《電力》〈送電〉[R4上:問10]送電線の各振動の発生原因と名称に関する空欄穴埋問題


【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,架空送電線の振動に関する記述である。

架空送電線が電線と直角方向に毎秒数メートル程度の風を受けると,電線の後方に渦を生じて電線が上下に振動することがある。これを微風振動といい,\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)電線で,径間が\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)ほど,また,張力が\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)ほど発生しやすい。

多導体の架空送電線において,風速が数\( \ ~ \ 20 \ \mathrm {m / s} \ \)で発生し,\( \ 10 \ \mathrm {m / s} \ \)を超えると激しくなる振動を\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)振動という。

また,その他の架空送電線の振動には,送電線に氷雪が付着した状態で強い風を受けたときに発生する\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)や,送電線に付着した氷雪が落下したときにその反動で電線が跳ね上がる現象などがある。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) &  重い  &  長い  &  小さい  &  サブスパン  &  ギャロッピング  \\
\hline
(2) &  軽い  &  長い  &  大きい  &  サブスパン  &  ギャロッピング  \\
\hline
(3) &  重い  &  短い  &  小さい  &  コロナ  &  ギャロッピング  \\
\hline
(4) &  軽い  &  短い  &  大きい  &  サブスパン  &  スリートジャンプ  \\
\hline
(5) &  重い  &  長い  &  大きい  &  コロナ  &  スリートジャンプ  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

送電線の振動に関する問題です。
電験の電力科目の中でも特に出題されやすい内容の一つです。
種類が多く大変かもしれませんが,本番までには必ず名称とメカニズムの違いを理解しておくようにして下さい。

1.電線の振動
電線が振動すると隣の電線と接触し,短絡事故が発生したり,振動による応力で,電線の損傷や破断等が発生する可能性があります。
①微風振動
 電線に対して直角に微風(数\( \ \mathrm {m / s} \ \))が当たると気流の流れにより電線の背後にカルマン渦が生じて上下の振動が発生します。電線が軽く,径間が長い場合に発生しやすくなります。

②サブスパン振動
 多導体の送電線のスペーサ間のことをサブスパンと言い,そこに風速\( \ 10 \ \mathrm {m / s} \ \)以上の風が吹くと電線背後にカルマン渦が発生し振動する現象です。

③ギャロッピング
 電線の表面に非対称な氷雪が付着し,風下側にカルマン渦が生じて振動します。振動数はサブスパン振動と同程度と言われています。

④スリートジャンプ
 電線に雪が積雪し,それが落ちる反動で振動する現象で,振幅が大きく短絡のリスクが高い現象です。

⑤コロナ振動
 雨が降っている時や霧が出ている時に発生しやすく,電線から水滴が離れる際にコロナ放電により,電線に反発力が生じて振動する現象です。

2.電線の振動対策
①ダンパの設置
 ダンパの設置により,振動エネルギーを吸収します。

②アーマロッドによる補強
 電線に巻き付ける物で,振動の吸収と電線の補強を行います。下図のダンパの上の電線に巻き付けられている導体がアーマロッドです。

③スペーサの設置
 多導体にスペーサを設置し,電線同士の接触を防止します。

④難着雪リングの取付
 電線からすべり落ちてきた雪をリング部で落下させることにより,氷雪の付着と成長を防止します。


出典:TDKテクノマガジンHP
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/ninja/099

【解答】

解答:(2)
(ア)
 ワンポイント解説「1.電線の振動」の通り,微風振動は重量が軽い送電線で発生しやすい振動です。

(イ)
 ワンポイント解説「1.電線の振動」の通り,微風振動は径間が長いほど発生しやすいです。長いロープと短いロープを持ったとき,どちらの方が振動させやすいか感覚的にわかるかと思います。

(ウ)
 ワンポイント解説「1.電線の振動」の通り,微風振動は張力が大きいほど発生しやすいです。こちらもロープを強く張った状態かダラッとした状態で,どちらが振動させやすいか感覚的にもわかると思います。

(エ)
 ワンポイント解説「1.電線の振動」の通り,多導体の送電線において,送電線のスペーサ間のサブスパンに強い風が当たることにより発生する振動をサブスパン振動といいます。

(オ)
 ワンポイント解説「1.電線の振動」の通り,送電線に氷雪が付着した状態で強い風を受けたときに発生するのはギャロッピングです。スリートジャンプは問題文後半の「送電線に付着した氷雪が落下したときにその反動で電線が跳ね上がる現象」のことを言います。