《電力》〈電気材料〉[R3:問14]送電線路に用いられる導体に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

送電線路に用いられる導体に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 導体の導電率は,温度が高くなるほど小さくなる傾向があり,\( \ 20 \ \mathrm {℃} \ \)での標準軟銅の導電率を\( \ 100 \ % \ \) として比較した百分率で表される。

(2) 導体の材料特性としては,導電率や引張強さが大きく,質量や線熱膨張率が小さいことが求められる。

(3) 導体の導電率は,不純物成分が少ないほど大きくなる。また,単金属と比較して,同じ金属元素を主成分とする合金の方が,一般に導電率は小さくなるが,引張強さは大きくなる。

(4) 地中送電ケーブルの銅導体には,伸びや可とう性に優れる軟銅より線が用いられ,架空送電線の銅導体には引張強さや耐食性の優れる硬銅より線が用いられている。一般に導電率は,軟銅よりも硬銅の方が大きい。

(5) 鋼心アルミより線は,中心に亜鉛めっき鋼より線を配置し,その周囲に硬アルミより線を配置した構造を有している。この構造は,必要な導体の電気抵抗に対して,アルミ導体を使用する方が,銅導体を使用するよりも断面積が大きくなるものの軽量にできる利点と,必要な引張強さを鋼心で補強して得ることができる利点を活用している。

【ワンポイント解説】

送電線に用いられる導電材料に関する問題です。
導電材料に関しては銅とアルミの特性を理解していれば解ける場合が多いです。
それぞれ下記の知識は持って試験に臨むようにして下さい。

1.導電材料の比較
架空送電線の導体には硬銅や硬アルミニウム,地中送電線のケーブルの導体には軟銅が用いられ,それぞれの導電材料の特徴としては下表のような特徴があります。
\[
\begin{array}{|l|l|l|}
\hline
  導電材料  &    導電率  &         特 徴  \\
\hline
 銀  &  106 \ %  &  最も導電率が高いが高価である  \\
\hline
 軟銅  &  100 \ % \ (基準)  &  可とう性がありケーブルで使用される  \\
\hline
 硬銅  &  97 \ %  &  引張強さがあり,架空送電線で使用される  \\
\hline
 アルミニウム  &  62 \ %  &  軽量であるため,現在の架空送電線の主流  \\
\hline
\end{array}
\]

2.鋼心アルミより線
鋼心アルミより線は,図1に示すように中心に亜鉛めっき鋼より線,その周囲に硬アルミ線をより合わせた電線であり,アルミの軽量かつ高い導電性と,鋼の強い引張強さとを併せもつ代表的な架空送電線です。
アルミは導電率では銅の3分の2程度ですが,重量が3分の1程度なので,全体として約半分の重量で同容量の送電線の敷設が可能となります。

【解答】

解答:(4)
(1)正しい
問題文の通り,導体の導電率は温度が高くなるほど小さくなる傾向があり,ワンポイント解説「1.導電材料の比較」の通り,\( \ 20 \ \mathrm {℃} \ \)での標準軟銅の導電率を\( \ 100 \ % \ \) として比較した百分率で表されます。

(2)正しい
問題文の通り,導体の材料特性としては,導電率や引張強さが大きく,質量や線熱膨張率が小さいことが求められます。

(3)正しい
問題文の通り,導体の導電率は,不純物成分が少ないほど大きくなりますが,単金属と比較して,同じ金属元素を主成分とする合金の方が,一般に引張強さは大きくなります。

(4)誤り
問題文の通り,地中送電ケーブルの銅導体には,伸びや可とう性に優れる軟銅より線が用いられ,架空送電線の銅導体には引張強さや耐食性の優れる硬銅より線が用いられます。ワンポイント解説「1.導電材料の比較」の通り,導電率は軟銅よりも硬銅の方が小さいです。

(5)正しい
ワンポイント解説「2.鋼心アルミより線」の通り,鋼心アルミより線は,中心に亜鉛めっき鋼より線を配置し,その周囲に硬アルミより線を配置した構造をした電線です。問題文の通り,アルミ導体を使用する方が,銅導体を使用するよりも断面積が大きくなるものの軽量にできる利点と,必要な引張強さを鋼心で補強して得ることができる利点があるので,現在の新たに設置される送電線の主流となっています。