《理論》〈電磁気〉[R03:問2]強磁性体の磁気特性(ヒステリシスループ)に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,強磁性体の磁気特性に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。なお,ここでは,強磁性体に流れる渦電流は無視する。

強磁性体に一様な交番磁界を印加すると,強磁性体内の磁束密度\( \ B \ \mathrm {[T]} \ \)は磁界\( \ H \ \mathrm {[A / m]} \ \)に比例せず,定常状態において図に示すような\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の軌跡を描く。これをヒステリシスループと呼ぶ。図中の\( \ B_{\mathrm {r}} \ \mathrm {[T]} \ \)と\( \ H_{\mathrm {c}} \ \mathrm {[A / m]} \ \)は,それぞれ\( \ \fbox {  (2)  } \ \)と保磁力と呼ばれる。強磁性体を永久磁石として用いる場合,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)材料が望ましい。

この特性により生じる損失をヒステリシス損と呼び,それは印加する交番磁界の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)に比例する。ヒステリシスループで囲まれた部分の面積\( \ S \ \mathrm {[J / m^{3}]} \ \)は,交番磁界\( \ 1 \ \)周期における強磁性体内で消費される単位体積当たりのエネルギーを表す。ここで,体積\( \ 1.5\times 10^{-3} \ \mathrm {m^{3}} \ \)の強磁性体に\( \ 60 \ \mathrm {Hz} \ \)の一様な交番磁界を与えたところ,\( \ S=5.0\times 10^{2} \ \mathrm {J / m^{3}} \ \)であったとする。このときのヒステリシス損は\( \ \fbox {  (5)  } \ \mathrm {W} \ \)である。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 減磁力       &(ロ)& 時計回り \\[ 5pt ] &(ハ)& 反時計回り       &(ニ)& B_{\mathrm {r}} \ が大きく \ H_{\mathrm {c}} \ が小さい \\[ 5pt ] &(ホ)& 90       &(ヘ)& 周波数の \ 2 \ 乗 \\[ 5pt ] &(ト)& 最大磁束密度       &(チ)& 周波数 \\[ 5pt ] &(リ)& 6       &(ヌ)& B_{\mathrm {r}} \ と \ H_{\mathrm {c}} \ の両方が大きい \\[ 5pt ] &(ル)& 0.75       &(ヲ)& 周波数の \ 1.6 \ 乗 \\[ 5pt ] &(ワ)& B_{\mathrm {r}} \ が小さく \ H_{\mathrm {c}} \ が大きい         &(カ)& 45 \\[ 5pt ] &(ヨ)& 残留磁束密度 && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

ヒステリシスループに関する問題です。
ヒステリシス損に関する問題は電力科目や機械科目にも関連してくるので,よく理解しておくようにしましょう。
\( \ 3 \ \)種では理論科目にてヒステリシスループの知識を問う問題が出題されることもありますが,\( \ 2 \ \)種の理論科目での出題は珍しいと思います。

1.ヒステリシス損
ヒステリシス損は図1に示すような交番磁界を加えることによって,鉄心材料に残留磁気が残ることにより発生する損失で,材料によって特性が異なります。図1の曲線で囲まれた面積が交番磁界\( \ 1 \ \)サイクルあたりに生ずるヒステリシス損になるので,ヒステリシス損はヒステリシス曲線で囲まれた面積と交番磁界の周波数に比例することになります。
一般に永久磁石として用いる場合には他の磁場からの影響を受けにくい残留磁気や保持力が大きい材料,変圧器の磁心材料として用いる場合には損失の小さい残留磁気や保持力が小さい材料が用いられます。

【解答】

(1)解答:ハ
題意より解答候補は,(ロ)時計回り,(ハ)反時計回り,になると思います。
ワンポイント解説「1.ヒステリシス損」図1の通り,ヒステリシスループは反時計回りの軌跡を描く線です。

(2)解答:ヨ
題意より解答候補は,(イ)減磁力,(ト)最大磁束密度,(ヨ)残留磁束密度,になると思います。
ワンポイント解説「1.ヒステリシス損」の通り,\( \ B_{\mathrm {r}} \ \)は残留磁束密度(残留磁気)と呼ばれます。

(3)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ニ)\( \ B_{\mathrm {r}} \ \)が大きく\( \ H_{\mathrm {c}} \ \)が小さい,(ヌ)\( \ B_{\mathrm {r}} \ \)と\( \ H_{\mathrm {c}} \ \)の両方が大きい,(ワ)\( \ B_{\mathrm {r}} \ \)が小さく\( \ H_{\mathrm {c}} \ \)が大きい,になると思います。
ワンポイント解説「1.ヒステリシス損」の通り,永久磁石として用いる場合には\( \ B_{\mathrm {r}} \ \)と\( \ H_{\mathrm {c}} \ \)の両方が大きい材料の方が他の磁界により容易に磁化されないので望ましいです。

(4)解答:チ
題意より解答候補は,(ヘ)周波数の\( \ 2 \ \)乗,(チ)周波数,(ヲ)周波数の\( \ 1.6 \ \)乗,になると思います。
ワンポイント解説「1.ヒステリシス損」の通り,ヒステリシス損は交番磁界の周波数に比例します。

(5)解答:カ
ワンポイント解説「1.ヒステリシス損」の通り,ヒステリシス損はヒステリシスループの面積,周波数に比例し,体積が大きくなるほど大きくなるので,その大きさ\( \ P_{\mathrm {h}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {h}} &=&1.5\times 10^{-3}\times 60\times 5.0\times 10^{2} \\[ 5pt ] &=&45 \ \mathrm {[W]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。



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