《電力・管理》〈送電〉[H28:問3]送電線のたるみに関する計算問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

電線のたるみに関して,次の問に答えよ。

図は電線のたるみを表している。点\( \ \mathrm {A} \ \),\( \ \mathrm {B} \ \)は同一水平面上にある二つの支持点であり,その間の距離を\( \ S \ \mathrm { [ m ] } \ \),ここからたるみ\( \ D \ \mathrm { [ m ] } \ \)だけ下がったところにある最下点\( \ \mathrm {O} \ \)を座標軸の原点とした。電線の形状は二次関数で表しても誤差は小さいことが知られているので,縦軸方向の変数\( \ Y \ \mathrm { [ m ] } \ \),横軸方向の変数\( \ X \ \mathrm { [ m ] } \ \),係数\( \ a \ \mathrm { [ m ] } \ \)を用いて,
\[
Y=\frac {X^{2}}{2a} ・・・・・・・・・・・・・・・・・・①
\] と表すことにする。支持点における電線の張力を\( \ T \ \mathrm { [ N ] } \ \),電線の単位長さ当たりの質量を\( \ W \ \mathrm { [ kg/m ] } \ \)として,たるみ\( \ D \ \)に関する②式を導出したい。\( \ g \ \mathrm { [ m/s^{2} ] } \ \)は重力加速度を意味している。
\[
D=\frac {WgS^{2}}{8T} ・・・・・・・・・・・・・・・・・②
\]

(1) ①式を基に支持点\( \ \mathrm {B} \ \)における電線の傾きを\( \ a \ \)と\( \ S \ \)を用いて表せ。

(2) 支持点における張力の垂直分力が電線自重の半分に等しいことを用いて\( \ a \ \)を\( \ T \ \)と\( \ W \ \)で表せ。ただし,支持点での電線が水平直線となす角\( \ \theta \ \)は小さいため,\( \ \tan \theta ≒\sin \theta \ \)と近似すること。また,電線の長さは\( \ S \ \)と等しいものとする。

(3) たるみ\( \ D \ \)は支持点の\( \ Y \ \)の値に他ならない。これに注意して上記の②式を導出せよ。

【ワンポイント解説】

途中の計算ミスをすると最後の(3)が合わないため,必然的に計算ミスを防止でき,電験二種の二次試験としてはかなり易しい問題となるかもしれません。しかし,普段であれば冷静に解ける問題でも,試験本番になると解けなくなる場合があります。落ち着いて解くようにして下さい。

【関連する「電気の神髄」記事】

  電線のたるみ(弛度)・実長の式

【解答】

(1)
①式の両辺を微分すると,
\[
\frac {\mathrm {d}Y}{\mathrm {d}X} = \frac {X}{a}
\] となる。支持点\( \ \mathrm {B} \ \)の傾きは上式に\( \ \displaystyle X=\frac {S}{2} \ \)を代入すれば良いので,
\[
\left.\frac{\mathrm {d}Y}{\mathrm {d}X}\right|_{X=\frac {S}{2}}=\frac {S}{2a}
\] となる。

(2)
張力の垂直分力を\( \ T_{\mathrm {y}} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
T_{\mathrm {y}}&=&W\cdot \frac {S}{2}\cdot g \\[ 5pt ] &=& \frac {WgS}{2}
\end{eqnarray}
\] となる。ここで張力\( \ T \ \)と垂直分力\( \ T_{\mathrm {y}} \ \)の関係は,
\[
\begin{eqnarray}
T_{\mathrm {y}}&=&T\sin \theta \\[ 5pt ] &≒& T\tan \theta
\end{eqnarray}
\] であり,\( \ \tan \theta \ \)は(1)で求めた\( \ \displaystyle X=\frac {S}{2} \ \)の時の傾きであるから,
\[
\begin{eqnarray}
T_{\mathrm {y}}&=&T\tan \theta \\[ 5pt ] \frac {WgS}{2}&=&T\frac {S}{2a} \\[ 5pt ] a&=&\frac {T}{Wg} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)
①式に\( \ \displaystyle X=\frac {S}{2} \ \),\( \ Y=D \ \),\( \ \displaystyle a=\frac {T}{Wg} \ \)を代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
Y&=&\frac {X^{2}}{2a} \\[ 5pt ] D&=&\frac {\displaystyle \left( \frac {S}{2}\right) ^{2}}{\displaystyle 2\cdot \frac {T}{Wg}} \\[ 5pt ] D&=&\frac {WgS^{2}}{8T} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。



記事下のシェアタイトル