Contents
【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,避雷器に関する記述である。
避雷器は,雷又は回路の開閉などに起因する過電圧の\( \ \fbox { (ア) } \ \)がある値を超えた場合,放電により過電圧を抑制して,電気施設の絶縁を保護する装置である。特性要素としては\( \ \fbox { (イ) } \ \)が広く用いられ,その\( \ \fbox { (ウ) } \ \)の抵抗特性により,過電圧に伴う電流のみを大地に放電させ,放電後は\( \ \fbox { (エ) } \ \)を遮断することができる。発変電所用避雷器では,\( \ \fbox { (イ) } \ \)の優れた電圧-電流特性を利用し,放電耐量が大きく,放電遅れのない\( \ \fbox { (オ) } \ \)避雷器が主に使用されている。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) & 波頭長 & \mathrm {SF_{6}} & 非線形 & 続流 & 直列ギャップ付き \\
\hline
(2) & 波高値 & \mathrm {ZnO} & 非線形 & 続流 & ギャップレス \\
\hline
(3) & 波高値 & \mathrm {SF_{6}} & 線形 & 制限電圧 & 直列ギャップ付き \\
\hline
(4) & 波高値 & \mathrm {ZnO} & 線形 & 続流 & 直列ギャップ付き \\
\hline
(5) & 波頭長 & \mathrm {ZnO} & 非線形 & 制限電圧 & ギャップレス \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
避雷器も非常によく出題される分野で,本問はその中でも重要な分野を出題している良問と言えると思います。
特に(イ)~(オ)の選択肢は,選択肢がなくても記述式で埋められるぐらいになると良いでしょう。
1.避雷器の電圧―電流特性
避雷器に扱われる炭化ケイ素(\(\mathrm {SiC}\))素子と酸化亜鉛(\(\mathrm {ZnO}\))素子の電圧―電流特性を図1に示します。
図1の通り,炭化ケイ素(\(\mathrm {SiC}\))素子単体では通常運転時でも電流が流れてしまう反面,酸化亜鉛(\(\mathrm {ZnO}\))素子の場合通常電圧時では電流が流れないため,近年では酸化亜鉛(\(\mathrm {ZnO}\))素子が多く採用されています。
2.避雷器の種類
図2の通り,避雷器にはギャップ付き避雷器と,ギャップレス避雷器があり,炭化ケイ素(\(\mathrm {SiC}\))素子は,通常時でも電流が流れてしまうので,ギャップ付きが原則で,酸化亜鉛(\(\mathrm {ZnO}\))素子はギャップレス避雷器にすることが可能です。
発変電所では放電によるアークの発生がない,放電耐量が大きく放電遅れがない,コンパクトである等の理由でギャップレス避雷器を主に採用し,送電線や配電線では酸化亜鉛(\(\mathrm {ZnO}\))素子の劣化時でも絶縁を確保する理由で同じ酸化亜鉛(\(\mathrm {ZnO}\))素子でもギャップ付きの避雷器を主に採用します。
【解答】
解答:(2)
(ア)
避雷器が放電を開始するのは,雷過電圧の波高値がある値(制限電圧)を超えた場合です。波頭長とは,雷インパルス耐電圧試験で規定されている時間で,\( \ 30 \ \)%波高点と\( \ 90 \ \)%波高点を結んだ線と時間軸の交点から,\( \ 30 \ \)%波高点と\( \ 90 \ \)%波高点の間の時間を\( \ 0.6 \ \)で除した時間のことです。
(イ)
ワンポイント解説「1.避雷器の電圧―電流特性」の通り,特性要素として使用されるのは\( \ \mathrm {ZnO} \ \)となります。
(ウ)
ワンポイント解説「1.避雷器の電圧―電流特性」の通り,\( \ \mathrm {ZnO} \ \)は非線形の抵抗特性です。
(エ)
避雷器が動作し,放電が終了しても避雷器に電流が流れようとする電流を続流と呼び,避雷器には続流を遮断する能力が求められます。
(オ)
ワンポイント解説「2.避雷器の種類」の通り,発変電所では放電耐量が大きく,放電遅れがない等の理由でギャップレス避雷器が主に採用されています。