《電力》〈原子力〉[H20:問4]軽水炉における出力調整の方法に関する空欄穴埋問題

Contents

1 【問題】
2 【ワンポイント解説】
3 【解答】

【問題】

【難易度】★★☆☆☆（やや易しい）

わが国の商業発電用原子炉のほとんどは，軽水炉と呼ばれる型式であり，それには加圧水型原子炉\( \ \left( \mathrm {PWR} \right) \ \)と沸騰水型原子炉\( \ \left( \mathrm {BWR} \right) \ \)の\( \ 2 \ \)種類がある。

\( \ \mathrm {PWR} \ \)の熱出力調整は主として炉水中の\( \ \fbox {　（ア）　} \ \)の調整によって行われる。一方，\( \ \mathrm {BWR} \ \)では主として\( \ \fbox {　（イ）　} \ \)の調整によって行われる。なお，両型式とも起動又は停止時のような大幅な出力調整は制御棒の調整で行い，制御棒の\( \ \fbox {　（ウ）　} \ \)によって出力は上昇し，\( \ \fbox {　（エ）　} \ \)によって出力は下降する。

上記の記述中の空白箇所(ア)，(イ)，(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として，正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{cccc}
& （ア） & （イ） & （ウ） & （エ） \\
\hline
(1) & 　ほう素濃度　　　 & 　再循環流量　 & 　挿　入　 & 　引抜き　 \\
\hline
(2) & 　再循環流量　　　 & 　ほう素濃度　 & 　引抜き　 & 　挿　入　 \\
\hline
(3) & 　ほう素濃度　　　 & 　再循環流量　 & 　引抜き　 & 　挿　入　 \\
\hline
(4) & 　ナトリウム濃度　 & 　再循環流量　 & 　挿　入　 & 　引抜き　 \\
\hline
(5) & 　再循環流量　　　 & 　ほう素濃度　 & 　挿　入　 & 　引抜き　 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

加圧水型原子炉と沸騰水型原子炉の出力調整に関する問題です。
軽水炉の型式や出力調整の内容は原子力の分野の中では特に出題されやすい印象があります。
ワンポイント解説の内容を確実に理解するようにして下さい。

1.原子炉（軽水炉）の型式
①沸騰水型(BWR)
蒸気発生器を持たないので，放射性物質がタービンに直接持ち込まれるのが大きな特徴で，他には以下の特徴があります。
・炉心圧力が低く蒸気発生器や加圧器がないので，構造が加圧水型\( \ \left( \mathrm {PWR} \right) \ \)と比較して簡単。
・再循環ポンプを持ち，ポンプでの流量によって出力を調整する。（循環量を増やすとボイドが発生しにくくなり，減速する中性子が増え反応が増加する）
・制御棒でも出力を調整するが，汽水分離器があるので，下から上に向かって挿入される。（制御棒を挿入すると吸収する中性子が増加するので，反応は減少する）
・何らかの原因で出力が上昇すると気泡が発生し，反応が抑制されるため，自動で出力が抑制される。

出典：電験戦士教本「原子力・その他発電」　P.46
ＵＲＬ：https://denkenia-archives.stores.jp/

②加圧水型(PWR)
蒸気発生器で蒸気を発生させるので，通常運転時放射性物質がタービンに持ち込まれないという特徴があり，他にも以下のような特徴があります。
・タービン系統に放射性物質が持ち込まれないので，タービンや復水器のメンテナンス時に放射能対策が不要。
・加圧器を持ち，原子炉内の圧力が高い。圧力を上げることで軽水の沸点が上がるので，沸騰しない。
・ホウ素濃度で出力調整を行う。（ホウ素濃度を上げると中性子吸収量が増えるので，反応は減少する）
・制御棒の抜き差しでも出力調整するが，上から下に向かって挿入されるため，安全性に有利である。（制御棒を挿入すると吸収する中性子が増加するので，反応は減少する）
・蒸気発生器等の過程を経る分，若干熱効率は劣る。