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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
水力発電に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 水管を流れる水の物理的性質を示す式として知られるベルヌーイの定理は,エネルギー保存の法則に基づく定理である。
(2) 水力発電所には,一般的に短時間で起動・停止ができる,耐用年数が長い,エネルギー変換効率が高いなどの特徴がある。
(3) 水力発電は昭和\( \ 30 \ \)年代前半まで我が国の発電の主力であったが,現在ではエネルギーの安定供給と経済性及び地球環境への貢献の観点から多様な発電方式が運用されており,我が国における水力発電の近年の発電電力量の比率は\( \ 20 \ \mathrm {%} \ \)程度である。
(4) 河川の\( \ 1 \ \)日の流量を,年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いた流況曲線は,発電電力量の計画において重要な情報となる。
(5) 総落差から損失水頭を差し引いたものを一般に有効落差という。有効落差に相当する位置エネルギーが水車に動力として供給される。
【ワンポイント解説】
水力発電の特徴と概況に関する問題です。
若干法規の電気施設管理寄りの内容の選択肢もありますが,近年増加してきている新エネルギー発電(令和5年現在で約\( \ 20 \ \mathrm {%} \ \))や水力発電の割合等は確認しておくようにしましょう。
1.ベルヌーイの定理
水力発電所の水路において,流速\( \ v \ \mathrm {[m/s]} \ \),圧力\( \ p \ \mathrm {[Pa]} \ \),水の密度\( \ \rho \ \mathrm {[kg/m^{3}]} \ \),重力加速度\( \ g \ \mathrm {[m/s^{2}]} \ \)とすると,位置水頭は\( \ h \ \mathrm {[m]} \ \),圧力水頭は\( \ \displaystyle \frac {p}{\rho g} \ \mathrm {[m]} \ \),速度水頭は\( \ \displaystyle \frac {v^{2}}{2g} \ \mathrm {[m]} \ \)で表され,これらの総和はエネルギー保存則によりどの場所でも等しくなります。
\[
\begin{eqnarray}
h+\frac {p}{\rho g}+\frac {v^{2}}{2g}&=&一定 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
2.水力発電所の出力
水力発電所の出力や発電量を導出する公式は以下の通りとなります。図と合わせて覚えておきましょう。
有効落差 :\( \ H=H_{0}-h_{\mathrm {G}} \ \mathrm {[ m ] } \ \)
発電機出力:\( \ P_{\mathrm {G}}=9.8Q_{\mathrm {G}}H\eta _{\mathrm {T}}\eta _{\mathrm {G}} \ \mathrm {[ kW ] } \ \)
総発電量 :\( \ W_{\mathrm {G}}=P_{\mathrm {G}}T_{\mathrm {G}} \ \mathrm {[ kW\cdot h ] } \ \)
ただし,\( \ H_{0} \ \)は総落差\( \ \mathrm {[m]} \ \),\( \ h_{\mathrm {G}} \ \)は損失水頭\( \ \mathrm {[m]} \ \),\( \ Q_{\mathrm {G}} \ \)は流量\( \ \mathrm {[m^{3} / s]} \ \),\( \ \eta _{\mathrm {T}} \ \)は水車効率,\( \ \eta _{\mathrm {G}} \ \)は発電機効率,\( \ T_{\mathrm {G}} \ \)は発電時間\( \ \mathrm {[h]} \ \)
【解答】
解答:(3)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.ベルヌーイの定理」の通り,ベルヌーイの定理はエネルギー保存の法則に基づく定理です。
(2)正しい
問題文の通り,水力発電所は一般的に短時間で起動・停止ができる,耐用年数が長い,エネルギー変換効率が高いなどの特徴があります。
(3)誤り
問題文の通り,水力発電は昭和\( \ 30 \ \)年代前半まで発電の主力でしたが,その後火力発電が主力となり,現在はエネルギーの安定供給と経済性及び地球環境への貢献の観点から多様な発電方式が運用されています。しかし水力発電の割合はそれほど高くなく,近年の水力発電の発電電力量の比率は\( \ 10 \ \mathrm {%} \ \)未満です。詳しくは電力調査統計等に掲載されていますので,最新のものを確認しておいて下さい。
(4)正しい
問題文の通り,河川の\( \ 1 \ \)日の流量を,年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いたものを流況曲線といい,発電電力量の計画において重要な情報となります。電験1種平成25年電力管理科目問1に流況曲線の出題がされていますので,どういうものか確認したい場合は確認しておくと良いかと思います。
(5)正しい
ワンポイント解説「2.水力発電所の出力」の通り,総落差から損失水頭を差し引いたものを一般に有効落差といい,有効落差に相当する位置エネルギーが水車に動力として供給されます。