てはまる水車の型式を答えよ。

\( (2) \) 比速度とはどのようなものか簡潔に説明せよ。

\( (3) \) 水車発電機の回転数を高くとる場合の長所と短所を,それぞれ二つずつ挙げて説明せよ。

\( (4) \) 比速度の限界値で求めた極数が\( \ 8.6 \ \)と算出された場合,経済性も考慮して採用する極数は\( \ 8 \ \),\( \ 9 \ \),\( \ 10 \ \)のいずれとするべきか,極数を答えてその理由を説明せよ。

【ワンポイント解説】

水力発電所建設時の型式,出力,回転速度の選定に関する問題です。
\( (1) \)が最も正答率が低いと予想されますが,全体としては\( \ 6 \ \)割以上は取れやすい問題と言えます。

1.比速度の定義
水車の形状を相似に保ったまま大きさを小さくし,\( \ 1 \ \mathrm {m} \ \)の有効落差で\( \ 1 \ \mathrm {kW} \ \)の出力を発生するときの回転速度を言います。定格回転数を\( \ n \ \mathrm {[min^{-1}]} \ \),水車の出力を\( \ P \ \mathrm {[kW]} \ \),有効落差を\( \ H \ \mathrm {[m]} \ \)とすると,比速度\( \ n_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[m\cdot kW]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
n_{\mathrm {s}} &=&n \cdot \frac {\displaystyle P^{\frac {1}{2}}}{\displaystyle H^{\frac {5}{4}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。なお,経験則として比速度には上限値が\( \ \mathrm {JEC} \ \)で定められており,フランシス水車においては以下の式となっています。(原則暗記不要。改定の可能性あり。)
\[
\begin{eqnarray}
n_{\mathrm {s}}&≦&\frac {23000}{H+30}+40 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

2.各水車の落差と比速度の関係
各水車の落差と比速度の関係は下表の通りとなり,一般に高落差の物ほど比速度は小さくなります。
\[
\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
& 落差 \ \mathrm {[m]} & 比速度 \ \mathrm {[m\cdot kW]} \\
\hline
ペルトン水車 &  150 ~ 800  &  小  \\
\hline
フランシス水車 &  40 ~ 500  &  小~中  \\
\hline
{\displaystyle 斜流水車}\atop {\displaystyle (デリア水車)} &  40 ~ 180  &  中~大  \\
\hline
{\displaystyle プロペラ水車}\atop {\displaystyle (カプラン水車)} &  5 ~ 80  &  中~大  \\
\hline
\end{array}
\]

3.三相同期発電機の同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)
三相同期発電機の極数が\( \ p \ \),電源の周波数が\( \ f \ \mathrm {[Hz]} \ \)の時,同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[{min}^{-1}]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
N_{\mathrm {s}} &=&\frac {120f}{p} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。同期機は同期速度で回転します。

4.キャビテーション
水車の流水中の圧力が飽和蒸気圧以下になると,その部分に気泡が発生し,その後気泡が圧力が高いところに移動すると気泡が潰れて,その衝撃によりキャビテーションが発生します。
キャビテーションが発生すると以下の現象が発生します。
 ① 効率,出力,水流の減少が起こる
 ② キャビテーション発生場所(ランナ等)に壊食が起こる
 ③ 吸出し管入口の水圧変動が著しくなり,振動や騒音が発生する

5.キャビテーション発生抑制対策
キャビテーション発生を抑制する対策としては,以下の対策が挙げられます。
 ① 水車の比速度を一定値以下とする
 ② ランナベーンの形状を整え,表面を滑らかにする
 ③ 過度の部分負荷運転や過負荷運転をさける
 ④ 吸出し管の高さを一定値以下とする

【解答】

(1)図中の\( \ \mathrm {A} \ \),\( \ \mathrm {B} \ \)及び\( \ \mathrm {C} \ \)の空欄に当てはまる水車の型式
(ポイント)
・ワンポイント解説「2.各水車の落差と比速度の関係」の通りです。
・正確には比速度の限界式等を覚えている必要がありますが,試験対策としては概要を理解しておけば十分かと思います。なお,\( \ \mathrm {C} \ \)はプロペラ水車でも正答となるかと考えられます。

(試験センター解答)
\( \ \mathrm {A} \ \):ペルトン
\( \ \mathrm {B} \ \):フランシス
\( \ \mathrm {C} \ \):カプラン

(2)比速度とはどのようなものか
(ポイント)
・内容はワンポイント解説「1.比速度の定義」の通りです。
・比速度の定義式\( \ \displaystyle n_{\mathrm {s}} =n \cdot \frac {\displaystyle P^{\frac {1}{2}}}{\displaystyle H^{\frac {5}{4}}} \ \)もわかるならば書いておいても良いかと考えられます。

(試験センター解答例)
相似な形状で,単位落差のもとで単位出力を発生するような寸法にしたとき,その仮想水車の回転数(\( \ 1 \ \)分当たり又は回転速度)をいう。

(3)水車発電機の回転数を高くとる場合の長所と短所を,それぞれ二つずつ
(ポイント)
・ワンポイント解説「4.キャビテーション」「5.キャビテーション発生抑制対策」を基に解答を記載すると高得点が得られやすいかと考えられます。
・回転数が大きくなるほど発電機を小型にできコストが安くなることはイメージがつくかと思います。

(試験センター解答例)
長所:高速なほど,
   ① 水車発電機が小型になる。
   ② 機械重量が減る。
   ③ 価格が安くなる。
   ④ 建物が小形化できる。
短所:高速になると,
   ① キャビテーションが発生しやすくなる。
   ② 強度が不足すると壊れる。
   ③ 吸出し高さを高くとることになり,水車据付中心の高さを低くせざるを得なくなり,掘削土木費が高くなる。

(4)経済性も考慮して採用する極数とその理由
(ポイント)
・ワンポイント解説「3.三相同期発電機の同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)」を基に考えていきます。
・極数は\( \ \mathrm {N} \ \)と\( \ \mathrm {S} \ \)で\( \ 1 \ \)セットなので,必ず偶数である必要があります。

(試験センター解答例)
極数は\( \ 10 \ \)
理由:回路の周波数\( \ f \ \),回転数\( \ N \ \),極数\( \ P \ \)とするとき,\( \ P\cdot N=120f \ \)の関係がある。
比速度の限界値で極数が\( \ 8.6 \ \)となった場合,極数を整数の\( \ 8 \ \)とすると\( \ N \ \)が大きくなって限界値を超える。
\( \ 9 \ \)は奇数で不適
\( \ 10 \ \)は偶数で適
ただし,回転数は比速度の限界値よりやや下がることになるが限界値内。



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