《電力・管理》〈変電〉[H23:問2]中性点接地方式の特徴に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

\( \ 6.6 \ \mathrm {[kV]} \ \)以上\( \ 154 \ \mathrm {[kV]} \ \)以下の送配電系統においては中性点接地方式として,主に抵抗接地方式と非接地方式がある。一線地絡事故に対するそれぞれの方式の特徴について両者を比較し,次の点に関して述べよ。

(1) 事故点電流

(2) 事故時の健全相電圧

(3) 事故検出

(4) 誘導障害

【ワンポイント解説】

中性点接地における抵抗接地方式と非接地方式に関する問題です。
(1)の事故点電流と(2)の電圧をしっかりと理解した上で,(3)と(4)は(1)と(2)の内容から導き出せるように習得することが重要であるかと思います。

1.中性点接地方式の種類と特徴
各中性点接地方式の特徴は下表の通りです。
高電圧では線路や機器絶縁にコストがかかるので直接接地を採用し,合わせて高速遮断や高速再閉路が採用されている,低電圧では一線地絡時の健全相の電圧上昇がそれほど問題とならないため中性点接地を不要とし,\( \ \Delta -\Delta \ \)結線を採用できるようにしている等,丸暗記ではなくなぜそうするのかも理解しておくと良いと思います。
\[
\begin{array}{|c|c|c|c|c|}
\hline
&  非接地  &  抵抗接地  &  消弧リアクトル接地  &  直接接地  \\
\hline
地絡電流 & 小 & 中 & 最小 & 最大 \\
\hline
健全相電圧上昇 & 大 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
リレー検出 & 難 & 容易 & 難 & 確実 \\
\hline
コスト & 0 & 中 & 大 & 小 \\
\hline
電圧階級 & \ ~33 \ \mathrm {kV} \ & \ 22~154 \ \mathrm {kV} \ & \ 66~77 \ \mathrm {kV} \ & \ 187 \ \mathrm {kV}~ \ \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

(1)事故点電流
(ポイント)
・事故点を電源として中性点と対地静電容量の並列回路で閉回路ができることで事故電流が流れます。したがって,中性点の抵抗が大きければ大きいほど回路のインピーダンスが大きくなり電流が流れにくくなることがわかるかと思います。

(試験センター解答)
非接地系統に一線地絡事故が発生した場合,中性点に電流が流れないため,事故電流は健全相と大地間の浮遊容量を介して流れる小さな電流となる。
これに対して抵抗接地系統では事故点までの線路,中性点接地抵抗,事故点抵抗による閉回路が構成されるため,大きな電流が流れる。

(2)事故時の健全相電圧
(ポイント)
・一線完全地絡が発生すると,事故相の電圧は\( \ 0 \ \mathrm {V} \ \)となります。したがって,事故電流が流れないと理論上は健全相の電圧が線間電圧(相電圧の\( \ \sqrt {3} \ \)倍)まで上昇することになります。
・(1)の事故点電流とトレードオフの関係にあることを理解すれば良いと思います。

(試験センター解答例)
非接地系統において一線地絡事故が発生したときは事故電流がほとんど流れないため,線間電圧は事故の影響を受けない。このため,事故相が大地電圧となり中性点電圧が事故相の分上昇し,健全相の相電圧は線間電圧がそのまま反映されることになる。すなわち,事故後の健全相の相電圧は電源電圧が対称三相の場合は事故前の\( \ \sqrt {3} \ \)倍となるが,更に大きな電圧が発生する場合もある。
これに対して抵抗接地系統に一線地絡事故が発生したときには,中性点の電圧上昇は事故電流と中性点接地抵抗の積によって与えられる値となるため,健全相の相電圧上昇は,接地抵抗値を小さくすることで抑えられる。

(3)事故検出
(ポイント)
・事故の検出は電流が流れると容易であり,事故電流が通常時の電流より十分に大きく流れない場合には別の方法を考える必要があります。

(試験センター解答例)
非接地系統において一線地絡事故が発生したときは事故電流が小さく,通常の運用電流以下であるため,過電流リレーや方向距離リレーによる事故検出は不可能であり,地絡過電圧リレー,地絡方向リレーにより検出される。
これに対して抵抗接地方式では過電流リレーや方向距離リレーを含む各種のリレーが機能する。

(4)誘導障害
(ポイント)
電磁誘導障害は三相不平衡電流により発生しやすくなるため,事故電流が流れやすいものほど発生しやすくなります。

(試験センター解答例)
非接地系統において一線地絡事故が発生したときは大地帰路電流が小さいため,他の通信線などへの誘導障害はほとんど起こらない。
これに対して抵抗接地系統に一線地絡事故が発生したときは,大きな事故電流が大地帰路電流として流れるため,誘導障害が発生する可能性がある。



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