《機械・制御》〈自動制御〉[R05:問4]ゲイン特性曲線からの伝達関数の導出に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

本問題で扱う伝達関数の全ての極と零点は複素平面上の右半平面には存在しないものと仮定する。以下の問に答えよ。ここで必要に応じて, 14=20log10100.7  100.7=5.0119 を用いよ。ただし,全ての図は折れ線近似で表している。

(1) 図1に示すゲイン特性曲線から積分要素の伝達関数 G1(s)=1TIs を求めよ。

(2) 図2に示すゲイン特性曲線が表す伝達関数 G(s)  G(s)=G1(s)G2(s) のように分解して考える。 G1(s) を小問(1)で求めた伝達関数とするときの G2(s) を求めよ。

(3) 図2に示すゲイン特性曲線から伝達関数 G(s) を求めよ。ただし, G(s)=1TI1s とおいて,その周波数伝達関数 G(jω)=1jTI1ω のゲインが ω=0.1 rad/s のとき 40 dB であることを用いて TI1 を決定せよ。

(4) 折れ線近似で表した図3に示すゲイン特性曲線から伝達関数 G(s) を求めよ。ただし, G(s) を積分要素 G1(s)=1TI2s と一次遅れ要素 G2(s)=11+Ts に分解して考えよ。



【ワンポイント解説】

ゲイン特性曲線から伝達関数を求める問題です。
伝達関数からゲイン特性曲線を描く問題は出題されたことがありますが,逆のパターンはあまり出題されたことがないので,選択した受験生は少なかったと予想されます。
しかしながら,慣れてしまえば比較的解きやすい内容となりますので,この問題で理解するようにしましょう。

1.ボード線図
周波数伝達関数が W(jω)=K1+jωT で与えられる時,ゲイン g [dB] は,
g=20log10|W(jω)|=20log10K1+(ωT)2 [dB]

となりますが, ω1T すなわち ωT1 のとき,
g20log10K1+0=20log10K
とほぼ一定の値となり, ω1T すなわち ωT1 のとき,
g20log10K(ωT)2=20log10KωT=20log10K20log10ωT
となり,横軸に対数座標をとると,ほぼ直線的に減少していくことになります。したがって,ボード線図は図4のようになります。
図4において ω=1T となる角周波数を折れ点角周波数と呼びます。

【解答】

(1)積分要素の伝達関数 G1(s)=1TIs 
求める積分要素の周波数伝達関数を G1(jω)=1jωTI とおくと,ゲイン g1 [dB] は,ワンポイント解説「1.ボード線図」の通り,
g1=20log10|G1(jω)|=20log101ωTI=20log10ωTI

となる。ここで,図1より, ω=0.01 [rad/s] のとき g1=20 [dB] であるから,
20=20log100.01TIlog100.01TI=10.01TI=0.1TI=10
となるので,
G1(s)=110s
と求められる。

(2) G(s)=G1(s)G2(s) のように分解して G1(s) を小問(1)で求めた伝達関数とするときの G2(s) 
図2のゲイン特性曲線を図1の G1(s)  G2(s) に分解すると,図2-1のようになる。
したがって,周波数伝達関数 G2(jω) のゲイン g2=40 [dB] であるから,
g2=20log10|G2(jω)|40=20log10|G2(jω)|log10|G2(jω)|=2G2(jω)=100

となるので, G2(s)=100 と求められる。

(3)図2に示すゲイン特性曲線から伝達関数 G(s) 
(1)と同様に,求める積分要素の周波数伝達関数を G(jω)=1jωTI1 とおくと,ゲイン g [dB] は,
g=20log10ωTI1

となり,図2より, ω=0.1 [rad/s] のとき g=40 [dB] であるから,
40=20log100.1TI1log100.1TI1=20.1TI1=0.01TI1=0.1
となるので,
G(s)=10.1s=10s
と求められる。

(4)図3に示すゲイン特性曲線から伝達関数 G(s) 
題意の通り, G(s) を積分要素 G1(s)=1TI2s と一次遅れ要素 G2(s)=11+Ts に分解し, G1(s)=1TI2s の周波数伝達関数を G1(jω)=1jωTI2 とおくと,ゲイン g1 [dB] は,(1)及び(3)と同様に,
g1=20log10ωTI2

となる。それぞれのゲイン特性を示すと図3-1のようになる。図3-1より, ω=0.5 [rad/s] のとき g1=14 [dB] であるから, 14=20log10100.7 及び 100.7=5.0119 に注意すると,
14=20log100.5TI220log10100.7=20log100.5TI2log10100.7=log100.5TI2=log10(0.5TI2)1=log102TI2100.7=2TI25.0119=2TI2TI2=25.0119
となるので,
G1(s)=5.01192s
と求められる。同様に,一次遅れ要素 G2(s)=11+Ts の周波数伝達関数を G2(jω)=11+jωT とおくと,ゲイン g2 [dB] は,ワンポイント解説「1.ボード線図」の通り,
g2=20log10|G2(jω)|=20log1011+(ωT)2=20log101+(ωT)2
となる。ここで, ω1T すなわち ωT1 であるとすると,
g220log10(ωT)2=20log10ωT
となり,図3-1の折れ線近似により, ω=0.5 [rad/s] のとき g2=0 [dB] であるから,
0=20log100.5Tlog100.5T=00.5T=1T=2
となるので,
G2(s)=11+2s
と求められる。以上から,求める伝達関数 G(s) は,
G(s)=G1(s)G2(s)=5.01192s11+2s5.012s(1+2s)
と求められる。



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