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【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
本問題で扱う伝達関数の全ての極と零点は複素平面上の右半平面には存在しないものと仮定する。以下の問に答えよ。ここで必要に応じて, 14=20log10100.7 , 100.7=5.0119 を用いよ。ただし,全ての図は折れ線近似で表している。
(1) 図1に示すゲイン特性曲線から積分要素の伝達関数 G1(s)=1TIs を求めよ。
(2) 図2に示すゲイン特性曲線が表す伝達関数 G(s) を G(s)=G1(s)G2(s) のように分解して考える。 G1(s) を小問(1)で求めた伝達関数とするときの G2(s) を求めよ。
(3) 図2に示すゲイン特性曲線から伝達関数 G(s) を求めよ。ただし, G(s)=1TI1s とおいて,その周波数伝達関数 G(jω)=1jTI1ω のゲインが ω=0.1 rad/s のとき 40 dB であることを用いて TI1 を決定せよ。
(4) 折れ線近似で表した図3に示すゲイン特性曲線から伝達関数 G(s) を求めよ。ただし, G(s) を積分要素 G1(s)=1TI2s と一次遅れ要素 G2(s)=11+Ts に分解して考えよ。
【ワンポイント解説】
ゲイン特性曲線から伝達関数を求める問題です。
伝達関数からゲイン特性曲線を描く問題は出題されたことがありますが,逆のパターンはあまり出題されたことがないので,選択した受験生は少なかったと予想されます。
しかしながら,慣れてしまえば比較的解きやすい内容となりますので,この問題で理解するようにしましょう。
1.ボード線図
周波数伝達関数が W(jω)=K1+jωT で与えられる時,ゲイン g [dB] は,
g=20log10|W(jω)|=20log10K√1+(ωT)2 [dB]
g≃20log10K√1+0=20log10K
g≃20log10K√(ωT)2=20log10KωT=20log10K−20log10ωT
図4において ω=1T となる角周波数を折れ点角周波数と呼びます。

【解答】
(1)積分要素の伝達関数 G1(s)=1TIs
求める積分要素の周波数伝達関数を G1(jω)=1jωTI とおくと,ゲイン g1 [dB] は,ワンポイント解説「1.ボード線図」の通り,
g1=20log10|G1(jω)|=20log101ωTI=−20log10ωTI
20=−20log100.01TIlog100.01TI=−10.01TI=0.1TI=10
G1(s)=110s
(2) G(s)=G1(s)G2(s) のように分解して G1(s) を小問(1)で求めた伝達関数とするときの G2(s)
図2のゲイン特性曲線を図1の G1(s) と G2(s) に分解すると,図2-1のようになる。
したがって,周波数伝達関数 G2(jω) のゲイン g2=40 [dB] であるから,
g2=20log10|G2(jω)|40=20log10|G2(jω)|log10|G2(jω)|=2G2(jω)=100

(3)図2に示すゲイン特性曲線から伝達関数 G(s)
(1)と同様に,求める積分要素の周波数伝達関数を G(jω)=1jωTI1 とおくと,ゲイン g [dB] は,
g=−20log10ωTI1
40=−20log100.1TI1log100.1TI1=−20.1TI1=0.01TI1=0.1
G(s)=10.1s=10s
(4)図3に示すゲイン特性曲線から伝達関数 G(s)
題意の通り, G(s) を積分要素 G1(s)=1TI2s と一次遅れ要素 G2(s)=11+Ts に分解し, G1(s)=1TI2s の周波数伝達関数を G1(jω)=1jωTI2 とおくと,ゲイン g1 [dB] は,(1)及び(3)と同様に,
g1=−20log10ωTI2
14=−20log100.5TI220log10100.7=−20log100.5TI2log10100.7=−log100.5TI2=log10(0.5TI2)−1=log102TI2100.7=2TI25.0119=2TI2TI2=25.0119
G1(s)=5.01192s
g2=20log10|G2(jω)|=20log101√1+(ωT)2=−20log10√1+(ωT)2
g2≃−20log10√(ωT)2=−20log10ωT
0=−20log100.5Tlog100.5T=00.5T=1T=2
G2(s)=11+2s
G(s)=G1(s)G2(s)=5.01192s⋅11+2s≒5.012s(1+2s)
